表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/45

第35話 神の条件

 配信の準備画面を閉じたとき、俺の手のひらは少しだけ汗ばんでいた。

 何百回と繰り返してきた配信のはずなのに、今日だけはやけに緊張した。

 理由は――まあ、分かりきってる。


「というわけで……来たる『DIRECTORY:RELOAD』、俺も出場することになりました!」


 宣言した瞬間、コメント欄が流れるように動き出す。


『やったあああ!』

『ガチで!?マジ!?』

『新天地ってこと!?』

『え、ミラちゃんの卒業関係あるの?』


 ……出たな、鳩。


 一部の視聴者が、ミラの話題を引っ張り出してくるのは予想してた。あんなに仲良くなったミラの卒業発表の直後に、唐突に大会参加を表明したら、そりゃ勘ぐられる。


 でも、今は違う。これから俺は、「勢いのある場所」で生きていく。いちいち反応して、流されてる場合じゃない。


 コメント欄をさらっと見流して、俺は笑顔を浮かべたまま次の話題に切り替えた。


「大会までにはチームも編成してくから、続報楽しみにしててくれよな!」


 配信を終えた後、ディスコードを立ち上げて、メッセージを打ち込む。


 最初に声をかけるのは当然、斬波レイナだ。FPSで組むなら、まずは彼女以外ありえない。


『レイナ、『RELOAD』一緒に出ない?』

『もちろん!ついに来たかって感じね』

『てかディレクトリ移籍おめでと!話さないように気を付けないとね』

『まじ頼むな……(笑)』


 ほんと、長い付き合いになったな――と、少しだけ懐かしさもこみあげつつ、即答でOKしてくれたのがありがたい。

 

 次に考えたのは、もう一人の相棒、空劫ユエだ。

 「ブライド+α」って名前で3人で出たあの大会、今でも視聴者に語られることがある。物語性としても、再結成はアツい。


 だけど、返ってきた返事は――


『ごめん!実は別のチーム決まっちゃってて、今回はNGかな。でもせっかくだし、もっとビッグな相手と組んでみるのもアリじゃない?』


 軽くしょんぼりしつつ、でもユエのその言葉で、少しだけ視界が広がった気がした。


 ――ビッグな相手。俺の晴れ舞台。


 そのとき、頭の中に一人の名前が浮かんだ。


 じん


 ゲーム実況界隈なら知らない者はいない超人気ストリーマー。FPSでは毎回上位に食い込んでいて、存在感もプレイも圧倒的。

 共演は何度かあるけど、チームを組んだことは一度もない。


 正直、俺のフォロワー数じゃ釣り合わないかもしれない。でも……今の俺に必要なのは、無難じゃなくて「挑戦」だ。


 ディレクトリの担当者に連絡を取って、オファーの仲介を頼んだ。


 数日後、返ってきた返事は――


「OKだそうです。神さん、タカアキさんのこと知っていて、むしろ興味を持っていたようですよ」


 ……マジかよ。

 驚きと、ちょっと信じられないような気持ちが胸に渦巻いた。


「ただ、一つだけ条件があるそうです」


「条件?」


 なんだろう。チーム構成?時間帯?それともスポンサー絡みの何か?


 そして伝えられた内容は、想像のはるか上をいっていた。


「『今後半年間、Vtuberとのコラボは控えてほしい』とのことです」


 ……は?


 言葉を失った。

 なんで? どうして? 理由がわからない。


 でも、これが「神」と組むための条件なのだとしたら、簡単に無視することもできない。


 その瞬間、ミラの配信で笑っていた顔が、ふと脳裏に浮かんだ。


 俺は、試されている――そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ