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10話 構想

 クレイブ博士からディナーに(まね)かれた。

 クレイブ博士の家に着くと、シックで大人びたドレスを(まと)ったミコが出迎えてくれる。

 前日から実家に泊まっていたのだ。

 上品で落ち着いていて、いつものミコとはまるで別人だ。


 「とても綺麗(きれい)だよ」と、言うと、

 「本当!?(うれ)しい!!きゃあきゃあ♡♡ パパ~、ルーが綺麗だって言ってくれた~!!!」


 …いつものミコだった。



 母親は仕事の都合で別居中らしい。

 明後日には博士は50歳の誕生日を迎えるとのこと。それで明後日から博士と落ち合って長期バカンスに出かけるそうだ。

 アンチエイジングが発達しているおかげで、ミコと並んでいても妹と兄にしか見えない。


 ロボナーたちが給仕をしてくれるので食事はとても快適で楽しいものになった。

 食事が終りかけた頃、ルーファンはクレイブ博士から驚くような構想を聞かされた。


 「ルーファン、私は生命創造を(あきら)めるつもりはないよ。確かに研究は禁止されたが、それは周囲に危険が(およ)ぶからだ。ならば危険が及ばないところで研究すればいい」

 「そんな場所がありますか?」

 「地球上には無い。だから地球から出ていく。宇宙で研究するんだよ」


 クレイブ博士は話を続ける。

 地球を飛び出して、他の星で生命創造研究をするというのだ。


 クレイブ博士は星全土の生態系構築を実現することが夢だ。さすがオピニオンリーダー。考えることがデカい。

 僕はこの人に一生付いていくと決めているが、まさか宇宙にまで付いていくことになるとは思っていなかった。


 ミコは前日に聞いていたのだろう。ニコニコと微笑(ほほえ)んでいる。

 というか、ルーファンが驚いている様子を見て楽しんでいるようだった。



 候補は土星の衛星、タイタンだ。


 月、水星、火星、金星、木星の衛星は(すで)に開発の手が伸びている。

 人が居るようなところでは生命創造研究はできなかった。


 昔はタイタンには生命が存在しているんじゃないかと期待されたが、無人機の探査の結果では、どうやら存在しそうになかった。



 タイタンで生態系を構築するには本格的にテラフォーミングしなければならない。

 太陽から遠く離れているのでとても寒く、タイタンの地殻(ちかく)分厚(ぶあつ)い氷である。

 重力は地球の7分の1。月の重力よりちょっと小さい。


 タイタンは窒素(ちっそ)を主成分とする濃い大気が存在する。表面が氷なので水もふんだんにある。水から酸素と水素もつくれる。メタンやエタンなどの炭化水素も豊富にあるので炭素もある。

 生命の素材であるアミノ酸は窒素、酸素、水素、炭素で出来ているので、生命の材料がタイタンにはふんだんにあるわけだ。



 タイタンの周囲にミラー衛星を多数設置してタイタンを局所的に暖める。

 タイタンの表面温度が局所的にでも上昇してくれば、表面の氷が少し解けて湖ができる。氷の上の湖だ。そうすればプランクトンから魚まで水生生物を創造できる。


 小惑星を多数落としてそれを砕いて土を造り、大地を造る。

 そこで生存できる(こけ)を創って大気と土壌(どじょう)を変えていく。そうなれば植物や動物も創造できるようになる。



 それまではスペースコロニーで基礎研究に従事(じゅうじ)することになる。


 「テラフォーミングには時間がかかる。今、理論上では人は300歳まで生きられるが、私たちが生きてる間に500歳、1000歳と生きられるようになるだろう。だが、それでもまだまだ足りない」


 クレイブ博士は言葉を続けた。



 「今、死んだ人間を新しい体で再生する技術を研究している。新しい人体を構築して、それに生前の人格と記憶を移送する。そうして再生できれば何度でも(よみがえ)って半永久的に研究ができる。ゆくゆくは君にもこの研究を手伝ってもらいたい。ゆっくり考えておいてくれたまえ」


 一生どころか何生でも付いていくことになるかもだった。

 テラフォーミング=人類が居住できるよう、地球以外の天体の環境を人為的に改変すること

 

 

 毎週土曜日更新予定

 次回も読みたいと思えたら五ツ星評価と

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