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ついもの新しい人に目がくらんで一生を台無しにしてしまったフランク

「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」

「どうしてそんな話になったのですか?」

「第二夫人をと周りが五月蝿(うるさ)くて・・・」

「私が二人目を懐妊したからでしょうね」

「た、多分・・・」

「貴方は第二夫人を受け入れたいのですか?」

「そこは微妙だ。貴族としての義務なら果たさなければならないだろうが、望んで欲しいかと言われれば、要らないとしか答えようない。それに、一人受け入れたら三人目も・・・と言われそうで」

「そうですわね」

「マリリンの気持ちはどうだ?」

「私を変わりなく愛してくれるのなら、貴族の義務ですので受け入れたいと思います」

「そうか・・・すまない」

「本邸はここだと忘れないでくださいね」

「分かった」



 離れにやって来たのは十七歳のまだ学園に通っている男爵家のマルチナという子供だった。

「まだ学園に通っているような子を第二夫人にするなんて・・・」

 流石に手の出しようがなくて、マルチナに話をして、学園を卒業するまではと、男爵家に送り返した。


 翌日慌てて男爵がやって来たが「さすがに子供に手は出せない」と断り、学園を卒業してから話し合おうと納得させた。


 男爵家が火の車だとは知っていたが、私にも譲れないことはあった。


「マリリン、なんとか断ることが出来たよ」

「残念でしたね」

「残念なんかじゃないからな」

 マリリンはクスクス笑い、朗らかな笑顔を見せてくれた。

 やっぱり第二夫人を娶るのは嫌だったんだろうな。

 マリリンの笑顔を壊したくないと思った。


 二人目の子供が生まれ、ジャッキーと名付けた。

 目の中に入れても痛くないと思えるくらい可愛い女の子。

 一人目のジョンが時折ジャッキーを虐めるのに困ったが、マリリンが言うには「ジャッキーばかり可愛がるせいですよ」とのことだった。

 ジョンとは剣の稽古をつけることでジャッキーを虐めなくなった。


 

 マルチナが学園を卒業して、離れに入ることになった。

 断りたかったが、私が断ると、男爵家が失爵することになると王家からも頼まれ、仕方なく受けれた。


 震えるマルチナに「本当にいいのか?」と何度も確認して、マルチナと夫婦になった。

 マルチナはとても小さく小動物を思い起こさせ愛おしいと私に思わせた。


 比重がどんどんマルチナに傾いていく。

 本邸には帰らなくなって五ヶ月目に、マルチナが妊娠した。


 マリリンにマルチナが妊娠したことを伝えると、この世のものとは思えない顔をした。

「それを私に聞かせてどうしろと?!」

「いや、初めての妊娠で不安だろうから色々と助けてやって欲しくて・・・」

 マリリンの顔が一層険しくなる。

「私はジョンの母親ですが、フランクの母親ではありません。妻です」

「知っている・・・」


「私の下に来なくなった原因を助けたりしません」

「え?前に言ってたことと違うよね?」

「私も同じ様に愛されていたのなら貴族の義務として受け入れると言ったのです。愛されてもいないのに、どうして私が第二夫人を庇護すると考えられたのか分かりません」


「私はマリリンを愛しているよ!!」

「マルチナ様が来られてから一度も本邸に顔をお出しになりませんけどね」

「え・・・そんなに?」

「ええ」

「なので私はマルチナ様の庇護はいたしませんし、父にはこの家への援助は必要ないとお断りいたしました」

「そ、そんな!!」

「どうぞ第二夫人の下へ」

 玄関を指さされ、追い出された。


 執事カルスを呼び、仕事などのことを聞く。

「仕事溜まってないよな?」

「奥様がすべて決済されています。このままですと、離れの費用が捻出できなくなりますがどういたしますか?」

「えぇえっ・・・どうしたらいい?」


「女性にうつつを抜かして領主としての仕事を疎かにする旦那様をどうすればいいのか、私のほうがお聞きしたいと思っています。このままですと、旦那様が家から放り出されることになるかと」


 その日からマリリンの下に日参するも、まるで相手にされなかった。

 ジョンに剣の稽古を付けてやろうとしても、ジョンは私を軽蔑の目で見るし、ジャッキーは私のことが分からないのか、近寄ると大泣きする始末だ。


「マリリン、本当にすまなかった。ちょっと若い子に溺れてしまっただけだ」

「そのまま溺れてらっしゃったらよろしいですわ」

「そんなことを言わずに許してくれ・・・」


 機嫌を取るための宝石、ドレスすら私には買えなくなっていた。

 離れに振り分けられるのは食費のみで、マルチナの子供の準備にすら困ってしまった。


「マルチナの子供の準備を始めないと、子供が生まれてしまう」

 マリリンにそう頼むと、一通りの準備が整えられて離れに届けられた。

 私はお金が欲しいと思ったが、マリリンのほうが上手だったのだろう。


 マルチナが女の子を産んだが、私は素直に喜べなかった。

 マリリンに子が生まれたことを伝えると、何の感情もない声で「おめでとうございます」と言われて扉をピシャンと閉められた。

「マリリン、そろそろ許してくれ!!」

 哀れっぽくマリリンに呼びかけたが、中からはジョンとジャッキーの笑い声だけが響いた。


 マルチナが子を産み一ヶ月が経ち、マルチナと閨をともにしようとして拒否された。

 あまりに腹が立ったので「出ていけっ!!」と叫んでしまった。


「伯爵家でなら今までよりも贅沢な暮らしができると思っていたのに、今まで以上にみすぼらしい生活を送らなければならないなんて思いもしませんでした。私に子は必要ありませんので、子を残して実家に帰らせてもらいます」

「私も子は要らん!!連れて行け!!」


 唇を噛み締めたマルチナが子を連れて出ていった。

 後日本邸からカルスがやって来て、男爵家からの離縁状と子供の親権放棄の書類を渡された。

 両方にサインをしてカルスに渡す。

「マリリンと面会したい」

「奥様はお望みではありません。どうぞこの離れでお過ごしください」

「そんな・・・」


 ジョンが十八歳になった時、マリリンが離れにやって来た。

「こちらの書類にサインを頂きたいのです」

 その書類は家督をジョンに譲るというものだった。

「絶対に嫌だね」

「そうですか」

 そう言ってマリリンは本邸へと帰っていった。


 一週間ほど経って王宮から召喚状が届いた。

 その召喚状には私が、もう十年以上領主の仕事をしておらず、実質マリリンが領内の仕事をしていたこと、それを証明する書類が提出され、その実権をすべてジョンに譲りたいというものだった。

 私への召喚状は名ばかりの領主の座から退くことを望まれたものだった。



 女性の怒りは長くて深い。

 私はジョンに家督を譲ったけれど、許されることはなく、一人で寂しい老後を送っている。

 

 マリリンは孫に囲まれ、いつも楽しそうに笑っている。


                                 BAD END?


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[一言] 本妻と夜を共にしないのは百歩譲って… いや、一万歩くらい譲ってもやや許せないけど… 遊ぶのはいいし、まだ子供いない嫁さんとの子作り優先するのはある程度仕方ない 仕事しないのは普通にクソオブク…
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