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プロローグ
世界の片隅、舗装もされていない道を歩いている集団がいます。その集団は若い男女が一人ずつ、そして一匹の狼の合計二人と一匹で構成されています。
「もう少しでその宗教国家に到着するのですか?」
女が畏まった口調で尋ねます。
「あれじゃない?なんか石の壁みたいなの見えてきた」
男が目を凝らして遠くを見ながら返事をします。
「そうだ。あの国こそ我々の次の目的地である宗教国家エレツークだ」
どこからか威厳に満ちた声が響いてきます。
「次の国は私達も暮らしやすいといいですね」
その女の言葉に男が力強く返事をします。
「そうだな。次の国こそ俺達が平和に過ごせる場所であって欲しいな」
この会話からわかるように、この奇妙な集団の旅の目的は終の棲家を探すことなのです。
それではなぜそのような目的で旅をしているのか、それについて話すために少し遡ってみましょう。