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7-1

 村に入った二人と一匹を待ち受けていたのは、困窮した生活への不満や、未来への希望など、異なる様々な感情が入り混じった空気でした。

 しかし、二人はその奇妙な空気感を気にすることなく村を見ており、そんな二人に対して村中の人々から視線が注がれていました。ただし、その視線は決して好意的なものではなく、どこか排他的なものや、狼を怪訝そうに見るもの、そしてフードを被る二人を訝しむものなど様々なものでした。

 そして、二人は視線のことも意に介さずに、そんなことよりも先ほどの声が何者なのかについて気にかかっていました。

「先ほどの声は、どなたのものですか?」

「おいらさ。おいらはこいつの家に代々受け継がれている鋤さ」

「正確には鋤に取り付いている付喪神だ」

 まさか鋤が話すなんて思っていもなかった二人は驚きましたが、狼が人の言葉を話すことも同じくらいおかしいことのような気がして落ち着きましたが、鋤は驚いた反応を見せたことに嬉しそうな様子を見せました。

「お、その物珍しそうな視線は久しぶり。この村に限らず、この国にはおいらみたいなのはたくさんいるからきっとまた会うことになるのさ」

「まあ、こんなにうるせえのはこいつくらいだがな」

「あー、ひどい」

 そんな少年と鋤による軽妙なやり取りに二人とも思わず笑ってしまいましたが、少年は二人の方に向き直ると気を引き締めるように忠告します。

「それとおめえ達は旅に来たみてえだが、時期が悪かったな。早く出てった方がいいぞ」

「何かあったんですか?」

「理由は様々だが、どうにも不作なんだ。だからおめえ達をもてなすほどの余裕はねえ」

 その言葉通り、村に存在するほとんどの田畑は痩せ細り、暮らす人々の多くがやつれていました。


 その後、二人は実際に村を見て回りましたが、少年の言葉通りに村の状況は芳しくありませんでした。明日を生きるための米もろくになく、人々は空腹に喘いでいました。

 しかし、そんな状況にも関わらず、人々の瞳には不気味にも希望が確かに存在していました。

 これまでに二人は様々な地を訪れてきましたが、ここまで奇妙なものは珍しいために二人とも不安な気持ちになりましたが、それでも苦しそうな村のことを心配していました。

「この村は大丈夫なのですか?」

「おいら達の暮らしのことかい?それはあまりよくないから、みんな何とかなるのを願っているのさ」

 質問に対する鋤の返事を要領を得ず、不十分だと思った少年は詳しく説明を加えます。

「そんだけじゃ伝わらん。夏場にあまり暑くならなかったことや、長雨のせいだったり、色んな理由で稲や麦があまりできんかった。そんで年貢を納めたらろくに手元には残らず、飢えた人達が米屋を襲ったりと、とにかく苦しい状況に陥ったんだ」

 苦しい表情で村の窮状を説明した少年は、表情を明るくすると未来への希望を語り始めます。

「既にそれをなんとかするために隣村の奴らが藩主様に直訴さ起こした。そん時は藩主様の心が広かったおかげでお咎めはなかったらしい。そんで、もしその訴えを聞き届けてくれたら、おら達の暮らしも少しはよくなるかもしれねえ。現状苦しいことは事実だけんど、藩主様にはお狐様がお憑きになっているらしいから、藩主様さえいてくれたらきっと大丈夫だ」

 わざとらしく思えるほどに楽観的な説明を聞いた二人は、彼らが明るく振る舞う理由を理解し、そしてこの村に少しでも貢献できることを考えていました。

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