【番外編】海とキャンドル(21)
激震が走った舞踏会だったが、それも無事終了。
部屋に戻るとリカとメイドに手伝ってもらい、入浴の準備を進める。
さすがに時間が遅い。
起こしてしまうリスクはゼロではないので、フロストの部屋にはいかず、マーニーに様子を確認すると……。
「今日は一日いろいろなことがありましたよね。さすがにフロスト坊ちゃまも、寝る時間になっても、興奮が収まらない様子でした。ですが入浴し、体も温まり、ミルクで水分補給をすると……。興奮も落ち着き、目がトロンとしてきて、その後はスーッと眠りに落ちて行かれました」
これを聞いて安堵した私は、リカにドレスを脱がせてもらうことにした。ヴァルドも前室で同じようにバスローブへと着替えをしているはずだ。
「しかし今日の一番のお手柄はフロスト坊ちゃまですよね」
私のドレスをテキパキと脱がしながら、リカが私に声を掛ける。その間にメイドはお湯の準備を終え、部屋から出て行く。
「本当にそう思うわ。フロストのおかげでケイン大公の暗殺に使われた毒の件も分かった。ルクセン大公が狩りの最中に、流れ矢で倒れたわけではないことも分かったのだから」
毒針はデビルスターのものであることも。ルクセン大公が今際の際に放った言葉も。フロスのおかげで知ることが出来た。
「フロスト坊ちゃまはまだ幼いのに、すごい魔術を使えますよね」
フロストはどうやってデビルスターのことや、ルクセン大公の最期の言葉を知ったのか。それは――。
「ヴァルドによると、魔術の中には動物と契約して使い魔として使役できる呪文があるそうなの。使い魔になった動物は、身体能力も向上し、自身でちょっとした魔術を使え、指示に従い動くこともできる。でもそれはちゃんとした儀式を動物との間で行う必要があるそうよ。さらにそういう呪文はまだ、フロストには早いだろうと、ヴァルドは教えていないの。フロストの周りには魔術に関する本も沢山用意しているわ。でも使い魔に関する呪文の本は置いていない。それなのに……」
そこで行きつくのはお馴染みの親バカ万歳。うちの子ってすごい!だ。
つい私がデレ顔になっていると、扉がノックされ、碧いバスローブを着たヴァルドが部屋へと入ってくる。
明るい碧い色で、金糸による刺繍があしらわれたバスローブ。
それはヴァルドによく似合っている。
つまりはとてもカッコいい!
バスローブ姿でここまで素敵な人なんて、この世界にヴァルドぐらいなのでは……って、親バカだけではなく、スパダリ旦那に夢中状態では!?
「リカ」
「殿下、後はお任せいたします」
ヴァルドとリカはまだ短い付き合いなのに。
見事な「あ・うん」の呼吸での会話だった。
そしてリカは下着姿の私に真っ白なバスローブを着せると退出してしまう。まだ宝飾品が残っているのに。
だが。
私のそばに来たヴァルドが、こちらを覗き込むように見つめる。あのアイリス色の宝石のような瞳で。
キュンと胸が高鳴ると、その手が頬へと伸びる。
キスをされる……と脳が期待で喜んだが、その手は頬に触れることなく、耳たぶに触れた。
それはそれでドキッとするが。
「これは……ピアスではなく、イヤリングだな」
そう言うとヴァルドは私の耳からイヤリングを外してくれる。さらにブレスレット、ネックレス、婚約指輪と、まるでリカの代わりかのように宝飾品を外してくれたのだ!
「これで宝飾品はすべて外したな。あとはバスルームで脱げばいい」
そう言うとヴァルドがひょいと私を抱き上げる。
「!? ヴァルド、もしかして一緒に……?」
「ああ。そのつもりだ。嫌か?」
「! 嬉しいです!!!」
つい本音で即答してしまう。
するとヴァルドはフワッと口元に笑みを浮かべる。
「順番に入浴するより、一緒に入ればいろいろ都合がいい。それにフロストの件で、さっきマッドが面白い情報をくれたからな。それについても話そう」
「そうなのですね……!」
あっという間にバスルームに到着すると、ヴァルドはキスをしながらバスローブを脱がしていく。その様子が洗面台の鏡に映っており、なんだか映画のワンシーンを見ているようだ。
だってヴァルドは映画に登場する俳優のようにカッコいい! しかも動作の一つ一つがスマートでありながら、エロい!
心臓がいつも以上にバクバクしてしまう。
「どうした、ミア? まだ何もしていなのに、こんなに興奮して」
まだ何もしていない……。
確かにヴァルドからしたら、キスをしながらバスローブを脱がせ、下着越しに触れたに過ぎないのだろうけど……。
鏡に映るその様子を見ていると、大変エロティック。
どうしたって鼻息は荒くなり、体も反応してしまう!
赤くなった私の視線の動きを追い、ヴァルドの目線も鏡へ行きつく。
「なるほど。誰かに見られている……と思うと興奮する。だが自分自身で見ることでも、気持ちが昂るということか」
そう言うとヴァルドは自身の体を動かし……。
「こうすればよく見える」
「!? ヴァルド……うんっ!」
鏡には、映画ではカットされてしまうような濃密な姿が映し出され――。






















































