17話 ニート
アルケブランでは科学者たちがとうとう人間を創り出した。
即刻処分するべきとの意見も出たが、とりあえず科学者たちには神を演じさせ、科学を教えない政策を取り、様子を見ることになった。
SRMO監査団がアルケブランにやって来る。マキナも同行して来た。
ルーファンのところにも遊びにきたが、だいたいはミコのところにいた。
アルケブラン人に科学を教えないという政策はルーファンの不満を募らせた。
科学を教えず、科学者を神だと信じさせている間は昔の地球のニートと同じで才能が埋もれたままになってしまう。
せっかく地球人をも凌ぐ才能を持つよう創ったのに、このままでは封印されたまま全く発揮されない。
だいたい、神(を信じる極一部の人)のせいで地球から遥か遠く離れたところまで来なきゃならなかったのに、なぜ神を演じなければならないんだ?
心身ともに健康で何の障害もない若者が働きもせず実家で養ってもらってる状況なんて親が嘆き悲しむだけだ。犯罪者にならないだけまだマシというレベルだ。
科学者にとってアルケブラン人は子も同然なのだ。
まともな親なら、子供には才能を発揮して親を超えていってほしいと思う。
稼ぎにはならないけど夢を追いかけてるとか、ボランティア活動に熱中してるとかでもいい。
ニートにしたい親はいない。ニートにするくらいなら無理矢理実家から追い出して、どれだけ苦労してでも自活させる。
子供が生活能力がない、能力を発揮しないということが、どれだけ親を悲しませるか、ニートには解ってない。自宅警備員とか巫山戯るな!
ルーファンはとうとう、アルケブラン人に自分たちは神ではなく人間であると明かし、科学を教える決意をする。
ルーファンのチーム総勢38名も同意してくれた。
自分のチームが管理している研究施設の広大な敷地内に恐竜や猛獣が生息していない安全地帯があり、そこに自分たちが創造した部族が衣食住を与えられて何不自由なく生活している。その様子をルーファンたちは研究のためにモニタリングしている。
ちなみにミコのチームではその仕事を孫に任せているようだ。
ルーファンは自分たちの部族から一人、賢そうな少年を選び出した。
アルケブラン人に直接会うときはアルケブランの大気組成が地球人には耐えられないため、気密服を着る。これが神と演出する小道具にもなる。科学を知らない者には気密服を着た人間は人間には見えない。
「君の名は?」ルーファンが少年に尋ねる。
「クレイです、神様」と少年は答えた。
「クレイよ、よく聞きなさい。君たちには私たちのことを神だと教えてきたが、それは違うんだ。私たちも君たちと同じ人間なんだよ。アルケブランから遠く離れた所から来たんだけどね。私たちは君たちを神の力で創ったのではなく、科学的に創造したんだよ」
「…………は??」
…いきなり理解させるのは無理だったようだ。
根気よく科学を教えていくことにする。
無人島に文明人が流れ着きサバイバルする中で、未開人に文明の利器を教える太古の小説があったけど、未開人が鉄砲に向かって自分を撃たないでくださいと祈っていたなあ…
道のりは険しそうだ。
おぼろげながらも少しずつクレイは科学を理解するようになっていった。
しかし……
理解が進むとクレイにこんなことを聞かれた。
「なぜ、私たちはあなた達に実験動物のように管理されているのですか?」
恨みがましい目をして言うのだった。
ルーファンは言葉に詰まった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
とうとうアルケブラン人に科学を教えていることがSRMO監査団にバレて、クレイが処分されるために連れていかれてしまった。恐竜が生息する危険地帯に放り出されるようだ。
ルーファンのチームが管理している部族も研究施設の敷地外に放り出されてしまった。幸いそこには危険な生物は生息していないが。
監視されてルーファンは動けないのでミコを通じてマキナに救助を頼むことにする。
「この馬鹿野郎!なぜ科学を教えた?ガードナーは君のことを心配しているのに!」
「マキちゃん話を聞いて!アルケブラン人がこのままアホなニートでいることに耐えられなかったんだ!」
ルーファンは必死にマキナに事情を説明した。そして、もしかしたらクレイは僕たちを恨んでいるかもしれないと悲しそうに付け加えた。(恨まれてるのに助けたいと思うのはおかしいと思われる人は、人の情が無いのだろう。子にどれだけ恨まれようと愛おしいと思うのが親なのだ)
クレイは大型ドローンで恐竜が生息する地帯に放り出された。
クレイが呆然としていると、遠くからブチメカテイストの30メートルはあろうかという巨大ロボットが近づいてきた。
「君がクレイだね?」巨大ロボットが女の子の声でしゃべった。
いろいろ理解不能な状況が重なって、わけがわからない。
「そうか…君はしゃべれるんだね」クレイが茫然自失となって呟いた。
ロボットがしゃがんで背中のハッチが開き、階段が出てきた。
「さあ、私の中に入りなさい。早くしないとこの手で掴んで中に入れちゃうぞ」
そう言いながらロボットの巨大な手をヒラヒラさせる。あんなので掴まれたら千切られちゃう!
クレイは逃げた!
「まったく…」
巨大ロボットのふくらはぎのハッチが開き、アニーが出てくる。中身機械の旧式だ。巨大ロボットのメンテナンス用に格納している。
アニーはクレイに向かって猛然とダッシュした。今はマキナが遠隔操作している。
クレイは驚いた。激しい動きをすればパンツが見えそうなミニスカートのお姉さんが突っ込んでくる!
「捕まえた♪」マキナの声でアニーがしゃべる。
アニーはクレイを引きずっていき、客室に放り込み、ふくらはぎに戻った。
中には椅子が一つあり、前方に人ひとり体操できるくらいのスペースがあった。
計器類もスイッチもレバーも何もない。コクピットではなく、客室なのだ。声の主を探すがどこにもいない。
「椅子に座りなさい」という声が聞こえた。
クレイが椅子に座ると、前方に可愛い女の子がいきなり現れた。
全裸で!
「なんで裸なんですか!?服着てください!」
「なんだ、面倒くさいな。これが今のデフォルトなんだが」
そう言いながら、からかうように科をつくってみせる。
「お願いですから服着てください!」耳まで真っ赤にして叫ぶ。
「仕方ないなあ……SET UP!」
フリフリの可愛い服を瞬時に纏う。
清楚可憐な艶姿、魔法少女かプリ○○アか。
よく見りゃ宙に浮かんでる。
人間なんかじゃありえない。
やっぱり神に違いない。
クレイすっかり誤解した。
「あなたは誰ですか?」クレイは恐る恐る聞いた。
「私はマキナ。君を救いに来た」
お絵描きAI凄いですね…CVは日高〇菜さんかなぁ(トラダクのネメシスとか)
毎週土曜日更新予定
次回も読みたいなと思えたら五ツ星評価と
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