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3-1

 三人と一匹とドワーフの会話は続いていました。

「それにしても、この時期に来るなんてお前達は運がいいな」

「なんで運がいいの?」

「それはだな、もうすぐ髭剃りの儀があるからだ」

「「「髭剃りの儀?」」」

 会話の流れで出てきた聞いたことのない名前の儀式に、三人が疑問を抱きます。

「髭剃りの儀っちゅーのはな、王様があの山に住む火の神様に髭を捧げる儀式のことだ」

「髭を捧げるなんて珍しい儀式ですね。そんなの習わなかったな」

「そうか?髭は神聖なものだからな、それを捧げりゃ神様も喜ぶんだよ」

「なんで髭が神聖なの?」

「さあ?考えたこともなかったな」

 ドワーフはフォールの言葉には答えられても、素直なリッタの質問には具体的な回答ができませんでした。そしてその質問に狼が代わりに答えます。

「そう不思議な話ではない。古来より髪の毛には魔力が宿るとされている民間伝承は多く存在する。お前達が会った長髪の魔女や、魔法や呪術を使う際の触媒やお守りとして髪の毛が使われる話などがその一例だ。そしてドワーフにとってその役割を担うのが髭というだけだ」

「なんだよ、あんた…姉ちゃん、俺より詳しいじゃねえか。まあ、そんな感じで髭を捧げて鍛冶や鉱物の採掘、他にも普段の生活がうまくいくことを祈るって感じの祭りだな」

「面白そう!俺達も見学してみようよ」

 このような経緯で、一行は馴染みのない文化で行われる祭事に参加することになりました。


 そして見学するためにもまずは宿を探そうとすると、ドワーフからありがたい提案がなされます。

「お前達、宿はどうするつもりだ?よかったらうちに泊まるか?」

「いいんですか?ありがとうございます」

「よし、じゃあついてこい。そういえば自己紹介がまだだったな。俺はヴァレリオ。よろしくな」

「疑うことを…まあよい」

 何か言いたげな狼を置き去りにして、最初に出会ったドワーフが親切なヴァレリオだったおかげで事態はすんなりと進んでいきました。


 一行が荷物を置かせてもらうためにヴァレリオの家を訪れると、家の中から彼の妻と思しき女性が現れました。

「おかえり、早かったね。あれ、お客さん?」

「え、髭?」

「ちょっとリッタ失礼だよ。すみません」

 リッタが驚いたように、家の中から現れた女性は髭を生やしていたのです。

「外から来た人はびっくりするよね」

「かーっ。子供にはうちのかみさんの髭の良さがわからねえか」

 ヴァレリオの妻は慣れたように、ヴァレリオは主にリッタをからかうように反応しましたが、彼の妻は理解を促すように説明を続けました。

「私達は髭が好きというか、大事というか、大人の証というか、とにかくそんな感じなの。だから髭が生えてないと舐められちゃうのよ、毛の生えていないガキだって」

 ドワーフ特有の美醜の価値観が自分達のものとは異なり、三人ともあまり理解できませんでした。

「そうなんですね。それじゃあ、オドレイさんのことはどう見えますか?私達からしたらすごい綺麗な人だなって思うんですけど」

「フォールちゃん上手だね、照れちゃう」

「うまく言えねえけど、いい出来の剣みたいな感覚だな。けれど女としては見れねえな」

 その返事に少し驚き、そして思い出を懐かしみながら、オドレイは思わず言葉をこぼれさせました。

「一応褒められてはいるのかな」


 改めて荷物を置かせてもらうと、一行は国を見て回るために再出発しました。

「じゃあこの国を案内してやるから付いて来な」

 そうは言ったものの、この国に観光資源はそこまでありませんでした。あったのはなんの変哲もない多くの家。しかし、たった一つだけ、この国には雄大な活火山が美しく存在していました。

「どうだ、美しいだろ。あれがデュポン山だ。あの山は少なくとも俺らのご先祖様が住み始めた時には既にあったらしいぞ。たまに噴火するのが玉に瑕だが、鉱物資源がいろいろと取れて俺達の生活を支えてくれるなんともありがたい山だ」

 その場にいた全員がその山を眺めていました。

 価値観も、育った環境も、種族も、ありとあらゆるものが異なる彼らでしたが、共通していたのはその山を美しいとする感性のみでした。


 それからは鍛冶場などを見て回りながらいろいろと話をして、家に帰り、魚介にパスタなどおいしい料理を食べた三人は翌日に備えて眠りにつきました。

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