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離れには○○が出るけど、それでも側室になるつもりかな?

ちょっと怖い話風です。

真夏の夜にお楽しみ下さい。

苦手な方は読まないほうがよろしいかと思います。


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「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。

 夫 フランク

 妻 マリリン

一話完結型なので、前の話とはつながりはありません。

「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」

「えっ?離れって、あの離れにですか・・・?」

「そうだ」

「それは・・・あまりに酷いのではないですか・・・」


「だが、上位領地の方から第二夫人にとゴリ押しされたのだ・・・」

「そうですか・・・ですが、断れないのですか?」

「すまない。断りようがないんだ。許してくれ」

「来られる方も幸せになるとは思えません!」

「そうだな」


「私は・・・かまいません。ですが離れのことをちゃんと説明してからのほうがよろしいかと・・・」

「そうかもしれんが、言って信じてなど貰えないだろう」



 フランクは離れのことをきちんと説明したが「やはり信じて貰えなかった」と言って、離れにミライア様という二十二歳の気の強そうな方が来られた。


 お会いした時に、私も本当にあの離れでいいのかとしつこいくらいに念を押したが、木で鼻をくくる態度で一蹴された。

 あまりにも態度が悪くて、ミライア様のことを気にかけるのが馬鹿らしくなった。


「ここまでの長旅、お疲れでしょうから二〜三日ごゆっくりお過ごしください」



 ミライア様が離れに入ったその日の夜。

 複数の(つんざ)くような叫び声が本邸にまで聞こえた。


「やっぱり出たようですね」

「そうだな・・・」


 私達はそのまま眠ろうとしたけれど、邸内が慌ただしくなり、部屋のドアがノックされた。

 仕方なくフランクが返事をしてベッドから出る。

「旦那様、ミライア様が・・・」

「分かってる。出たんだろう?」

「はい」


「ちゃんと出るって伝えてあっただろうと言って離れに戻ってもらいなさい」

「かしこまりました」

「すまないね」

「いえ、こうなると思っていましたので。ホールには離れに入った全員が集まっております」

「そ、そうか・・・頼むね」

「はい」


 私はマリリンを腕に抱いて再び眠りについた。



**********************


「側室を迎える前に言っておかなければならないことがある。離れには幽霊が出るけど、それでも側室になるつもりかな?」


 馬鹿な話を持ち出して婉曲に側室の話を断ってきているのだと思った。

 この側室の話をのがしたら私は一生どこにも行くところが無いとお父様に言われています。

 ほんのちょっとした失敗が大きく取り上げられてしまって、領地で暮らすことが出来なくなってしまったのです。

 

 私は自分のしたことを軽く考えていて気にも掛けていなかったのですが、二十二歳になっても結婚相手を見つけることができませんでした。

 


「幽霊などと馬鹿なことを言わないで下さい」

「いや、本当に出るからね。離れは一つしかないし、そこしか住むところないからね」

「かまいません」

「そう。君がいいならいいよ」


 そう言って受け入れられた私はケネディ家へ側室として向かいました。

 そうすると奥様が何度も「本当に幽霊出ますけどいいんですか?」としつこく聞いてきます。

 奥様も側室の私が嫌で、幽霊が出るなどと馬鹿なことを言って、追い出そうとしているのだと思いました。


「屋敷に馴染むまでゆっくりするといいよ」

 そう言われて、今夜は一人で枕を高くして眠っていると、初夏とは思えないほど気温が下がり始めました。

 上掛けを首までかけて小さく丸まっても体が震えます。


 窓ガラスがガタガタ鳴り、風の強さを知らしめます。

「嵐でも来るのかしら・・・?」

 吐く息が白くなっていて驚いてしまいます。


 寒さに我慢ができなくなってメイドを呼ぶためにベルを鳴らしました。

 窓はガタガタ鳴り続けます。

 ナイトローブを羽織り、ベッドに戻りましたがそれでも寒さを凌げません。


 部屋の扉がノックされ入室を許可するとギィー・・・と音が鳴ってドアが開かれます。

 メイドが来たのだと思いました。

「寒くて。上掛けを・・・」

 扉の周囲には誰もいません。

 ドアは開いているのにノックの音が部屋に響きます。

「なに?」


 フランクや奥様が言っていた幽霊が出るという話を思い出してしまいます。

「うそ・・・よね?」


 扉がバタンと大きな音を立てて閉まり、その音が屋敷中から聞こえます。

 私は怖くて声も出ません。


 私はベルを掴み何度も振りました。

 また部屋がノックされドアが開きます。

 やはりそこには誰もいません。


 半透明な人が私が入っているベッドから立ち上がり扉の外へ出ていき、扉がギィィィィーーと音を立てて閉まりました。


 私はあらん限りの叫び声を上げると、屋敷中から同様に叫び声が上がり、私はベッドから飛び降りて玄関へと走りました。

 そこにはメイドも料理人も執事も駆けてきていて、ドアから出ようと先を争っていました。


 私もなんとか扉の外に出ると、初夏の暖かな気温が私を包みました。

 私達は本邸へ走り、何故か扉が開いていて、逃げ込みました。


 本邸の執事が私達に向けて口を開きました。

「来られると思っておりました」


                                       END

怖くないように仕上げました。


ミライア様は翌日、寝不足のまま馬車に飛び乗って実家へ帰ってしまいました。

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