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ユートピアの亡霊  作者: サンファイト
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私の理想郷

私の名前は夕凪ゆうなぎフウカ。


どこにでいもる普通の女子中学生だった。


私の人生を変えたのは、あの事件だった。





学校が終わり、いつも通り、いつもの友達と一緒に下校し、いつも同じ場所でバイバイする。


しかし、今日は学校を出た後、私は今日いつに忘れ物をしたことを思い出した。


それはこの後の塾でも使う、お気に入りの筆箱だ。


「アリサ、私筆箱忘れたから取りに行ってもいい?」


「いいよ!じゃ、ここで待ってるね~」


彼女、月白アリサは同じ中学校に通う、私の数少ない親友で小学生の時から仲が良かった。


家族ぐるみの付き合いもあり、毎日一緒に下校するのが小学生以来ずっと続いている私たちの日課なのだ。



「わかった!すぐ戻ってくるね」


私は先生に事情を話し、机の中に忘れていた筆箱を回収して、足早にアリサの元へと戻る。


「お待たせ―!」


「大丈夫だよ!じゃ帰ろっか」


「うん!」



「----------」



私たちはいつものように談笑しながら帰り、そしていつものところでバイバイした。


「またね~フウカー」


「うん!また明日アリサ~」



私は家につくと、わざわざ回収した筆箱を忘れまいと一番にランドセルから塾のカバンに移して、それから学校の宿題を始めた。


「~~♪」



突然母親が私の部屋に飛び込んできた。


「ねぇアリサちゃんが...」


「アリサが何?」


「今病院だって…」


「え?」


私は訳が分からなかった。さっきまで一緒にいたのに、ついさっきまでいつも通りだったのに、なぜアリサは今病院にいるのか。


心臓の音がうるさいほどに、胸の中で激しく鼓動を打つ。




私は母親の運転する車で足早に病院へ向かった。


移動中に聞かされたのはあまりにも衝撃的な内容だった。


アリサは私と別れた後、一人で自宅に向かっている途中に通り魔に襲われたらしい。


そしてどうやらかなり危険な状態らしい。


私の母親は警察から電話を受けて事態を知ったみたいだ。


頭の中が混乱して、収拾がつかない。


アリサの母親も私たちが毎日一緒に登下校しているのを知っていた。


そのため私の身を案じて、そのことを警察に伝えてくれたらしい。



病院につくと待合室に案内された。


今は緊急手術中らしい。


ここにきて不安が一気に爆発する。心の中で何回もアリサに尋ねた


「大丈夫だよね?」

「また一緒に学校行けるよね?」



「………」



何時間待っただろうか...


手術中の赤いランプが消えた頃、外はすでに暗かった。


ドアが開き、疲れ切った様子の医師が静かに現れた。


医師の一人は、待合室の隅で膝を抱えていたアリサのご両親の元へ向かった。


医師が深く頭を下げた。


その瞬間、すべてを理解した。


医師の口から発せられた言葉は私には聞こえなかった。


その場にはアリサの母親の、声にならない慟哭だけが響いた。


それと同時に強烈な思考が私を支配した。


「ごめんねアリサ…私が筆箱を忘れたから…私のせいで…ごめんね…」


当時の私は自分を責め続けた。


どれだけ謝りたくても、もうアリサはここにはいない。


そしてこの予見できない理不尽な犯罪への憎悪が私の人生をかけた研究の始まりだった。


高校に入学した頃からは、私は犯罪心理学や行動学などを一心不乱に勉強した。


勉強にはなぜだか夢中になれた。


勉強している間は親友を失った悲しみが少し和らいでいる感覚もあったからだろう。


「理不尽な不幸はこれ以上あってはならない」


目標は 犯罪の根絶 ただそれだけだった。


高校、大学と私はまさに彗星のように学術界を駆け抜けた。



その中で作り上げたのは、人間が持つありとあらゆる感情の起伏、思考を量子レベルで監視分析し、犯罪の芽が生まれる手前で、それを抑制する未知なるシステムだった。


『ピース・メーカー』 それをこのシステムの名前にした。



大学3年の夏、私はこれまでの研究の成果を学会で発表した。



「完全な平和の実現のためには、個人の自由な感情を制限しなければならない時もある」


私は必死に訴えた。


(これが世間に認められれば、犯罪をこの世から消し去ることができる)


しかしながら、プライバシーを重視する現代社会にとってそれは到底受け入れられるものではなかった。


その場にいた研究者や犯罪心理学の専門家などは一斉に私の論文を批判した。


「もしこのシステムが実現すれば、監視は人の意識下まで及び、人々は感情の自由を奪われた状態で生き続けなければならない」

「それは、人間の感情を壊してしまうものだ」

「誰もがシステムの望むように生きることを強いられる世界になる」



しかし、私はわたしはシステムに反対する人間たちを一蹴した。


「それは、理不尽な悲劇から目を背け、不幸な誰かが生まれることを許容するということだ」


私の信念は何があっても揺らぐことはなかった。


しかしその場では、私が発表した論文は、あまりに無謀で危険すぎる、とされ批判の的になるだけだった。。


加えて、あの学会での発表はニュースにも取り上げられてしまい、世間は私を危険人物扱いし始めた。


悔しかった。世界を理不尽から救いたかっただけなのに。


なぜ私の研究が認められないのか。


この世を恨んだ。


現に、今の世の中は情勢の不安定さなどから、犯罪の増加が著しいというのに、それさえも私の味方にはならなかった。



ニュースにこの一件が取り上げられて以降、毎日のようにSNSでは脅迫まがいのメッセージが届き、次第に私の心身は疲弊していく。


自分が人生をかけて行っていた研究にも手がつかなくなった。


何をするにも気持ちが乗らず、辛い。


そうした日々を送っていると次第に大学にも行けなくなった。


大学の研究仲間からは私を心配するメッセージも届くが、それに返信することもできなかった。


部屋も散らかり始める。


ネットの世界でしか見たことのないようなゴミ屋敷が、今は目の前にある。


こんなにも無様で情けない自分にも嫌気がさしていた。


完全に ”鬱” であった。


少しだけ気力が湧く日もあったが、やはりその大半を惰性で過ごしてしまう。



「---------------」



そんな日々を過ごす中で、ある日私は突然思い立ったように行動に出る。


「もう楽になっていいよね」


そこに迷いはなかった。




しかし、意識が途絶えるその直前に、心の中では奇妙な、それでいてなぜか安心できるような気持が湧いたような気がした。


この気持ちは何だろうか…




「-----------------------」




次に目を覚ました時、私は自分がどこにいるのか把握できなかった。


そこは白い光に満ちている空間で、私はぽつんと立っていた。


「あぁ、死んだんだね」


はじめまして。サンファイトと申します。

この度はわたくしの初作品である「ユートピアの亡霊」をお読みいただき、ありがとうございます。

全てが初めてで、至らない点も多いと思いますが、よろしくお願いします。

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