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「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」  作者: 瀬崎遊


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石女と言われて離婚されてしまうマリリン

前書き無くても大丈夫ですよね?

邪魔かな?と思うのでこの先前書き入れません。

「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」

 夫が何を言っているのか最初理解できなかった。

「えっ・・・とどういう意味か理解できないのだけれど・・・」

「そういう鈍いところが君の嫌いなところだよ」

「申し訳ございません」


「二年経っても君に子供ができる兆しが見えないから、新しい女性を両親から望まれたんだよ。君の妻としての立場は変わらないが、離れに入った女性に子ができた時には、離婚もあり得ると考えておいてくれ」


「・・・わかりました」

 お義父母達から子供はまだかと週に一度は手紙がやって来て、お義母様は一ヶ月に一度はやってくる。

 私も早く子供が欲しいと思っているけれど、タイミングが悪いのか、私が石女なのか、妊娠の兆候すらない。


 最初は庇っていてくれたフランクも今は冷たい態度で、夜は愛の営みではなく子作りのための排出行為と変わり果てている。

 

 妊娠したい。子供が欲しい。子供を産まないと私は役立たずだ。

 最近は私の両親も『子供はまだなのか?』と手紙を送ってくるようになったし、使用人達の視線も厳しくなってきている気がする。


 離れに来た女性が妊娠したら離婚されることを両親に連絡しなければならない。

 私の未来はどうなってしまうのだろう?

 幸せな未来はやってこないのだと思った。



 離れに入ってきた子爵家の三女、マスカル様はたった一月で妊娠された。

 フランクは私のところに顔も見せなくなった。

 部屋の窓から見かけるマスカル様はどんどんお腹が大きくなって、使用人達にも笑顔が溢れている。


 妻の立場から降ろされるのももうすぐね・・・。

 そんな風に思っていた時、使用人達にまで石女と呼ばれていることを知った。

 私は酷く傷ついた。

 フランクはマスカル様が妊娠したことで私への当たりが厳しくなっていた。


 そして、生まれた子供はフランクとは似ても似つかない子供だったらしい。

 問い詰めたところ好きな人がいて、その人との子供だと話したらしい。


 フランクは気まずそうな顔をして本邸へと戻ってきたけれど、私から離婚を切り出した。

 この家ではもうやっていけないと思った。

 フランクが離れに行っていたこともあって、結婚して三年子供ができないまま時が経ってしまった。


 フランクは新しい女性が決まるまでは子ができないか試したらいいと言ったけれど、それはあまりにも惨めな気がして断った。

 フランクは引き止めたけれど義父母の後押しもあって、離婚はあっさり整った。


 私は実家に迎え入れられやっと泣くことが許されたような気がして、母に抱きついて声を上げて泣いた。

 母は「辛かったわね」と慰めてくれたけれど、父の目は厳しかった。

 きっと、役立たずだと思っているのだろう。


 石女と貴族社会で決まってしまった私に、結婚の話が舞い込んできた。

 凄く年上の後妻だろうか?

 私の未来が閉ざされていくような気がした。


 父に見せられた釣書は、同級生のヴェクターのものだった。

 取り敢えず一度会いたいと言われ、会うことになった。

 ヴェクターは政略結婚で一度結婚したけれど、どうしても二人の仲を改善することができなく、奥様から離婚を言い渡されて、それを受け入れるという形で離婚していた。

 

「私は石女と言われているのですけど、いいのですか?」

「子供ができないのなら親族から養子をもらえばいいさ。私は学生の頃それなりに仲が良かったマリリンとなら、楽しい夫婦生活ができるかなと思ったんだ。・・・前の妻とは本当に心を通わすことができなかったんだ」


「本当に?私でいいの?」

「マリリンだからいいんだ。それに家は両親とももう亡くなっているからうるさく言う人もいないしね」

「ありがとう・・・」


 互いに再婚だから簡素な結婚式でいいとヴェクターに伝えたのだけれど、小さいながらも友人達に祝われた結婚式になった。

 披露宴は学園で仲が良かった人達が多く来てくれて、私達の結婚を祝ってくれた。


 私には幸せなんてもうやってこないと思っていたけれど、今、すごく幸せだった。

 二人にとっての初めての夜は少し照れながらぎこちなく始まり、子供を作るための営みではなく互いの愛を確かめる営みとなった。


 幸せな気分で目覚め、まだ眠っているヴェクターにすり寄った。

 私からキスを一つ落としたら引き寄せられ、深い口付けになって帰ってきた。

 部屋をノックされたので残念なことにそこで中断することになり、私達は身支度を始めた。


 フランクの家も侯爵家でヴェクターの家も侯爵家。

 けれど内情は似て非なるものだった。

 ヴェクターは使用人とも気安く話して巷の噂話などをきいたりして、感心してみせてまた新たな情報を手に入れていた。

 仕事は順調なようで、私はフランクの家の内情などを話して聞かせた。

 

 ヴェクター曰くフランクは勝機を逃していると言っていた。

 私は家政のことを掌握するために過去のお金の流れを追っていたら、前の奥様の浪費にヴェクターが苦労していたのだとよくわかった。


 

 王家の夜会の招待状が届いてヴェクターと二人で参列すると、フランクとフランクが連れた女性と出くわしてしまった。

 私達は会釈だけして通り過ぎようとしたのに、フランクから話しかけられヴェクターに「よく石女と一緒になる気になったな」と言われてしまった。

 ヴェクターは「妻を愛していますので、子供など親族の子どもと養子縁組すればいいだけのことです」と言ってくれて私は嬉しかった。


 ヴェクターとダンスを三曲踊って、一通りの挨拶を交わしたらもう帰ろうと言われたので、私も賛成して帰路へとついた。

 

 ヴェクターと結婚して一年が経つ頃、私はヴェクターにそっくりな男の子を産んだ。

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