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普通じゃない私のお尻

※この作品は三話完結の短編ラブコメです。最後までお楽しみください。


今日もまた彼に見捨てられたときの夢を見た。いつになったら吹っ切れるのだろう。

彼と別れてから5年も経つというのに、もう男性と上手く付き合える気がしなくて、新たにお付き合いした相手はいない。

でも、このままでいるつもりはない。私だってまともに恋愛して、結婚して、子供だって欲しい。

だから、そろそろ踏ん切りをつけて自分から動いていかなければいけない。そう思っている。


私の名前は野尻沙和。年齢は30歳。


大学を卒業してから、得意な中国語を活かして、そこそこ大きな貿易会社に就職した。かれこれ勤続8年目?だろうか。中国からのお客様や取引先との電話やメールの対応、そして事務が主な仕事だ。通訳のために、商談に立ち会ったりすることもある。


身長は158センチで、高くも低くもない。

体型も太くもなく細くもない。標準体重のちょっと下付近なので、きっと普通。

顔は、こんな顔の普通で目立たない子クラスに居たよねと言われたことがある。普通で目立たない…地味に心にくる。まあでも、少なくとも悪くはないと思う。


そう。私は全てが普通の、これと言った特徴の無い女なのだ。


いや、胸を張って言えることがあった。実は中国語以外にも英語もそれなりに話せること。所謂トリリンガルというやつだ。それと、髪がキレイなこと。


とにかく、それ以外何もかもが平均なのだ。可もなく不可もなく。それなのに、こんなに普通で目立たないのに…


お尻のサイズだけが普通じゃないのだ。


とにかく大きい。それはもうプリンと出ていて、尻はここ!と主張している。手足は細目なのに、何故お尻がこんなに大きいのか理解できない。


そのうえ、名前に尻の文字が入っている。なんたる奇跡!何の冗談かと思う。

何代前から存在しているのか知らないが、先祖代々のこの名字に、言い知れぬ思いを抱いたこと数知れず…


そして、このお尻が原因でからかわれたり、フラれたり。見られたり。エロいお誘いがあったり。

本当に良いことなんて何もない。


目下の悩みは職場のおじ様やおば様方だ。年をとると恥が無くなるのか、遠慮無くからかってくるので、いなすのも大変だ。


─────

え?私のお尻が大きく見える?

いやいやいや、気のせいです。


え?じゃあどのくらい大きいかって?

そんなの乙女に言わせないで下さいよ。

ん?元乙女だって?


心はいつでもうら若き乙女、永遠のハタチ。


そんなのはいいからサイズを教えろ?

仕方ないですね。チョットだけ教えます。


ウエストに合わせてジーパンを履くと、お尻が入らない。お尻に合わせてジーパンを履くと、ウエストがばがば。

この辺でどうでしょうか?

だめ?もっと細かく?

セクハラです。


あー…ではもう少しだけヒントをさしあげますから、明確なサイズは勘弁してください。

上手く伝えられそうなヒントがあります。

うちの会社が輸入している子供用の椅子がありますよね?知ってますか?

そうそう、それです。それ高さは無いんですけど、幅が少し大きめに作られていて、大人でも座れるんですよ。社内の事務員数名で座り心地を試してみたんですけど、私だけお尻がハマって焦りました。


いや、抜けましたよ。でも怖くてもう座れません。


後はもう椅子の座面を見て下さい。それで想像して下さい。大体合ってますよ。


いやもうホントこの辺で…

───────


こんなやり取りが度々ある。

ほんとセクハラ。


私がこの会社を選んだ一番の理由、それは制服が無く、服装が自由だったからだ。候補に挙げていた他の会社は、全て制服があった。

よく見るタイトスカート風な、事務員さんが着ている制服、あれはいけない。ウエストの締まったデザインが多いから、お尻が強調されるし、何より他の人と比べられやすい。

だがしかし!私服であれば、私が試行錯誤の末にたどり着いたスタイルで、もしかして普通よりも少し大きい?くらいには錯覚してもらえる。…はず。

そんなちょっと不純な理由で、数ある貿易会社の中から制服の無かったこの会社を選んだのだ。


…なんだかすみません。


だから、皆、私のお尻に注目しないで欲しい。お願いだから。いや、見ちゃう気持ちはわかる。隠していてもやっぱり目立つんだろうなと思う。わかりすぎるくらいにわかる。なぜなら私の目にも目立ってみえるから。


私のお尻が急激に成長し始めたのは、高校一年生になったときからだと思う。

あれは入学してすぐの身体測定のときだった。自分の番がくるまで、皆が身長を測っていくのをぼーっと眺めていたのだが、このときには既に、もしかしたら皆より少しお尻が大きいのかもと思っていた私は、目が勝手に皆のお尻を見ていた。そこで私は気付いてしまった。


皆小振りでかわいらしいお尻をしている。判りやすく大きなお尻の子はいない!


測定器具の幅と比較しながら見ていたから間違いない。全体的に ばーん と体の大きな子はいたが、バランスが取れていて、お尻だけ目立つということは無かった。


そして自分の番がきた。皆見ないでいてくれ。そう思っていたが、私が見ていたんだから、皆も見ている。そらそうだ。


皆の視線に耐えて身長を測ってもらっていると、そこそこ大きな声で突然叫ばれた。心底驚いたという風に。


「沙和ちゃんのお尻大きーい!」


その瞬間、激震が走った!


私に!


私も周りも固まっていたが、ちらほらとクスクス笑う声が聞こえる。


いたたまれないこの空気をどうにかしなきゃと焦った私は、誰も求めていないのに、勝手に究極の選択を自分に迫った。


ヒド~イと泣く?


やっぱり~私もそう思ってた~と笑い飛ばす?


さぁどうする私!


「そうなの~気にしているから言わないで~」


中途半端!口から出たのはものすごく中途半端な抗議と半笑い!


ちょっぴり傷付いた私は、その日から毎日お尻のサイズを測り、記録した。それで恐るべき事実が判明した。


『お尻だけ成長している』


身長は、中学三年生のときと変わっていないし、体重も少し増えた程度だ。

高校三年生になる頃には、記録を取り続けて以来、右肩上がりのお尻成長曲線の目盛りが100に迫っていた。

焦った私はヒップアップ運動を始めて、お尻をコンパクトにしようと試みた。その結果、横への広がりが少し消え、プリンとした盛り上がったお尻になった。


そして、パンツのサイズは変わらなかった。


いや、なんで?


プリーツスカートを履くと後ろの裾が持ち上がって、シルエットがおかしくなるし、ワイドパンツを履くとお尻がしっかりしているから、下半身全体が太く見える。ストンと落ちるとろみタイプの服も、盛り上がったお尻が主張する。


気にしすぎは良くない。好きな服を着よう。そう思っても、やっぱり気になるし自信がないから姿勢が悪くなる。


悪循環にはまっていた。


そんなとき救世主が現れた。その名もサロペット。がっつり深いVネックのしっかりした生地のサロペットを選び、中に着るトップスはスッキリしたものを選ぶ。ヒラヒラしたものは選ばない。手足はそれなりに細いので、そこは大いに出す。


人生変わりました。はい。もう私はサロペットしか着ないと決めました。


色違いで何着も買い込み、コーディネートを考え抜いた。そして、昨日のとは違いますよ~、毎日違うもの着てますよ~、と見せかけるのに成功した。


ただ、さすがに商談の時はスーツを着るようにしている。そこは我慢だ。スーツではどうやっても隠せないけれど、合わないサイズで隠したりする方がカッコ悪いと思うし、やはりお客様と顔を合わせるときは、きちんとした身なりをした方が印象も良い。でも、注目を集めてしまわないか毎回緊張する。それなので、商談が終われば即着替える。

一緒に働いている人には既に気付かれていたとしても、気にしてるんだな~と温い目で見られていたとしても、商談が終わったら着替えないと落ち着かない。


これまでこのお尻のせいでからかわれたり、異性からは『その大きさはちょっと』とピンポイントにダメ出しされて、お付き合いを断られたり、大きすぎたことが原因で彼氏に見捨てられたりと、時々傷つきつつも、毎日前向きに、私なりに努力している。


私ももう30歳。そろそろこの先を考えられる、お尻のことなんて気にしない受け入れてくれる相手が欲しい。

以前、この大きなお尻が原因でお付き合いしていた人とお別れしたこともある。だからそこは譲れない。

そして日々お尻のことで奮闘する私に、気にすることないよ、僕はそんなことで嫌になったりなんてしないよ、そう本心から言うことが出来る。そんな人と出会いたい。


そのためには何から始めたら良いのか、これから考えていこう。


そういえば明日は、新しいインディアンジュエリーのバイヤーさんがいらっしゃると言っていたな。

以前はいかついおじ様だったな。今回はどんな方なんだだろう・・・

私は英語圏じゃないから関係ないけど、ジュエリー見せてもらえないかな。


あ、もうこんな時間だ!おやすみなさい・・・ぐう・・・


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