二年前と変わらない。
軽くノックし、反応を待つ。
もし反応がなければ、細く扉を開け、中の様子を念のためで確認。寝ているようだったら、それをミーチル村長に伝えるつもりでいた。
ということで反応はない。きっと寝ているのね。
そっと扉を開け、中の様子を窺う。
「……!」
なんて神々しいのだろう。
窓から射し込む陽射しが、ベッドで眠るヴァルドを照らしている。そのおかげでヴァルドは勿論、ベッド全体が輝いて見えた。
アイスブルーのサラサラの髪は、まるで太陽光を受けた氷河のように、澄んだ碧い色をしている。キリッとした眉に、閉じられた瞼から伸びる長い睫毛。仰向けだから鼻の高さが際立つ。顔色は悪くない。透き通るような肌は、ほんのり色づいている。軽く閉じられた唇は、淡いコーラルピンク。
二年前と変わらない。
どうして怪我を負ったのかしら?
剣神と言われるヴァルドが怪我を負うなんて……よほどのことだ。剣聖と言われた私とは、互角で戦ったのに。よほどの相手か、完全な不意打ちだったのか。どちらであれ、皇太子という立場のヴァルドが襲われるなんて……。襲った相手は怖い者知らずだろう。
同時に。ムカッともしていた。
ヴァルドを倒すなら、私だと思っていたのに。
不意打ちなんて、卑劣な方法で怪我を負わせたのなら……絶対に許せない。
そう強く思った瞬間。
まるでふわりという感じで、ヴァルドがゆっくり瞼を開けた。
これは「しまった!」と思う。起こしてしまったと。
心臓がドキドキと反応している。
さらにそのアイリス色の瞳がこちらへ向けられた。
「……君はあの時の。怪我は大丈夫だったか?」
「! その節は、ありがとうございました。冷静に思い出すと、御礼の一言も伝えておらず、申し訳ありませんでした。本当にありがとうございます。怪我はいただいたポーションで瞬時に癒えました。それに今、ヴァルド皇太子殿下の方が怪我をされ……」
そこで思い出す。イノシシ騒動の時のポーションは、まだ残っている。私の怪我は擦り傷程度だった。よって少量の利用で済んでいた。そして魔術アイテムであるポーションは、とても貴重。フロストがハイハイをするようになり、やがて歩き回るようになれば、怪我とは無縁ではいられない。その時のために、大切にとっておいたのだ。
「あの時いただいた貴重なポーションは、今も大切にとってあります。それを取ってきますね。あと村長が、ミーチル村長が、いらしているんです。いろいろお話を聞きたいそうなので、ご案内してもよいですか?」
「いや、待って欲しい!」
慌てて上半身を起こしたヴァルドは、肩の傷が痛むのだろう。端正な顔を歪める。その瞬間、私まで痛みを感じ、気づけばヴァルドに駆け寄っていた。
「無理なさらないでください」
思わず抱きしめる勢いでその上半身を支えると、ヴァルドはそのまま私をふわりと抱きしめる。気持ちとしては、ビックリしているのに。体は素直に嬉しさを表現していた。つまり私もヴァルドに応えるように、その背に手を回し、抱きしめていたのだ。
わ、私ってば、何を……!






















































