閑話
二人と一匹は歩きながらいろいろと話をしました。
「やっぱり、あれは家というか天幕だったよね」
「それが便利だったから定着したんだと思うよ」
「移動しながら暮らすのにはいいのかもしれないけど、俺はなんか違ったなあ」
家の形式の違和感について話しました。
「発情期はないのか…。あるって言ってたし、そういう本もあったのに」
「まだ言ってる」
「一部の猿と遺伝子の構造がさほど変わらぬヒト属も発情期を持たぬのに、なぜ彼らには残っていると思う。そもそも、ヒト属が発情期を失った理由は…」
「あとで荷物検査するね」
二人の温度差の違いが顕著に出ました。
「なんでエルフって長生きとか言われてんの?変な期待しちゃったじゃん」
「そう信じられるほどには神秘的な容姿をしているからであろうな。それから、基本的に異種族の顔を見分けるのは困難であるため、見間違えたのであろう」
「別人とですか?たまたま親子とかならまだわかりますけど、そのようなことは滅多に起こらないのではありませんか?」
「家族でなくとも見間違えることはある。多指症の者が一人しかいなかった集落が、数百年経ると、集落の過半数の者がその特徴を有していたという。狭い集落では交配する相手が限られる以上、血が混ざり合い濃くなってゆくことは避けられぬ。つまり、集落単位で顔が似通っていたために長寿の噂が流れたのであろう。お前達も親族と言えるくらいには血のつながりがあるぞ」
「「え!?」」
二人にとってはなかなかに衝撃の事実でした。
「寿命はまだいいけどさ、美形の噂を流したのはひどくない?期待しちゃうし、されちゃうじゃん」
「比較的整っいるが、劣等感の表れも要因の一つだ。ヒト属の中には鼻の低さに劣等感を感じ、鼻の高い者を美しく感じる者がいる。彼らにとってエルフは鼻が高く、整った顔立ちに思えたのだ」
「種族全体で鼻が高いのですか?」
「そうだ。鼻に限らず、耳も長い。それらや金の髪色、整った顔立ち、森や山に住む隠匿性、その全てがエルフという存在を神秘的たらしめたのであろうな」
「鼻が高いのは個人差だと思うけど耳長いのってよくわかんなくない?」
「近親交配の影響による遺伝性疾患であろうな」
二人はあまり理解できていませんが何となく納得しました。
「お父さんとお母さんは元気かな」
「チテールの言ってたこと聞いて思い出したの?」
「どこにいても家族、なんだよね?二度と会えないとしても、そうだと思う?」
「…今は、今すぐには会えなくても、いつか会える日が来るよ。俺達だってあの時からはだいぶ見た目とか雰囲気とか変わったでしょ?いつかはバレないくらい二人とも見た目とか変わって、堂々と里に入れる日が来るよ。俺だってすっかり大人びたと思わない?」
「ふふっ、リッタはそんなに変わってないよ。でも、励ましてくれたんでしょ?ありがと、元気出た」
「元気になったならよかった。うん?変わってない?」
二人共、望郷の念に駆られました。
二人と一匹の旅はまだ続きます。




