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「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」  作者: 瀬崎遊


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コリンラーンという儚い人は|強《したた》かだったのか?

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「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。

 夫 フランク

 妻 マリリン

 子 ジョン (産まれていない場合もある)

 子 ジャッキー (産まれていない場合もある)

 子 ダンク (産まれない場合もある)

上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。

 

 一話完結なのでどの話から読んでいただいても大丈夫です。

「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」

「フランク!いい年して何を言っているんですか?」

「あぁ〜〜!!違う私のではなくて、ジョンの相手だよ」

「ジョンのですか?」

「メリージェンが激怒しそうですけど?」


「そこをさぁ、君の話術でなんとかしてもらえないかな?」

「まるで私が賛成しているみたいな言い方止めてもらえます?夫婦仲が悪くなるのが解っているのに、態々(わざわざ)側室なのか愛妾なのか知りませんが、入れなくてもいいじゃありませんか」


「いやぁ・・・実は経緯はよく覚えてないんだけど、酒の上での失敗で・・・」

「フランク?」


 おっとマリリンの噴火数秒前だ。とても危険だ。


「申し訳ありません・・・実はほんとによく覚えてないんだけど、カルバリー家の三女のコリンラーン嬢が嫁ぎ先が見つからなくて、このままだと兄の世話で生きていかなければならないとかで、それはちょっと可哀想だねと思ったのは覚えているんだ。私の愛妾でもいいから受け入れてくれないかと頼まれたんだけど、流石にもう頑張りがきく年でもないしお断りしたはずなんだよ。だけど気がついたらジョンの側室待遇で受け入れることになってて・・・」


「シア!!ジョンを呼んでちょうだい!!」

「直ぐに呼んでまいります」


 マリリンがジョンに説明すると、ジョンは「ダンクの妻に出来ないんですか?」と聞いてきた。

「ちょっと年上になっちゃうかなぁ・・・」

「お相手の方は何歳なのですか?!」


 あっ、不味い。ジョンが怒ってるよ・・・。

「ジョンの二つ上の二十五歳なんだ・・・」

「妻より年上の側室を持てと言うのですか?」

「あれ?側室を持つのは賛成派みたいだよね?」

「そ、そんな事は言ってませんっ!!父上の都合で押し付けられるのはごめんです!!」


「いやぁ、でもね、会ってきたんだけど・・・」

「会ってきたですってっ?!」

 あっ・・・本気でやばい・・・。

 取り敢えず謝っておかないと。

「ごめん、ごめんって。会ってみないと返事できないじゃない」

「まぁ、・・・そうですね」


 あっ、ちょっとジョンが前のめりになってきた。 

 ここで押せばなんとかなるかも?!


「好みにもよるだろうけど、結構な美人さんだったんだよ。その年まで結婚の話は出なかったの?って聞いたんだよ」

「父上は相手に容赦ないですね・・・」


「十六歳の時に婚約者が亡くなってたんだ。病気で。覚悟の上の婚約だったらしいんだけど、やっぱり亡くなられると次の人と婚約。と切り替えができなかったらしくて、ズルズルと伸ばしていたら気がついたら二十五歳になってて、周りが慌てだしているらしい」


「その状態で本人は焦ってないんですか?」

「仕事を自分で持っているから、収入の心配がないので小さな家でも貰えたらそこでメイドと二人か三人で何とかやっていくと言っているらしい」


「なら、何も私が側室に迎える必要ないじゃないですか?!」

「でもさぁ、女性として生きる喜びも知らないまま朽ち果てていくのは間違っていると思わないかい?」


「それはそう思いますが、何も我が家でなくてもいいじゃないかっていう話でしょう?」


 あれ〜?メリージェンが来た途端にジョンが否定派になっちゃったね・・・。


「お義父様、その方は側室扱いを受け入れると言ってらっしゃるんですか?」


 メリージェン、人相変わっちゃっているね。ちょっと怖いからマリリン助けて?!

 マリリンを探すが、輪の中から三歩程下がって腕組みしちゃっているよ・・・。

 あれは助けてくれそうにもないかなぁ・・・。


「正直、どうでもいいって感じではあった。ご両親が言うから側室になれと言うならなるしかないかな、という感じではあったかな。一度皆で会ってみない?」


 よし。ジョンは会ってみたいんだな。

 メリジェーンは反対と。

 マリリンは・・・不参加か。

 ジョンは会いたくても会いたいって言えないよなぁ〜。


「断るにしても、相手に会わないといけないわけだし・・・?」

「そうですわね。お断りするにしてもコリンラーン様にお会いしない訳にはいかないでしょう」

 おっと、マリリンが参加ですよ!!

「だよね?」


 おっと、ジョン喜びが全身から溢れてるよ。

 メリージェンと二人っきりになったら叱られるのは確定だね。

 私もマリリンに叱られそうだけど。


 私とジョンは女性陣に思いっきり叱られて、コリンラーン嬢と会う日がやってきた。


 コリンラーン嬢は二十五歳だけど二十歳くらいにしか見えない。儚い感じがして男心をくすぐる女性だ。

 女性から見ても守ってあげたくなるタイプだと思うんだけど。


「この度はわたくしの両親がとんでもない話を持ち込んだようで、本当に申し訳ありません。気にせずに断ってください。同じ迷惑をかけるのなら兄に迷惑を掛けている方が気が楽なので、本当に断っていただいてかまいませんので・・・」

「コリンラーン様は婚約者を亡くされたとお聞きしましたが・・・」


「はい。十歳の時に婚約したのですがその時には既に私が十五歳になるまでは生きられないと言われていたのです。頑張って一日一日を大事に生きてくださって、私が十六歳の誕生日を迎えても会話ができるほどに元気だったのですが、残念なことに四ヶ月後に亡くなってしまいました。覚悟はしていましたが、実際に誰かが亡くなるという経験がなかったもので、覚悟が全然足りなくて・・・」


 コリンラーン嬢はピンと伸びた背筋に両手は膝の上で手を置いていて、座って涙を流していた。


 マリリンがハンカチを持ってコリンラーン嬢の元に行って涙を拭いてあげている。


「あれ?申し訳ありません・・・」

「まだ忘れられないのですか?」

 メリージェンがこの空気が壊れないようにと気をつけるかのような声を出した。


「いえ、忘れられないのとは少し違・・・う、と思います。私の人生は彼が亡くなった時に共に終わったのです。今の私は彼の下へ行った時にこんな事があったよと話に行くための時間だと思っています」


「だったら、幸せにならなければならないわ!!」

 マリリンが怒ったように言い出す。

「世捨て人のような生活をしていて、そんな話を聞いて本当に亡くなった婚約者の方が喜ぶと思っているの?」


「解っているのですが、他の誰かを心に住まわせたまま嫁ぐこことは出来ないと思っております」


 メリージェンが視線をコリンラーン嬢に合わせて口を開く。

「なら、私の夫のジョンの側室になって子供を沢山産めばいいわ」


 メリージェンが言い出したことに私が驚いた。

 

「私は夫を誰かと分かち合うことなど出来ないと考えていたけど、あなたなら許すわ。心の中で亡くなった人を思いながら、ジョンを受け入れる気があるのなら、離れに住むことを私は反対いたしません」

 

 それだけを言うとメリージェンは立ち上がって部屋を出ていってしまった。

 マリリンがその後を追っていく。

 私もメリージェンを追いかけるとするかな。


 私とマリリンはメリージェンを褒め称え、そして慰めた。

 それから一時間はジョンとコリンラーンは二人で話していたのではないかな?

 コリンラーンが帰る時にシアに呼ばれて、全員で見送った。


 その後、ジョンとメリージェンは長い長い間話し合っていたようだった。


 一週間後、コリンラーンの嫁ぎ先が決まったとカルバリー伯爵から連絡が来て、私達は頭を傾げることになった。


 どういうこと?

 それからしばらくしてカルバリー伯爵と会う事があって、我が家にすごく感謝してくれていたんだけど「こっちは何がなんだかわからないんだけど?」と聞くと「お宅のジョン君と話して、自分が恋をしてもいいんだと初めて知ったらしいんだ」

「はぁ?」


「亡くなった婚約者の両親の手前、幸せになるのは駄目な気がしていたけど、幸せになっていいならと考えたら好きな人がいるって解ったらしくて」

「それで?」


「その相手に突撃して、側室の立場を勝ち取ってきたんだ」

「・・・・・・」

 ジョンよ、なんて不憫なやつなんだ。


「本当に君の家の人達には感謝している!!」

 そう言って、かなり多めの飲み代を置いてカルバリー伯爵は意気揚々と帰っていった。


 結局私達はコリンラーンに(もてあそ)ばれたことになるのかな?

 マリリンに話すと「彼女の涙はどこまでが本当だったのかしら?」と首を傾げた。


 ジョンとメリージェンのぎこちなさは一ヶ月ほどでもとに戻り、私は二度と余計な真似はしてはならないと滾々(こんこん)とマリリンに説教された。


 コリンラーンの事があったからかは解らないけど、ジョン達に三人目の子供が出来た。

 大変喜ばしい。


 けどやっぱり腑に落ちないのは私だけなんだろうか?

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