【番外編】バカンス(2)
フロストのリクエスト。
それは幻の島に隠されたお宝を見つけてきて!だった。
「「えっ、護衛はなしですか!?」」
マッドとコスタが声を揃える。
「未到達と言われる幻の島だ。いくら刺客でも魔術でそこまで行くのだから、追っては来ないだろう。現地に何かいても、わたしとミアで対処できないなら、他の者ではなおのこと無理だろう」
そう言われるとマッドもコスタも何も言えない。
「朝から向かうが日帰りにはならないかもしれない。定期的に連絡はいれる」
「分かりました、殿下」
こうして翌日の朝から出発となった。
フロストはご機嫌で「パァパ、マァマ、おたからをみつけてね!」と見送ってくれる。
マッドやコスタ達、護衛組は「皇子のことはお任せください」と請け負ってくれた。マーニーやリカなど使用人勢も「フロスト坊ちゃんと無事の帰還をお待ちしています」と笑顔だ。
無人島に向かうと聞いたケイン大公も、見送りに来てくれた。
こうしてシャツに薄手の麻のジャケットにズボンというヴァルドが、私の腰を抱き寄せる。肩にはいろいろ入れたズタ袋を担いでいた。
お宝探し=探検。
私は髪をポニーテールにして、ヴァルドと色違いのお揃いのような服装だ。
当然だが、二人とも腰には剣を帯びている。
「では行こうか」
「はい!」
そこで初めて、ヴァルドが使役している使い魔を見ることになった。それはオオワシ! でもその姿は野生で見かけるサイズより、うんと大きい。
つまり。
このオオワシの背に、ヴァルドと二人で乗るのだ!
フロストはもうこのオオワシを見て「すごい、パァパ、すごい!」を連呼している。
「一応、馬具を応用した装備をつけてみた。そこの持ち手を掴むといい」
ヴァルドに促され、持ち手を掴み、その背に乗ると……。
鞍はないけれど、お尻は痛くない。何だかふかふかしている。
「!」
ヴァルドが後ろからまたがり、左腕を私の腰に回す。
「エストール、出発だ。頼んだぞ」
ヴァルドの使い魔、その名はエストールが広げた翼は……小型機ぐらいあるように思える!
そのままバサリと羽をはばたかせると……。
それはなんだか遊園地のアトラクションに乗っているようで、喜びの雄叫びをあげてしまう。
「ミアがそんな声を出すとは」とヴァルドは苦笑しているけれど。
ここは童心に返り、フロストやお留守番のみんなに思いっきり手を振った。
そんな風に手を振れるのは、ヴァルドがしっかり私の腰を抱き寄せてくれているから。
そう、そうなのです!
今、私とヴァルドの密着度はとても高い!
背中にヴァルドを感じ、空を飛べるのは……。
最高~! 爽快~!
眼下に見える海は夏の陽射しを受け、キラキラと輝いていた。雲は少なく、いくつもの島の姿もハッキリ見えている。
「ミア。ここからは宝の地図の島探しだ。ミアは右手を、わたしが左手を見よう。エストールにも地図は見せたから、探してくれている。六つの目で探すなら、きっと見つかるはずだ」
「はい! 特徴的な形をしているので、見つけられますよ!」
そう思ったのだけど。
30分、一時間、二時間と飛び続けても見つからない!
「なるほど。エストールは相応の速度で飛んでいる。船よりもうんと速いはずだ。これで見つからないと言うことは……。ブルクセン大公国からはかなり離れた場所にあるのだろう。魔術が使えないと、これは確かに見つけるのが大変だろう」
「一度、休憩にしますか? ヴァルドは私を支えながらなので、疲れますよね? それにエストールも疲れるのでは?」
「……ミアは本当に優しいな。戦場でも常に部下を気遣っていた」
不意打ちでヴァルドが後ろから頬にキスをするので、嬉しいけれど、エストールから落ちそうになりドキッとすると。
「ミア、安心していい。エストールには番がいる」
「えっ!」
「もしもの時は、エストールのつがいのセフィーナがキャッチしてくれるから、問題ない」
驚いて後ろを見ると、確かにエストールより一回り小ぶりのオオワシがあとに続いていた。
「だがわたしがミアが落ちるのを許すとでも?」
つまりヴァルドは何があっても、私をはなすつもりはない。
それは信じられる話だ。
「そうですね。ヴァルドと一緒になら大丈夫です」
その引き締まった胸にもたれると、腰に回された腕に力が入る。
「ミアなら一人でも乗りこなせるだろう。だがわたしがこうしてミアと一緒にいたいから、二人乗りにした」
「ヴァルド……」
「あの島で休憩にしよう」
そうして小ぶりの島に降り立った後は……。
エストールとセフィーナは連れ立って飛んで行く。
ヴァルド曰く「自分達の食料を探しにいった。いつでも呼べば戻るから、問題ない」とのこと。
そしてヴァルドと私は……。
降り立った島は無人島。
誰もいない。
ヴァルドと私の二人きり。
ヤシの木に似た大きな葉を茂らせる木の下で……。
降り注ぐ夏の陽射しより熱~い時間を過ごしてしまった。






















































