ようやく落ち着ける?
前世日本人だった私は、気が付けば異世界に転生していた。
運動神経の良さは、前世と同様だった私は。
転生したこの世界で、一国の王女ながら、剣聖と呼ばれるまで剣術を極めている。
隣国、ノースクリスタル帝国とは百年戦争の最中であり、私の剣術の腕を生かさない手はなかった。
そこで男装した私は、マリアーレクラウン騎士団の団長リヴィとして、戦場を駆け抜けることになる。
その戦場で、何度も剣を交えることになったのが、ロイヤル騎士団を率いる帝国軍の皇太子ヴァルド・アルク・ノースクリスタルだった。
ヴァルドは剣神と呼ばれ、しかも魔術も使える。だが私はそのヴァルド相手に互角に戦い、次第にお互いを好敵手と認めるようになっていた。しかしヴァルドとの勝敗がつかないうちに、百年戦争は終結。これで幸せな日々が訪れるかと思いきや。
私の父親であるマクシミリ国王は、和平条約を結んだ帝国に対し、優位に立つことを模索する。その結果、私をスパイであり、皇太子妃として、ヴァルドと結婚させようと目論んだ。
だが帝国の皇族の結婚は、初代皇帝の魔術により、“つがい婚姻”という制約を受けていた。魔術を使うためには、体内の魔力を使う必要があるが、誰もが魔力を持つわけではない。だが皇族と五つの公爵家は、魔力持つ人間ばかり。よって皇族の婚姻は、五つの公爵家との間で行われることになった。しかも一度結ばれた相手とは“つがい婚姻”が成立し、魔術が発動。その相手以外と、子をなすことはできなくなる。
私の父親はこの“つがい婚姻”を逆手に取ることを考えた。平和条約締結記念舞踏会に出席するため、マリアーレ王国にやってくるヴァルドの純潔を奪えと、私に命じたのだ。だが私は宿敵であるが、好敵手だったヴァルドの純潔を奪うことはできないと、王宮から逃げ出したのだけど――。
団長リヴィの男装がバレそうな時、身を守るための魔術が込められていると聞いていたペンダントには、ヴァルドの純潔を奪うための魅了魔術がかけられていた。そうとは知らず、逃亡中の私はヴァルドに捕えられ、ペンダントに込められた魔術を発動するための呪文を唱えてしまう。
その結果。
私はヴァルドをベッドに押し倒し、彼の純潔を奪ってしまった。
大変なことをしたと逃亡したところ――。
一晩の過ちで、妊娠が判明。つがい婚姻が、ヴァルドとの間に成立してしまっただけでも大問題なのに、息子まで授かってしまった! 身を隠している森の中の村で、静かに暮らしていくつもりだったが――。
なぜかそこにヴァルドが現れ、さらに私と息子フロストが攫われそうになる。
でもフロストは、赤ん坊ながら既に魔術を使え、私はヴァルドの元へ転移。でもヴァルドはその時、まさに戦闘の最中。その戦闘をあっという間に制圧したのは、まさかの赤ん坊のフロスト!
この結果、皇族と五つの公爵家で婚姻を繰り返さなくても、強い魔力を持つ子供が生まれることを証明できたヴァルドは、皇族の婚姻の慣習を変更することに成功。五つの公爵家もこれに同意している。
この結果を受け、ヴァルドは私とのつがい婚姻を発表。つまり帝国建国以来初めて、他国から皇太子妃を迎えたことになる。しかも既に未来の皇太子も誕生しているのだ。詳しい事情を知らない帝国民は勿論、多くの国々が驚愕したことだろう。
ということで現在はようやく落ち着いた……わけではなかった。






















































