浅慮なおとこフランクの年貢の納め時
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」
「どういうこと?わたしのことは必要なくなったの?」
「そんなことはない!!マリリンは私にとってとても大切な人だ」
「だったらなぜ?」
堪えきれなくなった涙がボロボロとこぼれていることにマリリンは気がついているのだろうか?
胸が痛くなり、自分の非道さが嫌になるが、離れにくる女性を受け入れないと、我が家は莫大な借金で家財道具を売り払わなければならなくなってしまう。
友人に誘われてうっかり金貨一枚を賭け事に使ってしまった。
すごく調子が良くて、何度賭けても勝ってしまってたった一枚の金貨がほんの一時間ほどで金貨百枚になってしまった。
その日は勝ち逃げして、ここで止めればよかったのに次に友人達と飲んで、気が大きくなってしまった私は初めから金貨十枚を賭けてしまっていた。
勝ったり負けたりしながら長い時間楽しんでいた。
金貨十枚が、だんだん負けが込みだしてついには金貨三百枚の借金になってしまった。
私は慌ててその場で賭けるのは止めて翌日、先祖から大切にしていた家宝の剣と盾をオークションに売りに出し、金貨二百十枚を手に入れて、借金を返した。
その後も友人達に誘われたが私は断ってひとり家に帰ったが、翌日その友人がやってきて昨日は勝てる日だったと言って、金貨二百枚を私に見せびらかした。
私は行けば良かったという思いと、行っては駄目だという思いに毎日苛まれ、私は勝った時の爽快感が忘れられなくて私は一人で出かけてしまった。
せめて友人とでも一緒に行っていれば、負けが混んだ時に止めてもらうことも可能だったのに、私は一人で出かけてしまったのだ。
その日は前半は気持ちよく勝っていたのだ。
なのにだんだん負け始め、私は前回に完済した実績があるからと店側も簡単にお金を貸してくれた。
どんどん熱くなってしまって、気がついた時には金貨五百枚以上に借金が膨れ上がっていた。
私が肩を落としていると、隣に座った年輩の方が私に「その借金を立て替えてあげよう」と言い出した。
「ただし、私の娘を側室として迎え入れてください」
「なぜ?」
「私の家は家格が低くてね、私の子供を家格の高いところにやって跡を継がせることが夢なんですよ」
「私には妻がいる!!」
「勿論知っておりますよ。ハルバルト公爵」
「公爵家と言えど、金貨五百枚以上簡単には払えないでしょう?私が支払って差し上げます。娘を受け入れてください」
その年配の男の直ぐ後ろにその男に似たところはあまりない、美しい女が立っていた。
「この子があなたの側室にしていただきたい娘です。名はアドラ。美しい子でしょう?」
私は思わず「うん」と首を縦に振ってしまうと、年配の男は艶然と微笑む。その笑顔は娘とよく似ていると思った。
その日、本当にその年配の男は金貨五百枚以上の負け金を支払ってくれて「来月の一日、娘を向かわせます」と言ってそれっきり姿を見ていない。
私はマリリンを愛しているが、あの美しい女をこの手にできるのならばそれは悪くないと思っていて、どこか浮かれた気持ちで離れの準備を整えさせた。
アドラがやってくるまで、マリリンを毎日抱いたがマリリンは気がのらないのか、潤むことがないまま私はクリームを塗りつけてマリリンに受け入れさせていた。
アドラが本邸の中に入ってきて、マリリンに挨拶をしているのを見て、マリリンの野暮ったさが際立って、アドラの美しさが尚一層美しく見えるようだった。
マリリンの立ち居振る舞いは公爵家としては少し足りないところがあるが、アドラはマリリンよりも家格が低いのに、公爵家の女として見られていることを意識した立ち居振る舞いが出来ていた。
私はアドラを離れへと案内して、そのままアドラを抱いた。
アドラは間違いなく処女で、私を受け入れるのも辛そうだった。
私はアドラの豊かな胸にくびれた腰、張り出した尻を陽の光の中で見て、アドラが苦しむ姿も、少し感じて恥ずかしそうにしている姿にも溺れた。
初体験の人を相手に、一日中楽しんで私は何度もアドラの中へ注ぎ込んだ。
それからはマリリンの態度が悪くて、私はアドラの側で仕事をするようになって、私の世界はアドラが中心に回り始めた。
三ヶ月は本邸に帰っていなかっただろうか、執事に一度マリリン様の所にお帰りくださいとしつこく言われて、仕方なくマリリンの元へ行くと、マリリンのお腹は大きく張り出していた。
「まさか妊娠しているのか?」
「はい」
「何ヶ月なんだ?」
「五ヶ月になります」
アドラがくる前に毎晩抱いていた頃に出来た子だと納得した。
「フランクはこの子をどうするつもりですか?」
「どうするとはどういう意味だ?」
「フランクの子供ですが、愛せないでしょう?」
愛せないと思った。だがそれを言うのは憚られた。
「わたし実家に帰らせてもらおうと思っております。なんでしたら離婚してもいいと思っています。その代わりこの子の親権を手放してください。離婚の条件はそれだけでかまいません」
私は瞬間的にカッとしてマリリンを殴りつけてしまった。
執事や使用人達に咎められて、執事に本邸から追い出されてしまった。
むしゃくしゃした気分のままアドラの元へ行き、アドラを押し倒してたっぷりとアドラの中に注ぎ込んだ。
アドラを抱いていたらマリリンの提案通り離婚届にサインすることがいいことに思えて、サインすることを決心してアドラの中で達した。
私とマリリンの離婚はあっさりと成立して、マリリンは自分の荷物と一緒に本邸からいなくなった。
それからアドラは妻のように振る舞い出し、それは私の望みとは少し違った。
「アドラ、そんな風に振る舞うのは止めてくれ。私を愛しているという振る舞いだけで十分だ。妻は当分要らない。マリリンでもうこりた」
「わたくしは直ぐにでも入籍して頂けるとばかり思っておりました」
「君の父親との約束は側室だ。妻になどなってほしくない」
「そんなっ!」
「そんな下らないことはもういいから、今までのようなアドラでいてくれ。私は妻のアドラではなく、女でいてほしいんだ」
「わたくしの望みはこの家の嫡男を生むことです!」
「私の望みはアドラにいつまでも女でいて欲しい。母親になどなったら、アドラの良さがなくなってしまうじゃないか!」
「フランク!!」
「子供ができるかどうかは自然に任せていればいい。出来た時にまた話し合おう」
「そう、ね・・・」
その日も女のアドラを楽しんで、気の向いた時に互いに楽しむ関係でいたかった。
アドラはしつこく子供を欲しがり、私はそれが鬱陶しくなり始めていた。
仕事は本邸でするようになり、アドラを抱くときだけ離へと通う形に変わっていった。
私は執事にアドラには変わらずに子供が出来ない薬を飲ませ続けるように指示を出して、私はアドラの父親に借金の負債をすべて返し終わった。
断れない夜会に招待されて出席すると、そこには知らない男にエスコートされているマリリンがいた。
マリリンに挨拶するのもどうかと思って、マリリンがいる場所から離れた。
マリリンをエスコートしている男は誰かと聞くと、隣国の公爵家の男だそうで、一目でマリリンを見て気に入り口説いている最中なのだそうだ。
そう言えば、マリリンが産んだ子はどうなったのだろうか?
共通の友人に聞くと「お前は本当に変わってしまったな」と言われ「ジョンっていう男の子を生んだよ」と教えてくれた。
それから半年ほど何も変わらずに過ごしていると、マリリンは隣国へとジョンを連れて行ったという噂を聞いて、ジョンは隣国の公爵の養子になったらしい。
私の子なのに、この家を継ぐことはないのだと少し後悔した。
アドラが鬱陶しくて仕方がなかった。
妻になりたがり、父親も妻にしろと迫ってくる。
だがもう既に借りはない。
綺麗に完済しているのだから、アドラを妻にしなければならない理由もない。
友人が言っていた通り、今の自分はどうかしているとしか思えなかった。
男の生理的欲求のときだけアドラのもとに行って排出すると、アドラの元からすぐさま去ることにしている。
そんな中、アドラが妊娠したと言い出し、私は執事にどういうことかと尋ねたが、執事はわからないと首を横に振るばかりだった。
我が家の主治医に見てもらった所、妊娠はしていないと言われ、妊娠を望みすぎて想像妊娠をしたのではないかと言っていた。
それがどういう仕組みのものかよく解らなかったが、これでしばらくアドラが静かになるのならそれでいいかと思った。
フランクに再婚の話が舞い込んだのはアドラが想像妊娠している最中のことだった。
相手は妊娠する前に夫に先立たれた女で、妻にするには貞淑でお淑やかな女だった。
相手は格下だったが、美しい女でもあったしアドラを妻にする気はなかったので、アドラが想像妊娠している間に再婚して、本邸に妻、ルビーを入れた。
妻として出来た女で、私がアドラを鬱陶しく思っていることもよく理解していた。
アドラは想像妊娠でお腹が張り出していたが、医者に見せてもやはり妊娠していないと言うばかりだった。
ある日突然アドラは月のものが来ると気が狂ったように暴れたらしい。
父親に精神を病んだようだと連絡を入れると、父親が迎えに来ると連絡があった。
アドラは今まで本邸に顔など出さなかったのに、本邸にやってきて、私に妻がいることを知ると、また手がつけられないほど暴れ出し、調理室へ行くとナイフを掴んでそれを振り回し始めた。
ルビーは同じようにナイフを掴み、アドラに背後から抱きついて、まるで自分を差すようにナイフを振り下ろした。
アドラのお腹にナイフが突き立てられ、ルビーも二の腕を斬られていた。
私はといえば、それらを恐ろしく眺めていただけだった。
ルビーは私の側に寄ってきて「旦那様の邪魔なものは排除しましたからご安心ください」と微笑んでいた。
私はこの先ルビーに逆らうことは出来ないのだと、理解した。




