突然の
フロストの部屋に着くと、ちゃんと乳母が付き添っていてくれた。
確認すると、私達が夕食会をしている間に、フロストの入浴も終えてくれていた。フロストは入浴後しばらく起きていたが、今は再びぐっすり寝ており、何も問題ないとのこと。
安心し、自室へ戻ることにした。
部屋に戻り、ドレスを脱ぐ間に、入浴の準備が進められる。
帝国に来て、驚いたことは。
それは湯船にじっくり浸かる習慣があるということだった。
帝都がある辺りは、冬の寒さが厳しい。だがその帝都の中心部で、なんと温泉が発見されたのだ。湯はこんこんと湧くことから、地下水路を作り、皇宮内に温泉を運ぶ仕組みを作り上げた。
そしてバスタブにはカラン(蛇口)がつけられ、温泉の湯で満たすことができたのだ。
これには驚き、その技術は、マリアーレ王国の先をいっていると思った。
とにもかくにも温かい湯にすぐに浸かることができ、大変便利。しかも温泉なだけあり、疲れた体に効く。そして体の芯から温まるので、熟睡することもできた。
今日もしっかり浸かり、疲れを落とし、入浴を終えることになった。
香油を塗り、白の寝間着に着替える。ラズベリー色のガウンを羽織り、寝室へ向かうと……。
いい香りがする。
既に侍女がナイトティーを用意してくれていた。
ソファに座り、注がれたばかりの紅茶を口に運んでいると、メイドが足早に部屋へ入ってくる。
「ヴァルド様がこちらへ向かっているそうです」
「え、そうなの? 夕食会の後、歓談をしていたのではないの?」
「はい。そうなのですが、『疲れているので』と早めに切り上げ、既に入浴も終えているようです」
入浴も終えている……ということはヴァルドも寝間着にガウンということだろう。ならばドレスに着替えなくてもいいということ。そこは安心し、寝室を出て、前室へ向かった。
前室にはソファセットが暖炉のそばに置かれ、窓際にはテーブルセットがある。ここで食事をとることも可能だ。今は窓に、厚手のアイボリーのカーテンが引かれている。
ひとまずソファに腰を下ろした。足元は毛足の長いベージュの絨毯で、暖炉の火もあり、大変温かい。
パチッ、パチッと薪の爆ぜる音がしている。
外は冬の夜、寒さは厳しいはず。
でもここはとても暖かい。
メイドがヴァルドの分も含めた紅茶を用意してくれた。
そこでノックの音がして、ヴァルドが入って来る。
濃紺の寝間着にオフホワイトのガウン。いつもサラサラと額にかかる前髪は、後ろへ流している。まだ髪が少し湿っているのかもしれない。
「ミア、寝室で待っていてくれてよかったのに」
「? そうなのですか?」
「ああ。今日はとくに冷える。一緒に休もうと思った」
一緒に休む。
あ、そうなんだ。
え、一緒に休む!?
一緒に休む=一緒のベッドで寝ること!?
ここはホテルではないので、寝室にベッドは一つしかない。
さらにマリアーレ王国には夫婦の寝室があるが、ここにはない。
つまり……。
え、え、え。
お互いの気持ちを確認し、相思相愛であることは分かっている。
夢の中ではキスをして、それ以上もしていたが。
さらにはあの約二年前に一晩だけ結ばれたが。
以後、何もない。
現在に至るまで、夜を共に過ごすことはなかった。
漠然と私は、これから二回も結婚式を挙げるのだから、そこで何かがあるだろうと思っていた。
何かってつまり、その……アレですよ、アレ!
まさか今晩とは思わず、もう心臓がバクバクしてしまう。
「せっかく紅茶を用意してくれたのなら、飲むか」
そう言うとヴァルドがソファに座った。
対面ではなく、私の隣に!
なんだかとってもいい香りがヴァルドからして、つい彼に体を近づけていた。
「ミア……」
ヴァルドは、ティーカップをとろうと伸ばした手で、私を抱き寄せた。






















































