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プロローグ

「あ、あなた!不敬でしてよ!この国の王太子に対しての態度ではありません!」


こらえきれずアリィシアがそう叫ぶと、すっと前に出た王太子その人がアリィシアを冷たく見下ろす。


「なあアリィシア。お前さぁ、最近荒れてないか?ノゾミが嫌がらせされてんの、知ってるか?シアが先導してるとは思わないけど、お前の取り巻きがやってんじゃねえの?」


昼下がりの学園の中庭。

断罪イベントというのもお粗末な中途半端さで、アリィシアの王子様はそう言った。


その後ろには、彼の弟の第三王子、侯爵家の長男、将軍の一人息子――

みんなアリィシアの友人だった。少し前までは、アリィシアの居場所だった人たちだった。

それが今は異世界より迷い込んだ神子姫を庇うように後ろに守り立っている。神子姫の大きな真っ黒い瞳――この国では、特別な人間しか持たない色合いの――が、怯えで潤み、揺れていて、まるでアリィシアが悪役かのようだ。


いや、「ようだ」ではなく。

彼らにとっては真実、悪役なのかもしれない。


友人たちの非難するようなまなざしに足が震える。

自分が間違っているのかも、嫉妬に目がくらんで言うべきでないことを言ってしまったのかも。

攻撃的な性格ではないアリィシアの中に不安が沸いてきた。


しかし次の瞬間。


「取り巻きくらいコントロールできないと、……王妃になんてなれないぞ」


王太子ランスロットの言葉に、アリィシアの中で何かがプツンと切れた。


「……お断りです」

「え?」

「王妃なんて……王太子妃なんて、もう、金輪際辞退いたしますっ!!」


その日、アリィシアは、

いつか彼に選ばれた日のために、学んできた日々も、努力も、涙も、全部投げ捨てたのだった。

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