第2話 ヴェイルのお誕生日はいつ?
ラブコメ(?)ですかね…
「ねえ、ミレーヌ。ヴェイルってお誕生日いつだと思う?」
ある日突然、アリアがミレーヌに聞いて来た。
「ヴェイル様のお誕生日……そういえば知らないわね。アリアは何か贈り物がしたいの?」
「うん。だってすっごくお世話になってるし……大好きだし……」
そう言って赤くなる。そして続けて、
「そうだ、リューク様ならヴェイルのお誕生日を知ってるかしら?後、ヴェイルの好きな物、とか」
と言った。
「それは……わたくしに『リューク様に連絡してヴェイル様のお誕生日を聞き出して欲しい』と言っているのかしら?」
ミレーヌが聞き返す。
「うん……えへへ……お願いします、お姉様」
アリアが照れながら答える。
「……でも、そう言う理由でお話ししても良いものなのかしら……もっと他の用事もないと……お邪魔では?」
少し頬を染めながらミレーヌが言う。
照れ隠しなのか、手元のストロベリーティーを一口飲んだ。
「そ、そうかもね。……うーん、どうしよう……ミレーヌがリューク様に会いたいって言うのは?」
「えっ?」
アリアの言葉にお茶を溢しそうになる。
「それはストレート過ぎるわ。わたくしが……リューク様に……」
「会いたいでしょ?」
アリアの一言に彼女が無言で頷く。
「ミレーヌ可愛い~私もヴェイルに会いたいなぁ……今何してるのかな」
ミレーヌも遠くを眺める様な目をして言う。
「きっと軍部の事でお忙しいのよ。魔王陛下だもの」
「そうよね……何が好きなのかなぁ、彼」
「少なくとも『光玉貝』はお好きよね」
「あ、トラフェリアの海でしか獲れないあの貝ね。男子の胃袋を食べ物で釣る、という事かしら?」
「釣る……じゃなくて、例えば『最近沢山水揚げされたのでそちらにお持ちしたいのですが、如何ですか?』って聞いてみて、そのついでにお誕生日聞くのはどう?」
アリアが顔を輝かせてこちらを見た。
「良いかも!それ!」
2人は実際に水揚げ量を確認してみた。
明日出荷出来そうな個数も確認する。
そして恐らく業務が終わったであろう時間に、通信貴石を使ってナガザランに連絡し、リュークを呼び出して貰った。
「ミレーヌ姫、今宵はご機嫌いかがかな?」
「リューク様。ご機嫌麗しゅうございます」
通信に出たリュークの声に、ミレーヌが嬉しそうに返事をする。
「早速ですが、ヴェイル様の御好物の光玉貝が沢山獲れましたの。氷特性の係の者が瞬間冷凍いたしましたので、そちらにもお持ちできますのよ……いかがでしょうか」
「それは喜ぶと思うな。是非いただこうか」
「分かりましたわ。明日届けさせます。……それから、少しお伺いしたいのですが……」
「何かな?」
少し勇気がいったので、彼女はふうと息を吐いてから続ける。
「……あの……アリアが知りたがっているのですけれど、ヴェイル様のお誕生日はいつでしょうか?お世話になっておりますので、お祝いをしたいと考えておりまして……」
「ああ、……申し訳ないが、誕生日は4ヶ月程前にもう過ぎてしまったよ」
「え?では……来年ですか……あ、あの、ではリューク様のお誕生日はいつでしょうか?」
ミレーヌが思い切って聞いてみる。
「え。ええと……なんだか照れるのだが、同じなんだよ」
リュークが言い淀む。
「はい?同じとは?もしかして……」
「うん。一年違いなだけで、ヴェイルと一緒なんだ。誕生日……」
「「えええ?!」」
横で聞いていたアリアも一緒につい驚きの声を上げてしまう。
「あれ?アリアもそこにいるのか?」
リュークが聞いてくる。
「は、はい……お誕生日同じなんですね……なんだか負けた気がします」
アリアが何故かしょんぼりして言う。
「何に負けたんだ?」
「あ、いえ……そうだ、あの、ヴェイルが好きな物って何かご存知ですか?」
ついでに彼女が聞いてくる。
「そうだな……最近彫り物に凝っているみたいなんだよな、アイツ……」
「彫刻ですか。良いご趣味ですね。材質は何ですか?」
「貴石が多いな。翡翠や青金石、孔雀石や、試作には蛇紋岩なんかも使っているな」
「では、それらの原石などをプレゼントしたら、喜んでくれますか?」
「ああ。喜ぶと思うよ。考えてくれてありがとう」
2人はその後も一言二言やり取りをすると礼を言い、通信を終えた。
暫く黙っていたが、やがてミレーヌが言う。
「……わたくし、再来月お誕生日なの。リューク様と同い年になるわ。ヴェイル様よりお姉さんね」
そして得意顔で腕を組んだ。
「ええー?羨ましいなあ……私は3ヶ月前に17歳になったとこなのに」
アリアが心底羨ましそうに彼女を見た。
頑張れ恋する乙女達
次回の外伝の更新は9月6日(土)12時10分です