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「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」  作者: 瀬崎遊


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結婚して二年、子供ができないマリリンは涙を流して受け入れ、四年目には・・・。

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「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。

 夫 フランク

 妻 マリリン

 子 ジョン (産まれていない場合もある)

 子 ジャッキー (産まれていない場合もある)

 子 ダンク (産まれない場合もある)

上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。

 

 一話完結なので、どの話から読んでいただいても大丈夫です。

「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」

「どうして?私ではもう駄目なの?」

「すまない・・・」


 マリリンの目にはみるみるうちに涙がいっぱいになり、瞬きとともに流れ落ちた。

 一度流れ落ちた涙は留まることを知らずに次から次へと流れ落ちていく。


 酷いことを言った自覚があるだけに、胸に痛みを感じるが、二年間子供ができなかったマリリンに、母が見切りをつけてしまった。

「離婚しろとまではいいませんよ。でも、子供を作ることの出来る愛妾を離れに入れてもらいます」



「母上も同じように結婚して三年間は子供ができなくて、父上が愛妾を囲ってつらい思いをしたのでしょう?なのに何故?同じ思いをマリリンにさせるというのですか?!」


「妻の立場、母の立場、公爵家の人間としての立場で回答は変わるものです。マリリンはこの公爵家に利益をもたらすことができていないので、しかたありません」


「私もマリリンもまだ二十歳なんですよ!父上もまだ健在なのですからもう少し余裕を見てもいいではないですか?」


「もう少し、もう少しと言っている間に、間に合わなくなることもあるのです。兎に角フランクは跡取りを作ることだけを考えなさい」



「マリリン、本当にすまない。許してくれ。私が愛しているのはマリリンだけなんだ。君を失いたくない」

 マリリンは何も答えず涙を流し続けた。



 婚約の前、私の父がマリリンを見初め、私の嫁にと欲しがった。

 マリリンの父親は、子供達には自由恋愛を認めるような人で、私の父の申し出より、マリリンの気持ちを優先させた。


 マリリンと何度か会ううちに、私もマリリンのことが好きになり、私の意志で婚約を申し出たけれど、マリリンの返事は色よいものではなかった。


 父はそのことに不満を持って、マリリンの家へと圧力をかけた。

 付き合いのあった商家を権力で押さえつけて、モンロー家に近づけなかった。


 伯爵家のモンロー家はあっという間に窮地に立たされ、マリリンの父親は、私の父が申し出た婚約を受け入れざるを得なくなった。


 初めはマリリンの態度は頑なだったけれど、私はマリリンのことが本当に好きだったので、マリリンに誠意を込めて接した。

 いつの頃からかマリリンのこわばりはとれ、ぎこちない笑みが、自然なものとなる頃に、婚姻することになった。


 式の前に私はマリリンに気持ちの確認を取った。

「始まりが、マリリンの望むものではなかったことはよく解っている。だけど、今は私のことをどう思っているんだろうか?」


 マリリンは真っ赤な顔をして「フランク様をお慕いしています」と答えてくれた。

「初めは確かに良い感情は持っていませんでした。けれど、フランク様のお心遣いに少しずつ、気持ちは傾いてまいりました。フランク様の妻になれることをわたくしは誇っております」


 私は結婚式の前から真っ赤な目をして、結婚式を迎えることとなった。


 それから今日の、ほんの少し前まで、私達は幸せいっぱいだったのだ。

 母が五月蝿く「跡取りはまだなのですか?」とマリリンを責めるため、マリリンは早く子供を作らなければと、追い詰められていっていたけれど、私は私なりにマリリンを守っていたつもりだ。

 それはマリリンも認めてくれている。



 愛妾となる二十一歳のベルリアンが離れへとやって来た。

 マリリンとはまた違った美しさのある女だった。

 十八歳で結婚して、十九歳で子供を産んで、二十歳で夫を喪い、子を取り上げられて婚家から追い出された哀れな女だった。

 子供を産んだことがある実績を買われて、私の愛妾にと望まれてやって来た。


「ベルリアンは兎に角子供を産むことだけを考えてちょうだい!!我が家には跡取りが必要なのです」

 母の心無い言葉にベルリアンも傷ついているようだった。



 マリリンと結婚して四年、ベルリアンが来て二年。未だに子供が出来る気配がない。

 どちらにも同じだけ愛を傾けているのに子供ができない。


 それなのに子供ができない。



 父が、子ができる可能性が高いベルリアンのところで夜は暮らせと私に命じた。

 私は渋々父の命に従った。


 マリリンの様子がおかしくなったのは、私がベルリアンのところに行った翌日からだった。

 初めは頬が腫れていて、どうしたのか聞いても、マリリンは「ぶつけてしまっただけです」と俯いて体を震わせて答えていた。


 執務に昼間本邸に戻ると、マリリンの体は日に日に傷が増えていく。

 どうしたのかとマリリンに聞いてもただ俯いて「なんでもありません」としか答えなかった。

 手首に縛られたような痣ができていることに気がついて、マリリンを問い詰めると、泣き伏して父が夜毎訪れるのだと言った。

 よほど抵抗しているのか、体中痣だらけだった。


 父に文句を言うと「お前が子供を作れないのだから仕方あるまい」と一蹴された。

 


 マリリンは打ちひしがれ、毎日泣き暮らしているらしい。

 私の前では気丈に振る舞っているが、執事が言うには父から部屋から出るなと命じられているとのことだった。


「子供が必要ならば、子供を産んだことがあるベルリアンを父の愛人にすればよかったではないですか!!」

 父は私の問いには答えず「お前はお前が成すべきことをしていればいい。マリリンには我が家へ嫁いできた女として成すべきことをしてもらっているだけだ」

 私は父に殺意を抱いたが、何もできなかった。



 たった一ヶ月だった。

 父がマリリンの下に通い始めて、その次の月には女性が来るべきものが来なかった。

 二ヶ月後、妊娠していると医師の診断がおりた。

 打ちひしがれていたマリリンの心が歪ながらも元に戻った。


 マリリンが妊娠すると、ベルリアンの元にも父が通いはじめた。

 ベルリアンは一切抵抗せず、父を喜んで受け入れたと父に聞かされた。

 ベルリアンも二ヶ月後には来るべきものが来なくなった。


 私は役立たずのレッテルを貼られてしまった。


 マリリンは嫡男を産み、ベルリアンは女の子を産んだ。

 当然私の子として届けられた。


 将来、この子供達は何も知らずに私をお父様と呼び、本当の父をお祖父様と呼ぶのだ。



 マリリンはまだ子供が欲しいと言い、マリリンが父の寝室へと通うようになった。

 また直ぐマリリンは妊娠して、また男の子が産まれた。

 父は「マリリンは子ができやすい体質なのかもしれん」と私に言った。


 私はもう、マリリンにも、ベルリアンにも、仮初めの父親としてしか存在を認めてもらえなかった。


 気が付くとマリリンはまた、お腹が大きくなっていた。

 父の下に通っていることすら私は知らなかった。


 マリリンもベルリアンも私の下には来ない。

 けれど父の下には進んで通っているようだった。


 母に「今の気持ちはどうですか?」と聞くと、憎々しげな顔をしてマリリンとベルリアンを見るだけで、何も言わなかった。


 私は私の妻達が産んだ私の異母弟を育てている。


                 HAPPY END?

托卵から思いついた話です。

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[良い点] フランクは何故、公爵を止めなかったのか? マリリンとベルリアンは何故、公爵の元へ通うようになったのか? 瀬崎さんの他の作品に、より不幸な境遇の人物はいますが、いったん幸せになった上でそれ…
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