【番外編】新生活(5/6)
備蓄倉庫。
倉庫と呼ばれているが、元々籠城のために作られた部屋だった。それを再認識するのは、ヴァルドと探検を始めてから。
寝室とその隣の小部屋は序の口だった。
ワインとパンが備蓄されている部屋以外にも、沢山の部屋がある。
ポーションや医薬品が満載の部屋、武具や武器が格納された部屋、工具や修繕のための板や鉄板などの物置部屋もあった。
さらに礼拝堂や厨房と食堂もあり、二段ベッドが沢山置かれた兵士や騎士のための大部屋もある。薪や炭も備蓄されていた。
少し手入れするば、籠城のための部屋として全然使えると思った。
「ミア、ここが大浴場だ」
「大浴場があるのですか!?」
「籠城を想定しているからな。兵士や騎士用の大部屋も見ただろう?」
大きな両開きの扉を開けた先には、天井の高い大浴場が、確かに広がっている。
大理石で作られた大浴場には女神像も設置され、実に豪華な雰囲気。籠城していても、ここで湯船につかり、温泉で体を温めれば……。
大いなる活力になるだろう。
「こちらに皇族専用の浴室も用意されている」
ヴァルドの案内で大浴場の手前の扉を開けると、そこは通路になっている。
そこをしばらく進み、扉を開けると……。
皇宮の自室と同じスケールの浴室が用意されている。
それは前世で言うならジャグジーサイズで、床に浴槽が埋め込まれているタイプだ。
「湯が出るか確かめてみよう」
ヴァルドが蛇口を捻ると、ゴボゴボと音がして、それからしばらくすると……。
勢いよくお湯が噴出される。
「これで今晩は温泉に入れるな」
「そうですね。お湯も綺麗ですし、どうやら定期的に掃除をされていたのですね」
「そうだな。籠城の用意をしているとなると、百年戦争で負けを意識していたのかと思われてしまう。どうやら父上はわたしにさえ話していなかったが、ここでいつでも籠城できるよう、備えていたようだ」
これには「なるほど」であり、その備えのおかげで今晩も温かい湯船に入れると安堵した瞬間。
「ミア、探検はこれでおしまいだ」とヴァルドが私の腰に腕を回した。
確かにここに来るまでの間に部屋はほとんど確認できていた。
「では元いた部屋に戻りますか?」
「いや。せっかくだから温泉に入ろう」
「! お昼から温泉なんて、贅沢ですね。では私はタオルやローブを用意しておくので、ヴァルドは先に入浴してください。私はヴァルドの次に入ります」
そう言ってヴァルドから離れようとすると……。
「ミア、タオルやローブはすぐそこだ。自分でもとれる」
ヴァルドは腰に腕を絡めたままそう言うと、ぐいっと自身の胸に私を抱き寄せる。
「そう言われるとそうですね。では私は元の部屋で待ってい」
そこでヴァルドの唇が私の口を塞ぎ、その手は私の背中でゆっくり動く。
さらに胸元のリボンもスルリと外されている。
「ヴァルド……!?」
いきなりの激しいキスに、息が上がり、驚きながらヴァルドを見る。
「せっかく二人きりなんだ。普段、できない時間を過ごそう、ミア」
それってつまり……?
気付くとドレスの背中のホックはすべてはずされている。
え、これはもしや……!
「ミア、一緒に湯に入ろう」
「……!」
キスをされてドキドキしていた心臓が、これまで以上にドキーンと反応している。
「い、一緒にですか!?」
「そうだ」
答えながらヴァルドは私のドレスを着々と脱がしている。
「え、待ってください」
「なぜ?」
「な、なぜって……は、恥ずかしいです……!」
するとヴァルドは吹き出して笑ってしまう。
「既にベッドで恥ずかしいことは経験済みだろう? お互いの体隅々まで理解できているはずだ。一緒に入浴することぐらい、どうってことはない」
どうってことはない!? そんなわけない!
「恥ずかしいという気持ちが吹き飛ぶような、魔術を掛けようか?」
そんな理性が吹き飛ぶ魔術を掛けられたら大変だ。
再びヴァルドを襲ってしまう!
「ここ最近ずっと。ミアを欲しいと思っていた。だがその時間もなければ、婚儀をまだ挙げていない。でも明日の朝まで、二人きりだ。存分に愛を確かめ合うことができる」
気付けば私は既に下着姿になっていた。
しかもヴァルドは自身の服も脱ぎ始めている……!
そしてヴァルドが上衣を脱ぎ、タイを外し、シャツを脱ぐ姿を見ていると。
自然と体が期待で反応していた。
体の芯が疼き、ヴァルドを欲しいと思っている。
「……!」
目の前に、あの素晴らしい引き締まったヴァルドの上半身裸が現れた。
これにはもう本能で。
抱かれたいと思ってしまっている。
「ヴァルド……」と小さくささやくと、彼は私を抱きしめ、そうしながら下着を外していき――。
湯船には半分ほどお湯がたまっていた。
お互い一糸まとわぬ姿となり、ヴァルドは私を抱き上げ、湯舟へと運んで行く。






















































