マリリンに愛を捧げているのに、離れに来た女性に心奪われる。
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。
夫 フランク
妻 マリリン
子 ジョン (産まれていない場合もある)
子 ジャッキー (産まれていない場合もある)
子 ダンク (産まれない場合もある)
上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。
今回は離れに来た女性に心奪われるお話です。
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」
「そうですか」
「あっさりしすぎじゃないかな?」
「仕方ありません」
「嫌だとか思ってくれない?」
「思っておりますよ」
「ならもうちょっと、こう、なんていうの・・・愛がほしいよ」
「子供をたくさん作ることを推奨されているのですから、わたくし個人の気持ちなど意味がありません」
「意味ならあるよ!私が嬉しいからね!」
「離れに入る女性のことも考えてあげてください」
「私の気持ちも考えてくれてもいいんじゃないかな?」
「公認で女遊びができると思えばいいでしょう?」
「そんな公認、嬉しくないよね?拒否してもいいかな?」
「・・・そういう訳にはいきませんでしょう」
「今の間に愛を感じた!!」
「好きに仰っててください」
赤い顔をしたマリリンが愛おしい。なのに離れに女を入れなくてはいけないなんて。
執事が一歩前に出てくる。
「旦那様、そう嫌がらずとも良いのではないですか?来られる方が可哀想ではありませんか」
「氏素性は分かっているのか?」
「やっと興味を持っていただけましたか。ヴェネリー・タルガリア、十八歳。伯爵家の次女と伺っております。現在のご当主は十四歳。旦那様の後見を望んでおられます」
「タルガリアも当主が亡くなっていたのか」
「はい。亡くなられた当主が自分の死期を悟り、ヴェネリー様との婚姻を望まれました」
「そうか・・・大事にせねばならないな」
「はい」
この七年程、中高年の間で病が流行っていた。
なぜか女性は罹っても重篤化しないのだが、男性がかかると死亡率が跳ね上がる。二人に一人は亡くなってしまう。
原因の究明は出来ておらず、対処法も確立されていない。
そのために国力は下がる一方だった。
やって来たヴェネリーは美しい娘だった。輝く金の髪に左の目の下に泣きぼくろが一つ。グリーンの瞳は輝いていてすっと通った鼻筋に少し厚い唇が男を誘う。抜けるような肌の白さに触れると汚してしまうような気がした。
「ヴェネリー嬢の立場は分かっているけど、本当のところはどうなんだろう?嫌なら、今言わないと後悔することになるよ」
「わたくしは貴族の義務だけでこちらに参った訳ではありません。望んで参りました」
私をしっかり見据える目に嘘は見当たらなかった。
「本当にいいんだね?」
「はい。よろしくお願いいたします」
その夜、私は十も年下のヴェネリーを堪能した。
翌日は妻を抱き、一晩中腕の中に閉じ込めた。
「フランク、ありがとう・・・」
「そんな事言うな!!」
話したときにはあんなに淡々としていたのに、妻は私の名を何度も呼び、涙を流していた。
なのに、私は初々しいヴェネリーを抱きたくて仕方なかった。
そんな気持ちを抑えつけ、次の日も妻の下で眠った。
「フランク、ヴェネリー様の下に行ってください。彼女は妊娠しなくてはなりません」
「だが私は!!」
嘘だ。ヴェネリーの下に行きたくて仕方ない。
「私には可愛いジョンがいます。ヴェネリー様にも心の拠り所を作って差し上げてください」
「マリリン。私には君だけだよ」
「はい。ありがとうございます」
ヴェネリーの下に向かいながら妻のことを考える。
妻の下でヴェネリーのことを考える。
私はこの後どうなってしまうのだろう?
私の気持ちに気が付いた時どうなってしまうのだろう?
私を許してくれるとは思えなかった。
END