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宿敵の純潔を奪いました  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
第二部

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無茶苦茶を考えてしまう。

 ヴァルドは、ブロンドの髪をサラリと揺らし、顔を上げる。


「今、ここにいるのはアルクという名の流れ者に過ぎない。着ている服も、シャツにセーターにズボン。当然、洗濯物だって畳む」


 そうだった。ヴァルドは水色のシャツに白のセーター、濃紺のズボンという、庶民的な装いをしていた。スーツやセットアップを着たら、もうそれだけで高貴なオーラが漂ってしまうので、この軽装なのだけど……。


 それでもやはり品がある。それに細マッチョの鍛えられた体であることは、やはり伝わって来る。


「それに戦場では慌ただしく動くので、手取り足取り従者に手伝ってもらうわけにもいかない。自分の身の回りのことは、自分でする時もあれば、少人数での野営では、料理も作ればお茶だって淹れる。そういうものだろう、戦場とは?」


「そうですね。そうだとおも……」


 しまった!と焦る。ついリヴィ団長として答えていた。チラッとヴァルドを見るが、彼はフロストの寝間着を愛おしそうに畳んでいて、何も気づいていない……と思う。


「ご自身でできるのに、ここではメイドであるニージェを必要としたのですね」


「それは……怪我もしていた。肩を動かせないと、不便が多かった」


「そうですね。失礼しました……」


 ヴァルドがクスクス笑い、私は真っ赤になっていると思う。


 いくら動転しても、もっとマシな問いかけをできなかったの、私!――そう一人ツッコミをすることになる。


「ニージェだけではなく、ミアも体を拭くのを手伝ってくれたり、薬を用意してくれた。……ありがとう」


「い、いえ。殿下は怪我人なのですから。当然のことをしたまでです」


 感謝の気持ちに大喜びだが、後ろめたい気持ちもある。


 ヴァルドのいろいろなサポートは、ニージェもそうだが、ソルレンも私もしていた。

 ソルレンなんて、入浴の手伝いもしていたのだ。

 でもさすがにそれは私ではできない。


 だが体を拭くのを、ニージェと共に私が手伝っていたのは……見たかった、というのもある。ヴァルドのその素晴らしい体を。


 だって……。


 私は剣聖と言われたくらいなので、剣術を極めるため、並みの女性より筋肉がついていると思う。そしてそうなると、みんなの筋肉が気になる。戦場の騎士達は、仲間の前で平気で上半身裸になり、汗を拭いたり、着替えたりしていた。


 私は性別を偽っていたし、皆からは団長だと思われていたのだ。

 まさか第一王女であるとは思わず、お構いなしで服を脱ぎ、肌をさらす者が多かった。


 そういう意味で、私の筋肉を見る目は肥えていた。そしてヴァルドのその体は見事だったのだ。二年前あの晩、見た時に。あれから時が流れた。今はどうなのか。つい気になり、体を拭く作業を手伝い、その体を観察してしまったが……。


 変わっていなかった。


 変わらず引き締まった、無駄を削ぎ落した体をしていた。それに肩の怪我が落ち着くと、早朝や夕方、右手で剣の練習をしている。ちゃんと欠かさず鍛えている賜物だと思う。


 正直な話。


 魔術を使えるのだから、剣はなくてもと思うが、そこは騎士でもあるヴァルド。それに剣神なのだ。剣術を鍛錬することは、欠かしたくないのだろう。


「ミア」

「ひゃいっ!」


 うっかり頭の中で、ヴァルドの裸の筋肉を思い出していた時、本人に声をかけられた。当然驚き、声は裏返る。だがしかし。


 何をしているの、本当に私は!


 でも、仕方ない。

 ヴァルドの肉体が素晴らしすぎるのが悪い!


 なんて無茶苦茶を考えてしまう。


「シーツを畳むのが、苦手なのか?」

「!」


 ヴァルドの筋肉妄想をしている間、一応手は動かしていた。だがシーツの畳み方がめちゃくちゃになっている。フッと口元で笑ったヴァルドは立ち上がると、背後に回り、私の手を掴む。


「皇太子のわたしがシーツの畳み方を教えるなんて。前代未聞だな」


「す、すみません!」


「冗談だ」


 というか……。

 背後でそんな、距離が……、ち、近いっ……!


 私はヴァルドの純潔を奪っている。あの晩、ヴァルドと私の距離は、今以上に近かった。しかも服を着ていなかったのだ! なぜこれぐらいでドキドキするのか……!


 息子がいるとは思えない、実に初心な反応ばかりしてしまう。


「ソルレンとは新婚なのだろう? 全然、その気配はないが」


 これにはまさに「ギクリ」だ。


「寝室も別々で……。子供ができると、こういうものなのか?」


 きわどい質問を耳元でされ、めまいがする!

 耳と首筋にかかるヴァルドの息に、彼の体温を感じ、どうにもこうにも切なくなってしまう。


「わ、私達夫婦のことは気にしないでください! そ、それよりもヴァルド様こそ、よいのでしょうか。公務を一切なさらずで」


 余計な心配かもしれないが、咄嗟に浮かんだのは公務のことだった。


「申し訳ないと思う。ただ、父上は健在であるし、私は養生している身。それにわたしがいないことで、うまく回っている気もしている」


 そうだろうか。本当に。

 ヴァルドが外交で手腕を発揮していると、ノルディクスは教えてくれた。

 彼が不在になることで、帝国内より、帝国以外の国が困っている気もする。


 そこでシーツを畳み終え、ヴァルドが私から体を離した。

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