なぜ……?
私とフロストの寝室は二階だった。
対してソルレンとニージェの寝室は一階。
ソルレンの寝室は私の寝室の真下で、窓からは庭園と門を見ることができた。
ニージェの寝室は裏口の脇だ。
よって最初にソルレンが物音に気が付いた。窓から外の様子を窺うと、門の所でうずくまる人の姿が見える。そこでランプを用意したり、外套を着たりでリビングをウロウロすることになり、ニージェがその物音に気づき、目を覚ます。
そこで二人は合流し、門の所でうずくまる人の所へ向かったという。
「ミアはイノシシに襲われそうになった時、ヴァルド皇太子殿下に助けられていますよね。その恩人が怪我をしているのです。助けてもいいですよね?」
ソルレンは元帝国の騎士だ。理由があり、騎士を辞め、この村に来たのだと思う。だがヴァルドは、一度は忠誠を誓った相手。助けたいと思うのは当然だ。
「ええ、勿論よ。二階にも客間があって、使っていないベッドがあるから、そこへ運びましょう」
「いえ、それなら一階の自分のベッドへ寝かせます。これ以上動かすのは、傷に触ると思うので」
やはりあれは血なのね。
怪我を……しているんだわ。
でもどうしてヴァルドは怪我を?
それになぜここへ……?
「分かったわ。そうしましょう。でもこんな時間では医師は……」
「自分が頼んでみます。ベッドまで運ぶので、ニージェ、後は頼んでも?」
「お任せください。ミア様は、フロスト坊ちゃんを頼みます」
その後は真夜中であることを忘れ、皆、動き出す。
さすがに「明日にして欲しい」と言われると思った医師は、雪のちらつく真夜中なのに、ちゃんと来てくれた。
その医師が到着する前、ニージェと私はベッドに運ばれたヴァルドの服を脱がせ、傷口の汚れを洗い流すことになった。
フロストはすぐにベビーベッドに戻し、寝かしつけていた。散々泣いた後だったので、すぐに眠ってくれていたのだ。
「そこまで深い傷ではないですね。大丈夫です。助かります。それよりも体が冷えていますね」
ニージェの言葉に提案する。
「体をさするといいかしら?」
「そうですね。そうしましょう」
ソルレンが寝ていたベッドだから、まだ温もりは残っていた。それにヴァルドはそこまで長時間、外にいたわけではないと思う。でも出血もしているので、体が冷えていた。
掛け布団をかけ、その中に手を差し入れ、体をさすっていると……。
ずっと閉じていたヴァルドの瞳が、ゆっくり開いた。薄明かりの下でも分かる、アイリス色の瞳。その瞳が私を見る。いつものような目力はない。でも、何だか夢の中のヴァルドみたいだった。一瞬、口が動いたかと思ったが、すぐに閉じてしまう。
ところが!
ヴァルドが私の手を、ぎゅっと握った。
これにはドキリとしてしまう。
「髪が邪魔になるから」とスカーフで頭部を包んでいた。よってあの一瞬を見ただけで、私が誰であるかは分からなかったはずだ。きっと誰か別の人と勘違いし、手を握っているのだろう。
そうであってもこうやって手を握られるのは……嬉しい。
「ミア様、ヴァルド様の体、驚くほど温かくなっていますよ」
「本当だわ……」
触れている手も、ぽかぽかと温かくなっていた。そしてそこに医師を連れたソルレンが戻って来た。
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