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9-1

 睨み合いを続ける二人と魔族との間では、相変わらず一触即発の状態が続いていました。

「まあ、お前達を守るくらいなら容易いことだ」

「うん?言語を話す狼?ウェアウルフか?」

 そんな状態だったにも関わらず、狼の声を聞いた途端に魔族から敵対する雰囲気が減っていき、それどころか歓迎するようなものへと変化していきました。

「ウェアウルフと共に行動するってことは、お前達邪神教団って奴らか?なんだ、味方かよ。それならもっと早く言ってくれよ。それで、ここへは何しに来たんだ?」

 魔族の者達にとって種族自体はあまり重要ではなく、思想の方を大事にしているようでした。そして、そのおかげで争うことなくその場をやり過ごせそうだったのに、フォールは余計なことを言おうとしており、リッタはそれを防ぐために会話を交わすのでした。

「私達が邪神教団?そんなこと…」

「俺達は暮らす場所を探しにきたんですよ!」

「ふーん。何か暮らす際に、譲れない条件とかってあるのか?」

 そして、そんな二人に対して魔族は、至って普通の質問をしましたが、二人は返事に窮しました。自分たちの平和な暮らしを求めていたはずのフォールは、命懸けでも兄妹を助けるつもりでした。美味しい食事なんて言っていたリッタは、そんなことを言えるはずもないと自責していました。そのせいで、暮らす場所に何を求めているのかを二人は断言できませんでした。そして、悩んでいる二人を見た魔族達は、答えを急かしてきませんでした。

「分からないか。それならば、とりあえずこの国を見てから決めればいい」

 納得のいく答えを出すことができなかった二人は、答えを考える時間を作るために宿屋を探していました。

「二部屋でお願いします」

 そして無事に宿屋を見つけると、何をするでもなくただ静かな時間を過ごすのでした。


 その翌日、国の様子を見て回っている二人のもとに、魔族の者達が気さくに話しかけにきました。

「お前達、昨日ぶりだな。ちなみに、お前達はどれくらい滞在するつもりだ?」

「もうしばらくの間、いるかもしれない」

「そうか。もうしばらくこの国にいるのなら、魔王様に一度くらいは謁見するといい」

「それって結構時間がかかるよね?」

「だいぶ時間はかかるだろう。魔王様は忙しいお方だからな」

「いや、むしろ向こうから来るかもしれぬ」

「ルディ様、何を言っているのですか?」

 魔王に会う前提で話合いをしていると、狼がよくわからない発言をして、それからさらに少しすると馬車がやってきました。

「狼様、それとそこのお二方も魔王城に来てください」

 何故か狼の予想通りに魔王城から迎えがやってきて、それを拒否することもできないままに二人と一匹は魔王城に連れていかれるのでした。


 馬車に乗せられた二人と一匹が連れていかれた先は、荘厳な魔王城でした。そこには多くの魔族が存在していました。気を抜くと襲われてしまいそうな中を一歩一歩進んでいき、二人がたどり着いた最奥の部屋の中には、一際威厳のある魔族、魔王がいました。

「あなたが俺達を呼んだのですか?」

「いや、余ではない」

「もちろん、私だよ。ああ、ジェーン、会いたかった」

 魔王が呼び出していないとすれば誰が呼び出したのか、不審に思っている二人の前にどこからともなく声が聞こえてきました。不審に思って声がした方向を見ると、顔立ちの整った壮年の人型の男性がいました。

「ジェーン、私の番になるために会いに来てくれたのだろう?」

「ジェーンではない。ルディだ」

「そうかい、ルディ。それとお前達はもういいぞ」

 どうやらその男が呼び出した目的は狼だったようで、二人は立ち去って行く男と狼の背中を見ながら、その場に取り残されるのでした。

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