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婚約破棄系統

婚約破棄される令嬢とその原因の聖女〜「聖女? 性女のお間違いではありませんか?」「は? 神様に夢見過ぎww」〜

作者: 美香

久々の婚約破棄ものです。

 ーー聖女? 性女のお間違いではありませんか?


 フェニックス大陸に存在する5つの国の1つ、フェニー王国のシンプル公爵家の令嬢である私、イノセンスは教会の無理強いで我が国の貴族学園に入学した聖女ビッチ(元が平民なので名字がありません)にその様な感想を抱きます。

(いけませんわ、この様な品性を損なう言葉は……。)

 そう考え直しますが、それでも眼前の殿方達を侍らす姿は変わりありません。侍っている中には私の婚約者である次期王太子サクリワンス殿下までおり、溜め息を付いてしまいます。

「何とまあ……、」

 私の周囲からその様な声が聞こえます。侍っている殿下以外の殿方は殿下の側近であり、その婚約者の令嬢達は私の周囲に居ります。私達は皆で殿下をお支えする謂わば同士でした。……現在はご覧の有り様ですけれど。


 家にも王家にも報告済です。殿下にも忠告致しました。勿論、最も早くに忠告したのは聖女ビッチ様に対してですが。


 ーーは? 神様に夢見過ぎww


 「婚約者の居る男性に妄りに近付いてはいけない、況してや貴方は聖女なのだろう」と言った内容の忠告を致しました。「教会に迷惑が掛かる」と言う事をも伝えた積りだったのですが、何故か、その様な言葉が返って来たのです。



 教会は5つの国を纏める絶対的な位置にあります。国王ですら教会が首を縦に降らねば認められません。1度それを無視した国が有りましたが、教会の命で他4つの国が差し向けた軍により、国王は処刑されました。そして教会が認める新たな王が座に着いたのです。


 何故、教会がこれ程までに権力を保持しているのか。


 それは教会が間接的に世界を救っているからです。この大陸は幾度も滅亡の危機を迎えているのですが、神の慈悲で聖女が遣わされ、聖女が存在する事によって、危機を脱しているのです。教王は聖女を見付ける神力をお持ちで、それにより、聖女を見出し、保護しているのです。


 ……体の良い、プロパガンダですわね。


 そもそも危機って何ですの? 欠片も感じた事有りませんわよ。そう思いますが、表立って口に出す事は出来ません。国王が信心深いからです。そう、教王が認める王は信心深く有る事が条件なのです。現国王陛下も例外では有りません。

 聖女を丁重に扱わねば世界は滅ぶと言う教王の言を信じていらっしゃるのです。……私の両親もですけど。

 ビッチ様が我が国の学園に入学されたのも、ビッチ様がそれを希望したから、だそうです。そして平民である自身の世話係に畏れ多くもサクリワンス殿下をご指名無さり、その結果が今に繋がって居ります。


 それにしても殿下のあのだらしのないお顔……。


 私は心底軽蔑致します。この様な事になる前は良好な仲だったのですが……、最早、熱烈な恋も全て冷めてしまいました。私の忠告も耳に入らぬ様ですし、婚約解消を願っておりますが、中々聞き遂げられません。

 殿下有責の婚約破棄を願いたい気持ちを抑え、王家を立てているのですが……、どうも陛下はご理解為さられて居ない様です。

 お父様は「世間では聖女様と仲違いした故の婚約解消と思われる。お前の評判が落ちるから我慢してくれ」と仰いますが、根底には聖女様への信心があります。神罰が下る事を恐れているのではないでしょうか。


 ……馬鹿馬鹿しい。


 


 ……学園の卒業式より数カ月前。王家より私の婚約は破棄されました。私の有責で。私が聖女様に対して不敬を働いたから、と。

「だから我慢してくれと言っただろう! 何故、お前はそうも神を蔑ろにする考えなのだ!?」

 牢に入れられた私に面会に来られたお父様が怒りと嘆きで絶叫します。私の聖女様への不敬とやらは処刑一択だった様です。


 悔しい……、どうして………、怖い……っ、


 震える身体を押さえようと私は、支えてくれた友人を思い出します。彼女達は私が庇ったのもあり、聖女様への不敬で罰せられる事もなく、処刑処か、婚約も破棄ではなく解消となっております。きっと良き婚約者に恵まれ、幸せな結婚生活を送るでしょう。


 ……良いのです。彼女達が幸せならば。誇り高く、私は毒を飲み干しましょう。


 





 フェニックス大陸を支配する神が居る。その神は一定のサイクルで大陸を破壊、再誕を繰り返す。その痕跡に人間は気付き、神に祈りを捧げた。


 げに恐ろしき全能神。


 世界の全てを創り給うかの存在が、人間に都合良い存在な訳がない。神が祈りを聞く義務は無い。

 されど人間には知恵がある。故の気付き、故の祈り。神はそれを興味深く思った。故に願いを聞き遂げる事にした。

 大陸の全てを破壊するのではなく、一部だけにした。代わりにサイクルを早めた。そして人間達へ予言の聖女を遣わすと神託を出し、実行した。

 聖女は滅びの地を予言し、避難を呼び掛ける。人々はそれに従い、新たな住まいを求める。この流れを効率良く進める為に教会は組織された。全ての国は教会を丁重に接した。民を守る為、国同士で協力もした。意思統一の為、国名をフェニックス大陸の名に準じるものへと変えて言った。フェニー王国もその1つ。

 神への畏れと信心は、人間に過去夢の能力を与えた。滅亡と再誕を繰り返した大陸の歴史を、聖女の予言した地の滅びを夢に見る様になった。数こそ限られていたが、神はこの変化をげに趣深く感じた。

 神は「出来るだけ過去夢の能力者を教会上層部や国の上層部に付けるならば、聖女に滅亡そのものを消失させる力をやろう。但し、聖女が力を発するには聖女を幸福にせねばならない」と神託を出した。そして教会も国もそれに従った。

 神にとって、人間はペットになっており、特にお気に入りが聖女になっていたのだ。


 ……処で国を守ると言う行為は綺麗事では済まない。大きな事を成し遂げるには汚い事にも手を染めねばならない。

 神はそれを見ていた。故に大きな力を持たせる聖女は予言の聖女とは違う性質を持たせた。その上で人間がどうするかを見ていた。

 表向きは変わらなかった。数こそ限られてはいるが、今の人間には過去夢の力がある。出来うる限り、組織の上層部に付いている為、誰もが聖女に平伏した。しかし多数の人間はその力を持たない。性悪聖女に疑問を持つ者もチラホラと現れ出した。

 しかしその一方で身近に能力者が居たり、真剣に歴史や地質調査を学ぶ事で、神の存在を、聖女の力を信じる者も多い。

 誰よりも信心深い教王に至っては神託無く、聖女を見つけ出す神力を発現させるに至っていた。


 イノセンスには能力が無かった。しかし同世代の令息・令嬢達には幾人かの能力者が居た。本来ならば王妃にはなれない。しかしイノセンスがサクリワンスに一目惚れし、どうしても、と決まった婚約だった。

 サクリワンスが過去夢の能力を保持していたので、その能力に付いて語り、歴史や地質に付いて学び、滅亡と再誕の大陸史を学ぶ様に命じた。

 同世代の令息・令嬢達は国に見出され、サクリワンスの側近とその婚約者として取り立てられており、無能力者であるイノセンスが王妃になるに当たって、最低限の条件だった。

 しかしイノセンスは会話に困らぬ程度にしか真剣にならなかった。イノセンスは神に懐疑的で、王妃教育の宗教以外の分野の方が必要だと譲らなかった。

 

 これでは駄目だ。


 そこへ教王から聖女の希望を聞かされた国王は、イノセンスの事を明かし、イノセンスへの試験期間と成したい旨を伝えた。聖女ビッチと教王の許可を得た事で事態は動いた。

 ビッチは逆ハーレムを望み、次期王とその側近を侍らせた。彼等は愛しいと言うより、畏れ多い気持ちが強かったが、その気持ちを抑えた。

 一妻多夫としての生活を臨んだビッチだが、スタイルが崩れるし、養育は面倒と言う理由で子供は作らないと宣言しており、謂わばハーレム要員達は生贄だった。その上で王妃業務はやる気がない。

 事情を知った各婚約者達は速やかに秘密裏に婚約を解消した。そしてその上で王家を、次期王を支える事を宣誓した。

 しかしイノセンスだけは別だった。元よりビッチは王妃業務をする気が無い為、ソレ用の人員を必要としていた。綺羅びやかな部分は独り占めし、イノセンスには地味でキツい部分を押し付ける気が満々であった。

 国としてもビッチがその気ならば、イノセンスを婚約者から外す理由はない。問題はイノセンスに王妃の器ーー神への信仰ーーがあるかどうかだった。

 つまりイノセンスに必要な事は聖女ビッチの希望を確認する事だった。ビッチに楽しそうに侍らねばならないサクリワンスの支えになる事だった。

 側近達の婚約者はソレをする為に、それでいて聖女ビッチの機嫌を損ねない様に婚約を解消したのだ。


 ーー何故、神の慈悲が無ければ私達は歴史を繋げられないとご理解為さらないのかしら。


 ーー何故、神が人間に都合良い存在だと思われるのかしら。


 ーー何故、神が創造物の1つに情を持つ事は依怙贔屓だとお気付きになられないのかしら?


 ーー何故、依怙贔屓する神の遣わす聖女が善性であると決め付けられたのかしら。


 ーー何故、あれ程、愛する婚約者が本当は辛そうにしている事に気付けなかったのかしら。


 令嬢達の陰口を知らず、イノセンスは処刑されてしまったのだ。



 尚、その10年後、聖女ビッチは役目を果たし、若い命を散らした。聖女の寿命は短いのだ。開放されたサクリワンス達はしかし相手を求めなかった。彼等と同年代は既に婚姻しており、未婚の女性とは年齢差があり、哀れと思ったからだ。

 嘗ての婚約者達の支えはあるが、それは仕事としてであり、既に彼女達も人妻である。彼等は後継者に養子を取ったり、弟等の親族を指名したりした。


 彼等は生涯、独身で子を持つ事は無かった。

お読み頂きありがとうございます。大感謝です!

評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。


イノセンス・シンプル

純粋・単純


サクリワンス→サクリファイス+ワン

生贄1号

出してませんが側近達はサクリトゥースとかスリーサクリとかだったりします。


フェニックス

不死鳥は滅びと再生を司るらしいので。フェニー王国以外ならフェニック王国とかフェニス王国とかフェクス王国とかニフェックス王国とかあります。


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