季節は移ろい……
ビーシダールの一件から三ヵ月。
平和な日々が流れている。
その後、ビーシダールがどうなったのか。
風の噂では、車椅子生活を余儀なくされ、声を出すこともできないとのこと。さらに片腕での生活は、かなり不自由なのだとか。もうそんな状況なので、二度とこの村に来ることはできないだろう。
さらにビーシダールが経営していた商会は、別の貴族が買い取った。その貴族は村の蜂蜜やワインを気に入っており、引き続き買い付けに来てくれるが、とても礼儀正しい。そして村人と不要な接触をもたず、問題行動もなかった。おかげで村は、安定して外貨を獲得できている。
フロストは、すくすく育ってくれていた。
ブロンドの髪は、私そっくりのストレートでサラサラ。そして散髪するぐらい伸びている。切ったフロストの髪は、束ねてロケットペンダントにしまった。用意したペンダントは三つ。一つは私がつけるもの。一つはフロストが大きくなったら、つけられるように。もう一つは……渡すことはないと思う。でも……ヴァルド用に。
今日はミーチル村長の護衛についており、今は丁度ティータイム。ミーチル村長、ハナ、私の三人で着席し、マロンタルトを食べていた。
十月になり、だいぶ冷えてきている。私は白シャツの上に、まさにタルトと同じ、マロン色の上衣を着ていた。ちなみにズボンはベージュ。ミーチル村長は、パンプキン色のチュニックで、ハナはコスモス色のワンピースを着ていた。
「そろそろ秋の狩猟シーズンじゃ。この季節になると、ノースクリスタル帝国、マリアーレ王国、その両方の貴族が狩りのため、サンレモニアの森へ踏み入る。とはいえこの村は森の奥地にあるゆえ、狩りをする者達がやってくることはない。だが森に来るのは、貴族だけではない。皇族や王族も足を運ぶ。念のため、注意した方がいい。不用意に権力者とは、接触しない方がいいからね」
紅茶を飲みながら、ミーチル村長が教えてくれたが、それは私も把握していることだった。
「ところで。髪を染めるための染料を町で手に入れた。もし興味があれば二人にやろう」
ハナは私の秘密を知らない。ゆえにこんな言い方をミーチル村長はしている。でもこれは万が一に備え、私に髪を染めた方がいいと、アドバイスしてくれていた。
「わあ、おばあちゃん、ありがとう! 一度試してみたかったの。ねー、私、これ試していいかしら?」
ハナがピンク色の染料を手にとり、私を見る。これを使うと、ピンクブロンドになるという。コスモス色など、ピンク系が好きなハナらしい。きっと似合うだろう。
「ええ、勿論よ。では私は、これを頂いてもいいですか?」
私が選んだ染料は、ローズグレイ。これをブロンドの私の髪にあわせれば、サンディブロンドになると思った。明るいブロンドから、暗めのブロンドになるので、印象はガラリと変わるはずだ。後は眼鏡もかけよう。しかも戦場では一度もしたことがない、三つ編みをすれば、絶対に私とはバレないと思った。
「よいのではないか。お前さんに似合うと思う」
こうして私は染料を持ち帰り、その日の夜、早速髪を染めてみた。
「まあ、ミア様! なんだか雰囲気が、ガラリと変わりましたね」
ニージェは風呂上りの私を見て、驚いていてくれた。
夜間勤務を終え、帰宅したソルレンは……。
「これは失礼しました。うっかり家を間違えたようで」
そう言って家から出て行こうとしたので、ニージェと二人で笑ってしまった。
一方のフロストは……。
抱っこするとじっと私を見て、目をパチパチとさせている。でもパチパチするのを止め、今度はその青紫色の瞳で、じっと私を見ると……。






















































