15話 生命創造
ミコが死亡してからは宇宙船の船長は彼女の孫が務める。
航行中に寿命で8名死亡して、到着時には43名になっていた。
500年くらいかけてロス星系に到達すると、ロス星からの光エネルギーで発電し、小惑星から資源を採取する。
そしてコンピューターに保存されていた人たちを再生させた。
クレイブ、ミコ、ルーファンなど航行中に死亡した者8名と航行前に死亡したデータのみの者3名である。
ロス星の惑星はアルケブランと名付けられた。
地球によく似た惑星で重力も同じくらい。海も大地もあったが、大気組成が生命の生存に少し適していなかったので(だからこそ生命が存在していなかったのだが)大気組成から手が加えられた。
3000年くらいかかって大気組成が改善してくると(それでも地球人には適していなかったが)アルケブランの大気組成・環境に適応した生命の創造実験が始まった。
地球やタイタンとも全く違う環境に適応する生物にするには、もう一度最初からやり直さなければならない。
生物が絶滅せずうまく繫殖するように生殖機能を工夫することは重要だった。
単細胞生物から多細胞生物へ、そしてさらに複雑な生物へ。
プランクトンや藻類を創り、それを食べる小魚を創り、さらにその数が増え過ぎないように大きな魚を創っていく。
植物を創り出せば受粉させるために昆虫を創った。
タイタンのときとは比べ物にならないくらいの規模で生態系を構築できるのでクレイブはとても喜んだ。
クレイブが総指揮者となり、7つのチームに分かれて実験が続けられる。
ルーファンとミコはそれぞれチームのリーダーになった。
ルーファンのチーム名はヘビ。ヘビのように執念深く研究をやり遂げようという意気込みで名付けたのだった。大昔、親友が言ったことを覚えていたのだ。
ミコのチーム名はキクである。
両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類と徐々に複雑な生物を生み出していった。地球に存在しないような奇抜な生物も大量に創造していく。恐竜を創り出す研究者もいた。
何千年もの間に何百万種もの生物種が創造されていった。
この間に技術発展で有人宇宙船の最高スピードは光速の30パーセントに達し、アルケブランまで50年ほどで来れるようになり往復も容易になったので、第二次、第三次と地球から研究者と、生物をデザインするためにデザイナーもやって来た。
そして、類人猿まで到達するのに創造実験が始まってから5000年くらい経っていた。
人間を創り出すことは禁止されていた。
彼らの科学力が地球人を上回って地球を侵略しに来ることを世論と国際政府は恐れたのである。
しかし、科学者たちは自分たちを追い出したも同然の遥か遠い地球の言うことなど果たして聞くだろうか?
ロボナーも更に大幅に進歩した。
ゼロから人工的にDNAを組み上げ3Dプリンターで生体ロボットを製造できるようになった。バイオロボナーと呼ばれ、人間のお世話用に製造された。
精神面は今までと変わらず自我や自意識は無い。ただ与えられた命令を実行するだけの存在である。
間違えてはいけないのは自我や自意識を抑制したり削除したわけではなく、最初の設計段階から無いのだ。
もちろん、付けようと思えば付けられるが、それを言うならどんなものにでも付けようと思えば付けられる。冷蔵庫や洗濯機にだって自我や自意識は付けられるのだ。(AI内蔵の冷蔵庫や洗濯機なら既に販売されてる)
自然に自我が芽生えるとか雷に打たれて自我が芽生えるとかはいい加減なSFの中だけの話である。
…自然に生命が芽生えるというのもどうなんだろう?
ロボットという単語が初めて使われた戯曲から、創られたモノに自我を与えるとロクなことにはならないというのはお約束になってますよね。子供でさえ反抗期の時は手に負えないんだから。なのでこの小説の中ではロボナーには自我を持たせないし、人間を創ることを禁止しているのです。
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