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「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」  作者: 瀬崎遊


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14/34

マリリンは小気味良いほどフランクを拒絶した。

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「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。

 夫 フランク

 妻 マリリン

 子 ジョン (産まれていない場合もある)

 子 ジャッキー (産まれていない場合もある)

 子 ダンク (産まれない場合もある)

上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。 

 一話完結なのでどの話から読んでいただいても大丈夫です。

 不定期更新になります。

「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」

「そう」

 妻のどうでも良さそうな返答に内心傷つく。

「もう少し関心持ってもらえませんかね?」

「興味ないわ」

「そうですか・・・」



 マリリンは冷たい印象を与えるが、情の深い女性だと私は思っている。

 美しい人で、幼い頃の彼女に恋をした男が、父親に男性器を切り落とされた者までいる。

 そんな噂があるほどだ。



 政略結婚で、互いに何の感情もなかった。

 ただ美しい女性をこの手に入れられることに、私は満足していたし、彼女も私と結婚できて満足してくれていると思っていた。

 私はマリリンの美しさに心ときめかせていたし、結婚してからゆっくり愛を育んでいけばいいと思っていた。


 そう思っていた私にマリリンは言った。


「私に愛を求めないで、私には好きな人がいるから、心はその人のものなの。義務は果たすわ。子供も作ります。ですが、心だけは渡せません。心を満たしたいなら、離れにでも女性を迎えて下さい。私が本邸を出るのでもかまわないわ」


 初夜が済んだ後に言われ、私は傷ついた。

 両親に相談すると「子供を作ると言ってるならいいんじゃないの?」と母に言われ、父には「離れに女性を入れていいって言ってるんだから、そちらで心を癒やしなさい」と言われた。


 だからといって心を癒やしてくれる人などすぐに見つかるわけもなく、月日は流れた。


 妻は、外に誰かに会いにいくわけでもなく、侯爵夫人としての務めを立派に果たし、子供も三人産んでくれた。


 それでも「心は渡せない」と今でも言う。

 もう少し歩み寄れないものかと思うが、妻にその気はまったくなかった。


 ほんの少し、寂しくて、安らぎを求めた私は一人で参加した夜会で、八歳年下の男爵家の見窄らしい女の子、ユミーナと出会った。

 話をしてみると、家では居ないものと扱われ、両親、兄姉から日常的に暴力を振るわれているとのことだった。


「来月の誕生日までに貰ってくれる人を探さないとその男爵家から放り出されてしまう」と涙を浮かべていた。

 色々話をしてユミーナに同情した私は、次のグリフォス邸の夜会で会う約束し、私達はその日は別れた。


 私はユミーナが言っていたことが本当か徹底的に調べさせ、事実であることを確認した。

 ユミーナは学園で上位に入る優秀さで、女官に望まれるも、親の意向で取り消されていた。

 働きに出せば金も搾り取れるだろうに何故だ?と疑問に思っていると、兄姉が自分より優秀なのは許せなかったようだと報告書に書かれていた。


 家令に離れの準備をさせ、私はユミーナを迎える準備を整えた。

 グリフォス邸の夜会を訪れてユミーナを探す。

 一人ぽつんと二昔前のドレスを着て立っているユミーナはすぐに見つかり、彼女の下へと向かった。


「やぁ、ユミーナ」

「フランク様!!来てくださったんですね」

 私を見る目がキラキラしている。

「私は妻がいるけどそれでも決心は変わらない?」

「はい。フランク様が連れて行ってくださるなら」

「なら、男爵に話を通そう」

「いえ、それはやめて下さい」

「・・・?どうして?」


「男爵家に無駄にお金を使う必要はありません。三日後の私の誕生日に、私は家を放り出されます。家を出された後、侯爵家に向かってもいいですか?」

「それでいいのかい?」

「そうして欲しいのです。私のことで男爵家にお金を渡したくないのです」

「怪我をしないかい?」

「馴れていますから大丈夫です」

 嫌な馴れだなと心が痛くなった。


 三日後、落ち合う場所を決め、万一会えなかったときのために侯爵家まで来られるように数枚の銀貨を渡した。

「三日後を楽しみにしているよ」

「私もです」



 無事?と言っていいのか、男爵家を放り出されたユミーナと落ち合うことができ、侯爵家へと連れて帰ることが出来た。


「ユミーナはこれからどうしたい?」

「どういう意味でしょう?」

「女官になりたいなら手助けできると思うよ。それ以外でも大概のことは力になれると思う」

「お側には置いていただけないのですか?」

「それが君の望み?」


「私を救ってくれたのはフランク様です。たった二回しかお会いしていませんが、この一ヶ月、私の心の拠り所でした。お側に置いて下さい」

「わかった」


 ユミーナに家庭教師を付け、侯爵家の者として連れて歩くのに恥ずかしくない教育を受けさせている。

 私の連れとして一緒に外を出歩くことはできないだろうが、教養はあった方がいい。

 ユミーナは日常的なことに苦労はしていたが、頑張っている姿は私の心を揺さぶった。


 ユミーナが侯爵令嬢と言っても恥ずかしくないほどの所作を自然と振る舞えるようになる頃には、私の心はユミーナに傾いていった。



 マリリンはその事にすぐ気がつき、私に提案をしてきた。

「貴方も心を寄せる相手ができたようですし、私が心を寄せる方を呼んでもいいかしら?」

「それは・・・」


「絶対に子供は作りません」

「それは難しくないか?」

「私が好きな方は、男性機能が失われているのです」

 その一言で誰のことか分かった。

「君の家に居た執事見習いのことかい?」

「そうです」

「・・・分かった。いいよ」

「ありがとうございます」



 私は仕事は本邸でこなし、子供達と遊んで、子供達が部屋に戻ったら離れに向かう。

 離れではユミーナが私の帰りを待っていてくれる。

 それほど日を置かずにユミーナに子供が出来て、二人で喜びあえる関係に心が満たされる。



 マリリンは執事と適切な距離を保ちながらも視線はずっと互いを追っている。

 ほんの少し、羨ましく思ってしまう。

 


「マリリン、君は今の関係で幸せなのかい?」

「これ以上の幸せはありません。今までは側に居ることも叶いませんでしたから」

「離婚してもいいんだよ?」


「父に後妻として嫁がされるだけです。今のままがいいのです。フランク様には私の勝手ばかり通してしまいました。申し訳なく思っております。ですが、どうか私の我儘を許して下さい」

「分かった」


 私は頭を一つ振り、マリリンのことを頭から追い出し、ユミーナの下に向かった。 


               HAPPY END?

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― 新着の感想 ―
[一言] 苦いけれど同居してるだけの人と思えばそれはそれで…逆に家族がたくさんいると思えばいいのかも?
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