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ヴォルティアナ  作者: jyoxx
テクノドーム編
185/186

第185章

モリノ邸――室内


キアはベッドの端に座り、モリノの写真を抱きしめていた。顔は沈痛そのものだ。


「お父様……もう、どうしたらいいのか分からない……あなたなら、どうした?」


突如、影が波のように広がり、彼女をベッドから叩き落とす。


「ベッドでしくしく泣く? どれだけ腑抜けなんだ。名門の姫の娘が、壁の内で怯えてどうする。」


見上げると、そこには影のモリノ。キアは壁際まで後退した。


「……お父様?」


「残念、違うよ、娘よ。」


影はねじれ、歪み、やがて夫——クロテンの姿へ。彼は手を差し伸べる。


「キア……キア……」


「いや……あなたじゃない! あなたは……もういない! 何年も前に失ったの!」


クロテンは一歩近づく。「さあ……偶然を信じるんだろう?」


「わ、私は……」


クロテンの声が低くなる。「もう隠れるな、キア。もう嘘はやめろ。子どもたちにも、自分自身にも。」


キアは荒く息を吐き、言葉を失う。クロテンが掻き消えた直後——


コン、コン。


「……ど、どなた?」


返事はない。


キアが扉に近づくと、フードの男が花束を抱えて立っていた。


「あなたは……誰? また私の頭が見せる影?」


男が顔を上げる。血のように赤い瞳が月光に光った。


「よろしければ……中に入れてくれないか。」



テクノドーム――レース続行


「土でも食ってろ、雑魚ども!」


ジロウは地下鉄の柱群をスレスレで躱し、ブーストでさらに加速する。


「さっきの小僧はどこだ? もう廃車か? ハハ! 雑魚!」


銀色の肌と髪の少女がバイクで追い越し、横目で一瞥。


「慢心は致命的だ、ジロウ。勝敗を分ける。」(キカイ)


彼女は身を起こし、片足だけでバイクを操って空中ブーストを回収。


〈ブースト取得! ボム起動!〉


掌に爆弾が形を取り、振りかぶって投擲。ジロウのホイールを掠める。


「おい危ねえだろ!」

「さようなら。」キカイはさらに加速。


その時、背後から声。「感じ悪い子だね。」


ジロウが振り向くと、ルカが斧をアンカー代わりにして車体後部に張り付いている。


「てめぇ!? どうやって追いついた! クラッシュしたろ!」


「俺、速いから。狼になれば弾丸も躱す。」(ルカ)


ジロウはステアを激しく切り、ルカを振り落とそうとする。「降りろ! 俺は勝つ! なんで俺の車にヒッチしてんだ!」


「保険。相棒が君を見失わないようにさ。」


「は?」


ドォン。


遠方で重雷鳴。レース中の全員が振り返る。ジロウの目が見開かれる。


「なんだあれは?」


ドン。ドン。ドン。


「出番だ。」(ルカ)


ルカが車を離れた瞬間、巨大な機械の手が彼をひょいと掴む。レールを紙のように裂きながら、巨大メカが車群と並走する。


「はぁ!? 誰が地底でジャイアントロボを走らせろって言った!?」


出口が見えてくる。車群が雪崩れ込む。メカのマスクが開き、中央コクピットのマラチー、後方にナイトウ、ユースケ、ナオキ、ファイド。ルカは飛び乗る。


「ハハハハ! 最高! こんなことできるなんて! 天国は俺のためにある!」(マラチー)


ジロウは茫然。「クルマ失ってメカ出す? どういうメンタル?」


「お前のケツを蹴るメンタルだ!」(マラチー)

——マスクが閉じ、重低音が叫ぶ。

「我が物だ。」


キカイは一瞬だけ振り返り、眉を上げる。ジロウが並ぶ。「ふむ。君の新しい友は手札が多い。」

「友達じゃねえ! それに関係ねえ!」(ジロウ)

「どうでもいい。」(キカイ)


コースは草丘へ。罠と落とし穴を避けながら次のチェックポイントへ。


コクピット内、マラチーは狂喜の笑みでパネルを連打。「もっと速く!」


「面白い機体ね、マラチー。こんな火力、出せるなんて。」(ナオキ)

「俺も驚き。普段は車かロケットが関の山。」(ルカ)

「ルネアの匂いはするが、段違いに高度。」(ルカ)


「踏め!」(マラチー)手のひらでコンソールを叩く。

メカは地表をホバー滑走。


「あの女もいる。脅威度は上。」(ナイトウ)


「ヘヘ、エララ、解説。」(マラチー)

『解析:エレメンタル・ウェポン=テクノメカ。ミサイル、機銃、砲、近接武装、スラスター搭載。他の元素の力を取り込み強化可能。電力消費大。』


「武器が戦闘メカってやり過ぎだろ。」(ルカ)

「武器なの?」

「らしい。」


マラチーは高笑い。「他のみんなにドヤるのが楽しみだ! 盾も籠手もいらん、全部踏み砕く!」


「『他の元素で強化』……なるほど。コンピュータ、どういう——」(ルカ)

『ビースト元素検知。取り込み開始。』


足元が開き、ルカは胸部座席へ落ちる。両手にグローブが装着。

『リンク完了。ビースト元素、使用可能。』


「ルカー!? 何した!」(マラチー)

「……もしかして——」(ルカ)


ルカの全身が緑光に包まれ、メカも狼鎧を纏う。

「掴まれ、マラチー。」(ルカ)


外では、メカが狼爪を伸ばし変形。ジロウが息を呑む。

「形態を任意切替!? 何者だあのガキ……」


「元素の力を持つのは明白。」(キカイ)「答えは単純。落とすしかない。」

「俺たちで?」(ジロウ)

「この器は双方の脅威。協力する以外ない。」


「……いいだろ。アイテム箱だ。引いて転ばせる!」(ジロウ)


二人は箱を通過。

〈アイテム:スライムランチャー/トリップワイヤー〉

「上等!」(ジロウ)


メカが丘を飛び移り、二台の直後へ着地、爪で薙ぐ。

「今!」(キカイ)


バイクのスライムがメカの目を覆う。ジロウのワイヤーが脚を絡め、メカは大転倒。


「取った!」(ジロウ)

「距離を取る。」(キカイ)「じゃあね。」


「この——!」


メカはのろ起き。車が次々追い抜く。中ではマラチーがダッシュボードを叩く。

「稼働上げろ、エララ! 勝つ!」

「乱暴は禁物よ!」(ナオキ)

「お任せを、ナオキさん。」


ドォン。

メカは疾走、罠も車もはね退ける。胸部のルカが腕を振ると、外のメカも車体を薙ぎ払う。


「……認める。こいつはアリだ。」(ルカ)

「だろ!?」(マラチー)


最終ステージは電脳タワーの垂直登攀。ジロウとキカイはすでに上昇、他車も続く。


「あそこだ。女も並走。」(ユースケ)「二人を落とせば十分。」


「任せろ。エララ、登坂速度は?」(マラチー)

『ビースト強化で+110%。』

「上れ、ルカ!」


メカは爪を突き立て垂直登攀。巨体ゆえ、一気に背後へ迫る。


「しつこ……。終わったら説教だ、ガキ!」(ジロウ)


キカイは自動運転に切替。「ゴール時に搭乗義務なし。追いつける?」

「は?」(ジロウ)


彼女は宙へ跳び、メカの頭部へ着地。一撃で爪が滑り、メカがズリ落ちる。


「パンチ重い!」(ルカ)

「あの女!」(マラチー)


次の一撃の寸前、ナイトウが扇を抜き前へ。「機体、保持。」


「は?」

ナイトウはコクピット解放ボタンを押す。「登り続けろ。」

「だ、だめ!」(ナオキ)


制止も聞かず、ナイトウは頭部へ跳躍、キカイの前に立つ。


「今すぐ降りろ。」(ナイトウ)

「何者?」(キカイ)

「ナイトウ・ケイ。第七将。」

「肩書は地面じゃ無意味だよ、ベイビー。」(キカイ)


キカイの旋風脚。ナイトウは潜り抜け、払って落とす。キカイは空中で体勢回復。


「やるね。嘘じゃない。」(キカイ)

「身体能力 高。見た目は標準Voltian外。何者だ。」(ナイトウ)

「さぁね。好きに呼べ。」(キカイ)


瞬間、頭部へ拳。メカが壁面を滑る。

「やめなさい。」(ナイトウ)


扇を投擲、キカイは二枚とも受け流し地上へ弾く。指を鳴らすと扇は手元に回帰。頭上で攻防が続く。


「よく動く将だね。でも限界はある。」(キカイ)


キカイの蹴りでナイトウが仰け反り、片手で縁を掴んで残る。

「ごめんね?」(キカイ)


ナイトウは上を見やり、フィニッシュ目前のジロウを捉える。「残念ね。」


自由な方の手から扇を打ち上げ、ジロウの車とキカイのバイクを弾き、双方をスピンさせる。


「おいおいおい!」(ジロウ)


バイクが落下回転。キカイが目を細める。「今、何を——」


「これ。」(ナイトウ)


指をパチン。扇がジグザグに戻り、キカイの後頭部をヒット。彼女は足を滑らせ、地面へ叩きつけられる。


「いった……」(ルカ)「あれで無傷は無理だろ。」


メカは登攀続行。最後の跳躍で頂上に到達、ファンファーレ。


〈レース2クリア! 勝者:マラチー・ジョーンズ!〉


マラチーはコクピットを開け、ガッツポーズ。「よっしゃ! テクノロジー万歳!」


タワーが地表まで降下。背後の扉が開き、新たな部屋。

〈チェックポイントB到達! チームレベル10!〉


全員がメカを降りると、機体はマラチーの身体へ還元。ナオキが肩をぎゅっ。「よくやったわ。でも飛ばし過ぎはダメ。」

「約束はできない!」(マラチー)


「進む。」ユースケが扉を指す。


しかし赤いレーザーゲートが立ちはだかり、弾かれる。

〈クリアランスLv12必要。未認可。〉


「勝っただろ? 話が違う。」(ルカ)


「だから必要なんだよ、俺たちが。」背後から声。


振り返ると、ジロウとキカイがキーコードを掲げて前進。


「はぁ……負け犬が今度は助けか。」(マラチー)


「要る? 要らない? 勝った礼に次のゲートまで案内はしてやる。ズルだったけどな。」(ジロウ)


「いいだろ。てかお前ら、落ちたはず——」(マラチー)


「車にパラシュート。」(ジロウ)


キカイは頭をコキッと直し、「見ないで。私は人じゃない。」

胸元を開くと、回路と機械がぎっしり。

「機械よ。」(キカイ)


「そりゃ納得。」(ルカ)


「じゃ、スキャンしてちょうだい。」(ナオキ)

「それが単純じゃない。」(ジロウ)「ここから先は各ゲートが適正権限を要求する。」


「つまり?」(ユースケ)


「先へ進みたいなら——俺たちを連れてけ。」


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