何も解っていないマリリンは、離れに人が入るのを心待ちしている。
設定
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。
夫 フランク
妻 マリリン
子 ジョン (産まれていない場合もある)
子 ジャッキー (産まれていない場合もある)
子 ダンク (産まれない場合もある)
上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。
一話完結なのでどの話から読んでいただいても大丈夫です。
不定期更新になります。
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」
「本当ですか?今度こそわたしとお友達になっていただけるでしょうか?」
「・・・さぁ・・・、どうだろうな?」
わたしにはお友達がいません。
わたしが少しズレているから、でしょうか?
それでもわたしはお友達が欲しいのです!
今度こそ仲良くしてもらおうと心に誓って、離れの準備を使用人の方々に頼みました。
今回離れに来られたのはシトラス様。
名前からしていい匂いがしそうです。
初対面の挨拶をして、お茶にご招待します。
シトラス様は面食らったように何度もご辞退されましたが、ここでお茶をしないと、二度とまともに会えないことは、これまでの経験でよく知っています。
嫌がるシトラス様の手を取ってサンルームへと向かい、歓待します。
フランク様はため息を吐き、シトラス様に付き合ってやってくれと頼んでくれてなんとかお茶にこぎつけました。
わたしの勢いに気圧されていたシトラス様もやっと、持ち直したようで、わたしを圧しようとしていらっしゃいます。
わたしはそれを奇麗に受け流し、お友達になって下さいと言い続け、了承を得るまで離れには行かせませんでした。
わたしの勝ちです!お友達になっていただきました。
フランクが離れにいるときは離れに行ってはいけませんと使用人たち総出で止められるので、フランク様も交えてお話するのは我慢しています。
ですが、フランク様が本邸にいるときや、外出中のときは遠慮はいたしません。
押しかけて、一緒にお茶をしてくださいと強請ります。
シトラス様は今までの方たちとはちょっと違い、フランクが離れにいないときはわたしの相手をしてくれました。
一緒に刺繍をしたり、観劇にも付き合ってくださいます。
この間はお祭りに一緒に行ってくださいました。
わたしは嬉しくてテンションが上がりっぱなしです。
「マリリン様は私がフランク様と仲がよくても何も思わないのですか?」
「わたし、まだ子供なので、よく意味が解らないのですが、フランク様も一緒に仲良くしていただけたら嬉しいと思っています」
シトラス様は微妙な顔をしていらっしゃいます。
「なので、気にしないで下さい。シトラス様とフランク様の間にお子様ができたらわたしも沢山愛して可愛がってあげてくださいと使用人たちにも言われていますので、わたしも可愛がってあげたいです!」
そんな話をして三日後、シトラス様は離れを出て行ってしまわれました。
また私は何か失敗したのでしょうか?
落ち込んで食事が喉を通らなくなってしまい、フランクやメイド達が心配してくれます。
元気な姿を見せなくてはならないと思うのですが、せっかくお友達になれたシトラス様の事が忘れられませんでした。
わたしの体が一回り小さくなった頃、シトラス様が遊びに来てくださいました。
わたしは嬉しくてシトラス様にかまって欲しくて起き上がりたいのにベッドから出ることができませんでした。
わたしの姿に驚いたシトラス様は「次に遊びに来るまでに元に戻っていないと、二度と遊びに来ないわよ」と言って、次に来る約束をして帰っていかれました。
わたしはその日から頑張って食事を食べました。
体が元に戻るまでには至っていませんが、シトラス様が来てくださった時、わたしを見て「まぁ、及第点ね」と言ってわたしを許してくださいました。
食事をしっかり取る約束をして、次に遊びに来てくださるという約束もしました。
「私、まさかマリリン様がまだ十四歳だとは知らなかったのよ。だってマリリン様、発育がよくて、小柄な成人だとばかり思っていたのですもの」
「そうなのですか?」
「それにフランク様がマリリン様に手を出していないとも思っていなくて・・・」
フランク様に、わたしにはまだ早いと言われている話かもしれません。
「まだ子供だから駄目だとフランク様には言われています」
わたしはよく「意味が解っていないし、マリリンにはまだ早い話だ」とフランク様に叱られたことがあります。
「婚姻を結んだのいつなの?」
「わたしが十二歳の時でした。私の母が亡くなって、それですっかり生きる気力をなくした父が、私を貴族として嫁に出したいと言って、フランク様にお願いしてくださったのです。年齢の割に身長が高かったので、結婚式の体裁だけはとれました。私の嫁入りを見た父は結婚式の一ヶ月後に亡くなってしまいました」
「そうだったの・・・」
「フランク様は私が十八歳になるまでは、ほんとうの意味での結婚はしないと仰って、それまでは離れに女性を入れることを認めて欲しいと・・・」
「誠意があるのかないのかよく分からない話ね」
そう言ってシトラス様はため息を一つ吐かれました。
「その・・・わたし、離れに女性を入れるって言う意味もよく解っていなくて、私のお友達を招いてくれているんだと思っていました。シトラス様が出て行って、ちょっと違うのかなって思うようになってきました」
「フランク様には私からしっかりお仕置きしておきましたから、マリリン様が十八歳になるまで、もう離れは使用しないと思いますよ」
「お友達を呼んでもらえないってことですか?」
しょんぼりしたわたしに、シトラス様は「もう私というお友達がいるのですから、離れには必要ないでしょう!それにマリリン様はこれから学園に行くことになるのですからお友達をたくさん作れますよ」
「そうでしょうか?」
「ええ。間違いないわ」
私は学園へ行くのがとても楽しみになりました。
十五歳になり、学園に通うようになり、シトラス様が言うように沢山お友達ができました。
離れに女性を入れる意味も、お友達に教えてもらいました。
その日は帰ってからフランク様に「酷い」と、嘘泣きをしてみました。
お友達にそうすべきだと言われたので。
私的には、仕方なかったことかなと甘受しています。
ですが、これから離れを使うことは断固拒否しようと思っています。
学園に行き始めてからもシトラス様は時折遊びに来てくれて、フランク様を見かけてはわたしを大事にしなさいと言ってくれます。
さすがわたしのお友達です。
学園を卒業して、私が十八歳になり、フランク様を受け入れることができました。
わたしがおとなになるまでの間、フランク様は本当に私に手を出すことなく待っていてくれました。
代わりに離れに女性を入れましたが・・・。
私はフランク様に「離れに女は入れないで下さい」とお願いしました。
フランク様は苦い顔をして「ごめん」と謝ってくれて、もう一度わたしを可愛がってくださいました。
END
実はマリリンがおこちゃまだったと言う話でした。




