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宿敵の純潔を奪いました  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
第三部

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一体どんな表情で、顔を合わせればいいのか

「ではこちらでお待ちください。間もなく殿下がいらっしゃいます」


 完全にフリーズしてしまった私は、あの大広間――白鳥の間から、ヴァルドが呼んだ侍女たちに案内されるまま、別室へ移動していた。通されたのは、サンレモニアの村で住んでいた家の、全部屋を合わせたような広々とした部屋だ。


 そこで身支度を整え、久々にきちんとしたドレスを着せてもらった。


 アイスブルーのシルクのドレスには、星の砂のようにグリッターが散りばめられている。重ねられているチュールは、光沢と透け感があり、動く度にニュアンスを与えてくれた。宝飾品は、プラチナを土台にアイリス色の宝石が埋め込まれており、華やかで美しい。


 改めて姿見に映る私は……。


 十九歳での出産だった。加えて比較的早い段階で、戦士の役割に復職している。日々、体を鍛えたおかげで、体型の崩れもなかった。おそらく子供が一人いると言っても、驚かれるだろう。


 暖炉から適切な距離をとった場所に置かれたベビーベッドを見ると、フロストが気持ちよさそうに寝かされている。とてもあんな魔術を使ったとは思えなかった。


 ひとまずソファに座り、ぐるりと部屋を見渡す。


 ウォークインクローゼットにつながる扉が見え、その横には本棚が並び、文机と椅子が置かれている。ソファのそばには暖炉があり、炎が赤々と燃えていた。


 既に濃紺のカーテンは閉じられており、日が暮れているようだ。


 煌々とシャンデリアの明かりが灯り、壁に掛かった巨大な絵画、ローテーブルに置かれた美しい薔薇の花を照らしている。ソファは白い生地に青い薔薇が散らされたデザインで、絨毯はカーテンと同じ濃紺だった。


 さて、と思う。


 思考停止していたが、そろそろ脳を働かせた方が良さそうだ。


 驚愕していいと思うのだけど、ヴァルドは……私の正体に気づいていた。気づいたタイミングはいつだったのか。それは分からない。だが少なくとも今日、再会した時点では、私がマリアーレ王国の王女ということを把握していた。


 さらに。


 ヴァルドは、帝国の筆頭公爵家の嫡男イザーク・ラインの妹デボラとの婚約の話が出ていたようだ。しかしそれは、私がヴァルドの純潔を奪うことで、立ち消えになっていた。兄であるイザークは、敵国の王女を皇太子妃に迎えることに、強く反対していたようだ。ところがフロストが魔術を行使するのを見て、その威力を体感、考えを改めてくれた。


 私をヴァルドの皇太子妃と認めると言ってくれたのだ。


 何よりもヴァルドは、どうも私のことを、以前から好きだったように思えた。ヴァルド本人も「頑固と言われるのは心外だ。一途、と言って欲しい」と言っていたのだから。


 この事実には、じわじわと喜びがこみ上げる。

 てっきり再会したら、殺されると思っていたのに。

 どうもそれはないようだ。


 ひとしきり歓喜に心が沸いた後。


 深呼吸して気持ちを静める。


 私を好き。

 これは一体全体、どういうことなのかしら?

 私が王女としてヴァルドに会ったのは、彼の純潔を奪う時だ。

 それ以前は、マリアーレクラウン騎士団の団長リヴィとして、ヴァルドに会っていた。ヴァルドは深窓の令嬢として知られるミアのことを噂で聞き、恋をしていたのだろうか?


 でもイザークはヴァルドのことを「恋など興味なし、戦場で生きるのが自分の使命なんて言っていた奴が。本当につがい婚姻をしているなんて」と評していた。そうなると、噂で知った王女ミアのことが好きだったというのは……当てはまらない気もした。


 いろいろ分からないことばかりであるし、それに家にやってきた魔術を使える令息と令嬢は何だったのか。そちらも気になる。あの二人は帝国の人間なのか、それとも他国の人間なのか……。


 これからヴァルドが部屋に来るなら、聞きたいことは山ほどあるが……。


 私をどうやら好きだというヴァルド。

 一体どんな表情で、顔を合わせればいいのか……!


 てっきり再会したら、激高されると思っていたのに。

 ……もしかして私が逃げ出さないよう、殺意を隠している可能性も……いまだ捨てきれない。


 そこで聞こえた扉のノック音に、ソファから飛び上がってしまう。

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