閑話
一人と一匹は舟に揺られながらいろいろと話をしました。
「リッタはなぜあれほどまでに船酔いをするのでしょうか」
「森の民であるからな。海との相性が悪かったのであろう」
「それならば、私も酔わなければおかしいのではありませんか?」
「うむ?そうか、それならば個体差であろう」
リッタの船酔いについて適当に答えられました。
「鋤の助様のような存在が他にもいらっしゃるとのことですが、結局会うことはありませんでしたね」
「至る場所に存在したが、認識できていなかったのだ。例えば、道で見かけた石碑や石像の近くには、道祖神と呼ばれる存在がいた」
「道祖神、ですか?一体どのような?」
「…様々あるが、一つ言われているのは、旅を見守る存在であると」
フォールは八百万の神々について学びました。
「お狐様とは何者なのでしょうか?」
「狐はこの地における豊穣を司る神の遣いとされているため、縁起の良い動物だと考えられているのだ」
「藩主様にお狐様が憑りついていると聞いたのですが、村が不作で苦しんでいるということは、その言い伝えは嘘だったのでしょうか?」
「さあな。裏がありそうな気がするゆえ、もう少し滞在すれば真偽が分かったやも知れぬ」
お狐様の真相については結局のところわかりませんでした。
「里から出たばかりの私だったのなら、きっとこの村のために出来ることをもう少しでも頑張ろうとしたと思うのです。けれど、今の私はこの村の人達のことを見捨てている。私は冷たい性格になってしまったのでしょうか?」
「うむ、性格など簡単に変わるものであるからな。変わったにしても何らかの理由があるだろう。それに巫女なりに救おうと考えたのであろう?」
「そうですね、オドレイさんが感じていた残されることの苦しみも、王様が抱いていた上に立つ者の苦悩も、アナベラさんの戦う覚悟も、チテールさんやクラシベスさんのように家族に対する愛情も、いろいろ見てきたせいで、戦うことが正しいのか分からなくなってしまいました。それでも、私なりに出来ることは精一杯考えたつもりです」
「それならば、それでよいであろう。根本的な部分は変わっていないと思うぞ」
「そう、なのですかね」
性格の変化について思い悩みました。
「悪い面がない土地というものは、あると思いますか?」
「そんなものあるはずがなかろう」
「そうですよね。やっぱり何を追求して、何を妥協するのかを考えなければいけないのでしょうね」
フォールは改めてどんな地で暮らしたいのか考えていました。
二人と一匹の旅はもう少しだけ続きます。




