マリリンは才能ある若者のパトロンになる。
設定
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。
夫 フランク
妻 マリリン
子 ジョン (産まれていない場合もある)
子 ジャッキー (産まれていない場合もある)
子 ダンク (産まれない場合もある)
上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。
一話完結なので、どの話から読んでいただいても大丈夫です。
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」
「まぁっ!!やっとですの?旦那様の優柔不断にわたくしまで迷惑を被っていますのよ」
マリリンは三人の子供を産んでから人が変わったようになった。
「政略結婚の責務は十分果たしたと思いますのよ。わたくし。やっと自由にしていただけるのね。まずは誓約書の作成をいたしましょう」
「誓約書?!」
「そうです。愛妾が産んだ子がこのサントール家の跡継ぎにはならないこと、万が一私の子が殺されたり不慮の死を迎えた時にはこの家を取り潰すという誓約書ですわ」
「取り潰すのは・・・」
「ですが、そのお約束がないと私の子が殺される可能性がありますもの。万が一のことは考えておく必要があると思うのです」
「まぁ、そうだな・・・だが、それなら病死や事故死の可能性もあるのだから、後二〜三人は子供を産んでもらわないと・・・」
「そう、ですわね・・・」
「なら後三人産むまでわたくしは我慢いたしますわ。ですがその後はわたくしも好きにさせていただきますから、よろしいですわね?」
「・・・解った」
二人で相談しながら取り決めた誓約書にサインをして、私は離れに女性を迎えた。
マリリンは私の子を続けて三人産み、子育ては乳母と専属メイド達に任せてしまった。
「君は有言実行だね」
「当然ですわ」
マリリンは子をなしている間に、私の離れとは反対方向に離れた場所に六人程度が暮らせる小さな家を建てていた。
今日を限りにマリリンと肉体的な接触は持てなくなる。
マリリンが妊娠していないことが確認取れ次第、マリリンも好きな男たちを侍らせる。
今まではほとんど社交もしなかったのに、好みの男を見つけるためにマリリンは社交に励んでいるらしい。
ほんの少し妬ける。
聞いた話では絵を描くことに人生をかけたい男と、音楽を一日奏でていたい男の二人を、小さな家に連れ込んだようだ。
私は愛妾二人と楽しく離れで暮らしている。
時折、本邸でマリリンと子供達と一緒に食事をとる。
親にまともに育ててもらえない子供達が一番の被害者かもしれないと気がついてからは本邸に顔を出すように心がけた。
しかし、マリリンはいつからか、昼間は本邸で暮らしていたようで、子供達に惜しみない愛情を与えて育てていた。
ならば私も昼間は本邸で過ごすべきなのではないかと思い至って、執務とマリリンとの子共達を第一に考えることにした。
ぎこちなかった子供達のと関係も、ようやく埋まり、子供達は両親の惜しみない愛を糧にすくすくと育っていく。
私の側室二人には、三人と二人の子がいる。
時折羨ましそうに本邸の子供達を見ているのは知っていたが、私は夜は隔日ごとに側室の元を訪ねているので問題ないと思っていた。
始まりは第一側室の子供の一人が本邸の子供に近寄り、遊んでいる所に割り込んで突き飛ばしたことから始まった。
側室達の子供達が徒党を組んで本邸の子供達に嫌がらせを頻繁にするようになってしまう。
そのため、私は側室達をサントール家の敷地から追い出した。
マリリンとの子供達がのびのびと生活できないなんてことがあっていい筈がない。
側室達への愛が一気に冷めてしまったこともあって、子供を育てるために必要な金銭だけ渡し、私は側室達の元へは通わなくなった。
側室二人から頻繁に手紙が送りつけられたが、子供達を上手くしつけられなかったお前たちが悪いのだと相手にしなかった。
マリリンの子供達に手を出さなければ、ずっと離れにいられたのだ。
側室の子供達が学園に通う年になり、マリリンの子供達が優秀だったこともあり、全員を留学させた。
側室の子供達は平均並の成績なようで、私は側室の子供達にさらに興味を失ってしまった。
マリリンは子供達が留学してしまってからは、本邸にはときおり顔を出す程度になってしまった。
私は新しい側室を迎えるのも面倒で、私は本邸にやって来たマリリンに手を伸ばした。
けれどマリリンはクスクス笑って、私をその気にさせては、私の手をすり抜けた。
そうなると私はマリリンが欲しくてたまらなくなる。
私はまたマリリンの前に跪いて愛を請い、本邸に戻って欲しいと希う。
マリリンは「離れに囲った男たちは手放さないわよ」と言って「それでも良いのなら本邸に戻ってあげてもいいわ」と私を惑わせた。
私は男たちに嫉妬心をかきたてられながらも、マリリンを愛し、必死で貢いだ。
妻に入れあげて貢ぐなんて、そういう思は心の何処かにあったが、マリリンが魅力的すぎて私は少年のような心持ちになり、マリリンに夢中になった。
年をとったわけではないけれど、若い頃とは違う熟れたマリリンに私は溺れた。
マリリンが囲っていた絵を描く男が世に認められ始めた。
描くもの全てが高値で売れ、マリリンは個人資産を膨れ上がらせていた。
マリリンが育てている音楽家がいると、話題になり、ただ音楽を奏でていただけの男の、作曲した曲を知らないものは居なくなった。
私は知らなかったのだが、絵描きが三人、音楽家が二人、離れには住んでいた。
「マリリン、いくらなんでも五人も囲うのは多くないか?」
と拗ねて見せたが、マリリンはまたクスクス笑い、私を翻弄する。
マリリンが囲っていた男たちが次々に世に認められ、新たな男たちを囲う。
知らなかったのだけれど、囲っていたのは男だけではなく女も何人かいた。
マリリンは誰とも性的関係を持ったことはなく、ただ、パトロンとして、才能ある若者たちの後援していただけだったのだ。
「マリリン、私は君に不誠実だったね」
「いいえ、今も不誠実だわ。側室に迎えた人達の子供の行く末も心を配らなければならないわ」
マリリン、私はきっと一生君に敵わないよ。
どうか、私を見捨てずに愛し続けて欲しい。
END




