マリリンの愛は狭くてとても深いものだった。
BAD ENDです。
設定
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。
夫 フランク
妻 マリリン
子 ジョン (産まれていない場合もある)
子 ジャッキー (産まれていない場合もある)
子 ダンク (産まれない場合もある)
上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。
一話完結なのでどの話から読んでいただいても大丈夫です。
不定期更新になります。
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」
マリリンは手を振り上げて私の頬を叩いた。
「約束したではないですか!」
「すまないと思っている。だがもう決まったことなんだ」
「嘘つき・・・」
寝室から飛び出し、マリリンの上半身が廊下の手すりから身を乗り出す。
上半身の重みに引っ張られて足が宙に浮き、マリリンの体は落下していった。
「マリリンーーっ!!」
「お前たちのせいで私はお腹の子を喪い、マリリンまで失うところだった!!」
「申し訳ありません・・・。まさかここまで奥様が拒否されるとは思っておりませんでした」
「私は言っただろう。絶対にマリリンは許さないと」
二階の廊下の手すりから階下へと身を乗り出したマリリンを見て私は必死になって手を伸ばしたがかすりもしなかった。
ドサッと大きな音と、何人もの悲鳴が上がる中、私は慌ててマリリンの元に走り寄った。
その場に広がる血の量に最悪を知った。
マリリンを失うことは避けられたが、意識のないままマリリンは死んでしまった子供を産んだ。
小さな、片手に乗るほど小さな女の子だった。
マリリンが目覚めないうちに小さな棺に入れ、火葬された。
骨の一欠片さえも残らなかった。
「女性を迎えるのでしたら私はもうお役御免でしょう。私の子がいれば面倒の種になります。ジョンを連れて帰ります」
「待ってくれ!私はマリリンと別れたくない!」
「私は私の夫を誰かと分かつ心算はありません」
「こちらにサインをして下さい」
マリリンのサインが書かれた離婚届と、子供の養育権放棄の書類だった。
「マリリン・・・」
「私が出ていくことを皆が喜ぶのではないですか?」
「そんな訳などないだろう!!」
「もう、どうでもいいことです。私は貴方に失望しました」
私は頑としてサインしなかったが、マリリンは離婚届と養育権放棄の書類だけを残して、ジョンを連れて実家へ帰ってしまった。
「旦那様・・・」
「これで満足か?お前たちの望み通りになったぞ。何人でも女を入れるがいい!」
「本当に申し訳ありません」
「謝って済むようなことじゃない」
誰に何を言われてもマリリン以外の女を入れることを受け入れるべきではなかった。
戦争で人口が減ったため、王から子を沢山産むようにと国民すべてに命令が下された。
貴族の男も戦地でたくさん死んでしまい、貴族の男には愛妾を三人まで持つことを命じられた。
それでもまだ、女性が余る。
産めよ増やせよだ。
陛下のこの命で二十年後には減った貴族も元通りになるのかもしれない。
けれどマリリンは戻らない。
マリリンが狭量だと言われればそうなのかもしれない。
マリリンの愛は狭くてとても深いものだった。
それを私は喜んだ。それを許していた。
なのに私がマリリンを裏切ってしまった。
何も知らされず離れに住むことになった女性も可哀想だ。
愛妾なのに白い関係のまま相手にされないことになる。
私は仕事をすることを止めてしまった。
「旦那様、お仕事をがたまっております」
「お前たちの好きにしたらいい。どうせ、私の言うことなど誰も聞かないのだから」
「そんな事はありません!!我々の主は旦那様だけです!」
「だったらなぜ、私が離れに女を入れることを嫌がった時に受け入れなかった?!」
「申し訳ありません・・・」
「今更何を言っても遅い。私には生きる気力ももうない」
「旦那様、奥様をお迎えに行きましょう」
「マリリンは何があっても帰ってこないよ」
「そんな事はありません」
「離れに女がいる。ましてや腹の子を亡くしたんだ。マリリンはもう戻らない」
領地は既にガタガタだ。いつ切り売りしてもおかしくない。
マリリンが出ていってから、会うことも話すことも叶わないまま三年が過ぎ去った。
私は離婚届にサインをし、養育権放棄にもサインをして届け出た。
その足で廃爵を王へと申し出た。
BADEND
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