【番外編】忘れえぬ思い(6)
「ミア皇太子妃……」
ケイン大公の声があまりに近く、ドキッとしてしまう。
「香炉を消してください」「かしこまりました」
ケイン大公の指示に従い、従者が香炉を下げた。
さらに護衛の騎士に「窓を開けてください」とケイン大公が命じる。
まだ甘い香りは漂っているが、さっきよりはうんと薄まったと思う。
いまだケイン大公にもたれている状態だったので、体を起こそうとすると「空気を入れ替えているので、次第に香りの効果が抜けるはずです。今は無理をせず、楽にしてください」と言われる。
そこで申し訳ないが、そのままもたれさせてもらうことにした。
そこでふと思う。
ヴァルドの引き締まった胸の中ではドキドキが中心だが。
ケイン大公の胸の中は、なんだか懐かしさがあり、ホッとすると。
柔らかく、郷愁を覚える。
読者家であり、才子なので、体はあまり鍛えていないのかもしれない。
「ミア皇太子妃にこの香りは強過ぎたようですね。ブレンドし、もう少し効果を押さえた上で、キャンドルを作るといいかもしれませんね」
「そうですね。とてもいい香りで、私は気に入ったのですが……」
「ベルガモット、ジャスミンをブレンドするといいかもしれません。ブレンドしたものを用意できましたら、また声を掛けます。せっかくキャンドルにするなら、ミア皇太子妃がお好きな香りがいいですからね」
「ありがとうございます……!」
この後、新鮮な空気を吸うことで、メロメロな腰抜け状態からなんとか復活できた。そしてリカとコスタも部屋に戻って来たのだけど……。
私が香炉の香りで骨抜きになったと知ると、二人は爆笑するが……。
香りの効果は侮れないと思います!
もしかしたらヴァルドだって直接あの香りを吸い込んだら……なんて想像をしてしまうが。
あの香りがなくても、私を溺愛する時のヴァルドは……。普段からは想像できないぐらい積極的で艶めいているのだ。ブレンドし、効果を薄めたぐらいが丁度いいはず……。
ということでケイン大公がブレンドした香りを用意してくれるのに期待しつつ、マダム達の要請に応え、お茶会を開催。ケイン大公も参加してくれているが……。
春になると、マダム達は別の用事でも忙しくなる。
それはファッションウィークが始まるからだ。
皇族の場合、デザイナーが皇宮に出向き、トレンドを押さえつつ、伝統にのとった皇族ファッションを提案してくれる。
その一方で貴族は、春に各デザイナーが新作を発表するので、お店に足繁く通い、トレンド掴み、オーダーメイドするのだ。
公爵家クラスになれば、屋敷にデザイナーを呼びつけることもできる。だが知り合いのマダムと声を掛け合い、おしゃべりしながらお店へ出掛けるのが楽しいのだ。
よってこの時期、ブティックに足を運ぶマダム達が多い。それに比例し、お茶会の開催数が減る。
ケイン大公と公爵家のマダム達とのお茶会も、ここにきて毎日ではなく、一日おきになった。
おかげで私はフロストと過ごせる時間も増え、この日は乗馬を楽しんでいた。
まだ一人でポニーに乗るのも無理なので、私が横乗りして、膝に乗せることになるが……。
今日は二人乗りに挑戦することにした。
そうなるとドレスでは乗りにくい。ならばとリヴィ団長の服に着替えるまでだ。
つまりはマリアーレ王国騎士団の隊服、上衣とズボンに履き替え、フロストと二人乗りをした。
「マァマ、すごい! おうまさんのたてがみ~」
「フロスト、このグリップをしっかり掴んで。そしてお馬さんの動きに合わせてあげるのよ。その方がお馬さんが動きやすいから。分かる?」
「うん。おうまさんもおなじこといっているよ~」
フロストは魔術の才能があるが、馬術も得意に育つかもしれない。
何せ馬の動きに合わせるのがとてもうまいのだ! 馬もフロストが乗ることにストレスを感じていない!
「さすがパパとママの子ね。フロストは優秀だわ!」
もう親バカになっていると自覚があるが、仕方ない。だって本当にフロストは、ヴァルドの血をしっかり引き継ぎ、有能だから!
「ミア皇太子妃」
そこにコスタがトコトコとやって来た。
「どうしたの、コスタ?」
「大した報告ではないんですけど。客人であるケイン大公がお忍びで街に行かれました」
「!? そうなの?」
「多分、あれですよ、香油を買いに」
「あ……」
きっと私のリクエストした香りのブレンドのためね。
「でもなぜお忍びなのかしら?」
「多分、自由に動きたいからではないですか? 公式に出掛けるとなると、皇帝にも報告する必要がありますよね。そうなると大勢の護衛をつけることになりますし、店側にも事前に連絡をしたり、気を遣わせる。ミア皇太子妃も、たまに王都に繰り出す時は、こっそり団長姿で出掛けていましたよね?」
マリアーレ王国にいた時。
確かにそうしていた。
身軽に動きたい……その気持ちはよく理解できる。
「気持ちは理解できたけれど……少し心配だわ。……丁度いいわ。この姿だし。私がケイン大公の護衛に付くわ」
お読みいただき、ありがとうございます!
【完結】一気読みできます
『ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!』
https://ncode.syosetu.com/n2333ju/
●こんなお話●
頑張る私に引き寄せられる素敵男子たち。
でもボンビーガールは自らの手で、幸せを掴もうと奮闘!
だが格上貴族の令嬢や魔獣の登場で大ピンチ!
でも負けない!
さらにさらに。
幼なじみとの恋を実らせたい文官、苦労をかけた両親に報いたい騎士。
愛が重い令嬢、兄嫁のマウントに悩むマダムなど
私が接点を持つ人々の悩みも解決していきます!
ページ下部のバナーからぜひ遊びに来てください☆彡























































