冬のお楽しみ
ヴァルドが去り、約一ヵ月が経った頃。
多くの国が、残りの寒さ厳しい冬の日々を、前向きに過ごせるようにするために。カーニバルやフェスティバルを行う。それはサンレモニアの村も同じだった。
サンレモニア・カーニバル。
仮装してパレードを行い、パレードの最中は陽気なメロディが流れる。パレードが終わると、広場ではダンスタイム。広場の周囲でお菓子や飲み物が配られた。三日間にも渡るお祭りなので、皆、事前準備に余念がない。
子供たちは動物の仮面をつけ、大人は仮面舞踏会でつけるようなアイマスクタイプの仮面をつけた。パレードは荷馬車に子供たちが乗り、沿道で大人たちがその様子を見守る。
広場でのダンスタイムは、もう子供から大人まで、皆で楽しむ。
カーニバルの三日間は、多くの役割がお休みだった。だが戦士の役割に休みはない。私は三日間のうち二回が日中の勤務で、ソルレンは日中と夜間勤務がそれぞれ一回だった。お菓子や飲み物の用意、パレードの準備は、カーニバル委員に選ばれた村民が担当する。結局役割がなくても、大人はみんな忙しい。つまりメインで楽しむのは子ども達だ。
それでも私もソルレンも、そしてニージェも。
フロストを連れ、カーニバルを楽しんでいた。
「ミア様、本当にいいのですか?」
「ええ。フロストは私が面倒を見るから、カーニバル、楽しんできて」
カーニバル最終日。
夜勤明けのソルレンとニージェで、カーニバルを楽しんでもらうことにしたのだ。
なぜそんなことをしたのか。
私は気が付いてしまったのだ。
時々ソルレンとニージェが、二人きりで姿を消すことを。
つまりどちらかの部屋に籠っていることがあるのだ。
ソルレンは私と夫婦役を演じているが、実はニージェを好きなのではないか。というか既に二人は恋人同士……なのかもしれない。
冷静に考えれば、怪我を負ったヴァルドを見つけた時。あれは真夜中だった。いくらソルレンがリビングルームを動き回ったとしても。相当物音を立てないと、熟睡しているであろうニージェが目を覚ますはずがなかった。そこから推察できること。それはニージェとソルレンが一緒にいたのではないか。ソルレンの部屋に二人でいたから、ヴァルドに気が付くことができたのでは?
実は私に気を使い、隠れて二人が交際しているのなら。このカーニバルを、二人で楽しんでもらいたいと思った。デートしておいてでと、送り出したい気持ちになっていたのだ。
「自分はそんなにカーニバルを楽しみたいとは思いません。むしろ疲れているので、家にいたいのですが……」
黒のセーターにズボン姿のソルレンはそんな風に言うが……。
これは遠慮しているのだろう。
本当はニージェとカーニバルに行けることが、嬉しいはずなのに!
「何を言っているのですが、ソルレン! いつも夜勤明けのこの時間、散歩をしていますよね?」
「……! でもミアとフロストを留守番させるのは、申し訳なく思うのです」
メイド服のニージェは、既にワイン色のコートを着ている。いつでも出かけられる状態だった。どの道、今日、この時間。ニージェにはカーニバルに行っていいと言っていたのだ。
ニージェは出掛ける気満々なのだから、ソルレンもそこは便乗しちゃえばいいのに!
本当に律儀だなーと思ってしまう。
よし。
ここはソルレンが安心し、ニージェとデートできるよう、ちゃんと問題がないことを伝えないと!






















































