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宿敵の純潔を奪いました  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
第一部

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大好きだ。

 百年戦争が終結し、ヴァルドはその才能を政治の場で生かしているようだが、帝国は確かに閉鎖的。特につがい婚姻などを、皇族自体がやっているのだから、保守帝国なのだろう。でもそこに風穴を開けようとしているヴァルドには、逆風が吹いている……。


 それを思うと、助けてあげたいな、支えてあげたいな――という気持ちに自然となってしまう。


 まあ、ヴァルドからしたら、私のサポートなど最も受けたくないだろうけど。


「こちらですか、ミア様の家は?」

「あ、はい。そうです。送ってくださり、ありがとうございます」


 家の門の前で、ノルディクスと向き合う形になった。


 あの日、父親からの知らせを受け、「後は任せた」とノルディクスに告げ、私は王都へ向かった。まさかあれがノルディクスとの唐突な別れになるとは、思っていない。しかも私との婚約の話が出て、それを心から嬉しいと思っていてくれたなんて……。


 ノルディクスのことは、嫌いではない。

 大好きだ。

 私を支えてくれた戦友。

 戦友としての絆が、彼との間にはあると思った。


「団長様。子供ってとても可愛いですよ。心がすごーく温かくなります。団長様ならきっと、素敵なパパになれると思うのです。すぐには無理かもしれません。でも時が経ち、前へ進みたいと思えたら、進んだ方がいいと思います。どうか幸せになってください」


「……ミア……様」


 月明かりに照らされたノルディクスの瞳が、潤んでいるように見える。


 本当は王宮に私はいない。

 そこに私がいると思い、病の回復を願い、自身の結婚を諦めないで欲しいと思った。でもそれは言えないので、精一杯で伝えた言葉だったが、分かってくれたようだ。


 これにはホッとした。


「ありがとうございます。ミア様もどうかお幸せに」


 そう言ったノルディクスが、手の平をこちらへ向けた瞬間。

 それはもう、三年間。

 戦場を共にしていたから。

 勝利を収め、喜びを込めたハンドシェイク。

 体に染みついた習慣だった。

 当たり前のようにノルディクスと、そのハンドシェイクを交わし、笑顔で見送った後――。


 家の扉を開け、室内の明かりを浴びた時に「え」と思う。


 どうして、ノルディクスはあのハンドシェイクを。

 そこでじわじわと理解してしまう。

 ノルディクスは……私が誰であるか、分かっていたのでは!?

 つまり、私がミア・ソフィア・マリアーレであり、リヴィ団長であると見抜いていた……!


 でもそれは当然と言えば、当然だった。

 三年間。

 ほぼ毎日、寝食を共に過ごしたのだ。

 実の弟であるタリオよりも、ノルディクスやコスタ達、マリアーレクラウン騎士団と過ごした時間は、濃密だった。


 そうか。

 きっとコスタも気づいている。

 気づいているが、黙っていてくれているんだ。


 この村を目指した時。

 サンレモニアの森にいる彼らにバレたら、困ったことになると考えてしまった。だがそんなこと、なかったのだろう。事情を話せばみんな、私がこの村へ逃げのびるのを助けてくれたはずだ。


 もしあの日、あの時、帝国を経由し、この村を目指さなければ――。


 私は魅了魔術を発動させることなく、ヴァルドの純潔を奪わずに済んだのだろうか?


「あ、ミア様、お帰りなさいませ」


「ただいま、ニージェ。フロストはもう、眠っているかしら?」


 もしもは考えても仕方ない。

 過去には戻れない。

 進むことができるのは、未来だけ。


 私に気づいているのに目をつむってくれた彼らのためにも。


 ちゃんと私、幸せになろう!

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