2話 ロボナー
ロボット開発は21世紀になって加速し、人に寄り添うロボット、ロボットパートナー、通称ロボナーが一般人に普及しはじめる。
中身はともかく外見は人間そっくりに造ることができるようになっていったので老人介護のみならず子供の世話や家事手伝い、個人的な秘書や夜のお相手まで何でもこなすことができた。
外見は所有者の好みに自由にカスタマイズできたので、理想の容姿の恋人を手に入れることができた。年齢設定も自由にできたので、重度のロリコンやショタコンも満足した。
疑似発汗機能や疑似唾液分泌機能、などなど、より人間らしく見える機能を搭載していった。
ひと目で見分けられるように額に円形のナンバープレートが埋め込まれ、耳はエルフのようにピンと尖っている。
メンテナンスの為に首、みぞおちから第10肋骨の下の胴回り、上腕、太ももに皮膚の継ぎ目があり、リングと呼ばれる幅3センチほどのメタリックな素材で覆われている。リングの色も自由にカスタマイズできた。
バッテリーを搭載しているが、ワイヤレス給電が発達していたので、バッテリーに頼ることはほぼ無い。
ロボナーに自我や自意識は無く、自発的に動くことも思考することも無い。ただ与えられた命令を実行するだけである。
ロボナーは人間や動物に危害を加えたりできないようにプログラムされている。例えば、人間の主人と一緒のときに蛇が目の前に現れても、蛇を捕らえることは出来ても殺すことは出来ない。主人に犬が吠えかけても殴りつけることは出来ない。
たとえ熊やサメのような危険な生物であっても、ロボナーには攻撃出来なかった。
機械が生き物を殺したり傷つけたりすることは人間の感情としては許せないことだったからである。
工場などでは外見機械のロボットたちが人間の代わりに働くようになっていた。その分社会には失業者があふれたが、どれだけ商品を生産して外国に売ろうと思っても、他国も同様に失業者であふれていたので、誰も商品を買ってくれない。
金持ち相手の高額商品を開発して糊口をしのごうとしたが、限界は見えていた。失業者が飢えで苦しむようになれば、国力はつるべ落としに下がり、元には戻らないからだ。
金持ちはどこから金を得るか?当然貧乏人からだ。貧乏人が死ねば金持ちも死ぬのだ。
日本の江戸時代に例えると農民が死に絶えると農民から年貢を徴収して喰っている武士階級も年貢が入って来ないので飢えて死ぬことになる。
金持ちは商品やサービスを貧乏人に売って金を得ているので、貧乏人が死に絶えると金が入って来なくなるので共倒れになるのだ。
そこで諸国家は本格的にベーシックインカムの導入に踏み切った。ベーシックインカムは真に文化的で最低限ではない、消費を促進する豊かな生活を保障するものとして、日本では文化手当と呼ばれた。
財源はロボットを導入した企業から徴収した。当然、企業は反発したが、このままでは商品を生産しても売れないことと、外国に移転しようと思ってもどこでも同じ状況だったので、渋々応じざるを得なかった。
ベーシックインカム=性別や年齢、所得水準などによって制限されることなく、すべての人が国から最低限の生活を営むために必要な一定の金額を定期的かつ継続的に受け取れる社会保障制度