マリリンにとってフランクの存在意義は?
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。
夫 フランク
妻 マリリン
子 ジョン (産まれていない場合もある)
子 ジャッキー (産まれていない場合もある)
子 ダンク (産まれない場合もある)
上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。
一話完結なのでどの話から読んでいただいても大丈夫です。
不定期更新になります。
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」
「分かりました」
「ルデリアル子爵家の三女、ハイアール嬢だ」
フランクの新しい女性ですか。
女性もフランクのどこがいいのでしょうか?
噂だけでも相当な女好きだと皆知っているでしょうに。
「初婚の方ですか?」
「そうだ」
「大丈夫なのですか?」
ご両親の事を考えると申し訳無さで顔向けできません。
「今度こそ私は本気だ!」
「そうですか。長続きするといいですね」
「ありがとう。妻である君のおかげだ!」
「どういたしまして」
前の方が出て行って三ヶ月。
早かったのか、よく持ったというべきなのか
フランクはとにかく女性が好きで、次から次へと手を出してしまいます。
貴族女性は身持ちを固くしなさいという教えられる筈なのに、いつからゆるふわになってしまったのでしょう?
ゆるゆるのフランクにはお似合いなのでしょうが・・・。
またお義父様とお義母様がお怒りになられるわね。
「離れの準備は出来ていますので、いつ連れて来ていただいてもかまいませんよ」
「分かった。ハイアール嬢と話し合って、連れて帰るよ」
★★★★★
フランクが左の頬を腫らして帰ってきました。
「素敵な装いですわね。斬新で驚いてしまいました」
「ハイアール嬢の父親に殴られた」
「それは仕方ないですわね」
ちょっといい気分になれました。
「あの父親はなぜ娘の望むことを何故叶えてやらんのだ!!」
「貴方が妻帯者だからではないですか?」
「それぐらいのことでか?!」
それぐらいって、それ以上に酷いことなんてないのではないかしら?
一度フランクの頭の中を覗いてみたいと思ってしまいました。
「ジャッキーが妻帯者に囲われても平気なのですか?それも嫁入り前に手を出されて」
ジャッキーは私とフランクの間にできた可愛い娘です。
「・・・それは駄目だな」
「貴方のしていることではないですか」
「なるほど。だが私は私、人は人だ」
「貴方、本当に人として最低ですわね。別れようかしら」
「それは駄目だぞ。マリリンがいないと私は困ってしまうからな」
「本当に最低な人」
私の中の何処かにフランクを思う気持ちの一欠片でもあれば本当に離婚していたでしょう。
けれど、離婚しようとするほどの感情は湧いてきません。
どうでも良いのです。
ただ、長男のジョンにこの家を継がせ、ジャッキーをいい所に嫁がせたいだけです。
ハイアール嬢の父親をどう説得したのか、二週間後に離れにやってきました。
初対面の挨拶をした時に、私への優越感を感じたのでしょう。嫌な笑みを浮かべる子でした。
女の趣味まで落ちたなんて、本当にフランクは最低だわ。
フランクは嬉しそうに離れに向かい、お楽しみだったのでしょう、二時間程で戻ってきました。
フランク自身が決めていることなのか、他所で泊まってくることはありません。
帰ってこなくていいのにと内心思っていますが、それを表に出すような馬鹿なことはいたしません。
誰かとの情事を終えた後、必ず私のベッドに潜り込んできます。私がどこまで許すのか、フランクなりに計っているのでしょうか?
結婚当初は正直言っていい気はしませんでしたが、今となってはずっと離れで暮らしていただければいいのにとしか思いません。
本当に、本当に、帰ってこなければいいのにというのが私の本心です。
「わたくし、今日は夜会なので夜は居ませんから」
「私も行こう!」
「あら、ハイアール嬢をエスコートしなくてよろしいの?」
「かまわない。あの子はちょっと予想と違ったよ。離れに入った途端妻のような口を利いてくるんだ。正直めんどくさい」
「もう飽きられたのですか?離れに来られたのは昨日のことですよ?」
「あの子は失敗だ。マリリンを邪険に扱おうとしたし、本邸に戻ろうとする私を引き止めるんだ」
「私のことなどどうでもいいではないですか。気にせず仲良くされるといいですよ」
「嫌だね。マリリンを悪く言ったり、貶めるような子は駄目だ」
「初めにちゃんと話しておかないからそうなるんですよ」
「本妻を大切に扱うのは愛妾の義務ではないか」
「愛妾だなんて思っておられませんよ。離れに入られる方は。あわよくば妻と取って代わろうと考えている方ばかりですよ」
「そんな女はだめだな〜」
「現実はそんな人ばかりでしてよ」
「嫌な思いをしたことがあるのか?」
「毎回必ずありますよ」
「そう・・・だったのか。知らなかった」
「まぁ、どうでもいいんですけど」
「それは私が連れてくる女性に興味がないのか、私に興味ないのかどっちなんだい?」
珍しく私が答えにくいことを聞いてきましたね。
「フッフッ。そうですね・・・、貴方の女性関係など興味ありません。好きにして下さい」
そう答えるとフランクはじっと私を見て、なにかを考えているようだった。
ハイアール嬢が鼻息も荒く本邸に乗り込んできました。
「奥様、フランクが私の下に来ないのですが!?」
「ハイアール様がフランクの扱いに失敗したからでしょう」
「どういうことですかっ!!」
「それが分からないことが、失敗なんですよ。一番は私を抑え込もうとしたことが一番の失敗。そして私のもとに戻ろうとするフランクを引き止めたことが第二の失敗ですね。あなたのしたことはフランクに嫌われるようなことばかりです。フランクの妻は余程の覚悟がないとなれませんしね」
「年増の女が偉そうに言わないで!!」
「まぁ、何とでも言って下さい。これもすべてフランクに報告が行きますよ」
「なっ!!あなたは女同士のことを告げ口するんですか?」
「私は告げ口いたしませんが、離れにいる使用人も、ここにいる使用人もフランクが雇っていて、全てを報告するように義務付けられているんですよ」
ハイアール様は真っ赤から真っ青な顔色に変えながら、ドスドスと音を立てて離れに帰っていった。
初日以降フランクが一度も離れに通わず出ていったのは、ハイアール様が初めてでした。
離れに来られる方は、皆さん私には色々しますし、言いますけれど、フランクにはいい子の振りはするのです。
それすらできない人を選ぶようになったら、フランクも落ち目ということでしょうか?
私はため息とともに離れを片付け、次に来る人の準備をしました。
一人迎えるのにいったいいくらお金がかかっていると思っているのでしょうね。
女性が居なくなると、フランクの相手をする必要が出てくるので早く新しい人を見つけて欲しいと思いますが、ハイアール様が出て行ってからは、夫婦で出かける場所以外にフランクはなかなか遊びに行きません。
「そろそろ遊びに行かれたらいいんじゃないですか?」
「遊びに行ってほしいのか?」
「そうですね・・・?少し、不思議に思っているだけです」
「私は今までマリリンを疎かにしすぎた」
「別に気にしてませんよ」
「だろうな。・・・私に関心が無くなっているんだものな」
「あら?」
フランクは私の顔を見て渋い顔をしています。
「子供達ともたまには遊ばないといけないしな」
「そう、ですか」
面倒だ。そう思ったけれど、ため息一つを呑み込んで、フランクに笑顔を向けた。
子供達はフランクを偶に屋敷にやって来る人と認識しているようです。フランクに向ける笑顔が余所行きになっています。
誰が見ても、物凄い他人行儀です。
フランクはきっと貴族らしいいい子供達だとでも思っていてくれると信じましょう。
今まで父親らしいことなどしていないですしね。仕方ないことです。
★★★★★
「奥様、ライラットご夫妻が近くを通るので立ち寄ってもよいかと先触れがございました」
私の子供の頃からの友人です。
「まぁ、嬉しいわ。フランク、来ていただいていいかしら?」
「ああ。かまわないよ」
家令に先触れへの返答と準備を頼む。
「お母様!!アル小父様が来てくださるのですか?」
ジョンとジャッキーが嬉しそうに纏わりつく。
「今日も剣を教えてもらえるかな?」
「私はお茶会をするの!!」
「アル達はお母様に会いに来るのよ」
三人でライラット夫妻の取り合いをします。
「ちがうよーー!!」
子供達二人は不満そうに口をとがらせて、私と手をつなぎ玄関へ向かいました。
フランクがわたしの背後から話しかけてきます。
「ライラット夫妻と子供達は随分仲がいいみたいだな」
フランクは不機嫌そうです。
「子供達は父親の不在しか知りませんからね。ライラット夫妻が父親のかわりをしていてくださっています」
「子供達はライラット夫妻が父親だと思っていると言うのか?」
「さぁ、子供達がどう思っているのかまでは分かりません」
「お母様ーー!!来たよーー!!」
「アル小父様!リラ小母様!!」
子供達は抱きつき、抱き上げられ嬉しそうにしています。
決してフランクには向けない笑顔全開です。
「フランク。貴方、子供達をいつ抱き上げました?」
フランクは考え込み、思い当たることがないのか愕然とした表情を浮かべ、その場に立ち止まりました。
私はクスクス笑ってフランクを置き去りにしてライラット夫妻の下へ急ぎました。
アル達を歓迎して、テラスへと誘います。
ジョンは木剣を既に手にしていて、ジャッキーはおままごとセットを手にしています。
「お客様にお茶をお出しするのが先ですよ」
「はーい」
メイドに手を洗ってもらって、ちょこんと席につくのが可愛らしい。
「珍しくフランクが居るみたいだけど?」
アルが物珍しそうにフランクを見ています。
二人は夜会以外でフランクに会うのは初めてかもしれません。
「こちらに来る気になれば来るでしょう。放っておけばいいわ」
私達がお茶を一杯飲んで、剣の訓練とおままごとをしている時になってフランクがやって来た。
ジョンが真剣に剣を教わっているのを見てフランクは驚き、ジャッキーが仲良くお茶会をしているのにも驚いています。
「私には近づきもしなかったのに」
「アル達は週に一度は私達の様子を見に来てくれますからね」
「そんなに度々来るのか?!」
「この家には男性が居ませんから、私が困っていないか気にかけてくださっているんです。ありがたいことだわ」
「私がいるだろう!」
「そうですか?ふっふっ。いましたっけ?」
つい、笑いが堪えられませんでした。
子供達が満足するまでたっぷり遊んでもらって、ライラット夫妻は帰っていきました。
その日の夜、フランクが私に詰め寄ってきました。
「君にとって私は一体何なんだ?」
面倒くさい人です。
「夫という名の家にはいないことが当たり前の方・・・でしょうか?」
「私は必要ないのか?」
「女性を囲う以外は何の役にも立ちませんからね。家に居なくても別に構いませんね」
「結婚してからずっと、必要な時には居られないので・・・」
私は少し小首をかしげて「何を気にされているのか分かりませんが、家のことは今更気になさらなくていいのですよ。貴方が居なくてもお義父様が生きている間はこの家は回っていきますから」
「本気で言っているのか?」
「お義父様が引退したい。と言う頃にはジョンが立派になっているでしょう。ジョンが跡を継いだ時は、貴方の遊びに掛かるお金くらいは自分で稼いでいただいた方がいいかと思っておりますけど・・・。まぁ、それも無理でしょうし」
「私はこの家で必要がないということか?」
「そう・・・、お義父様は・・・、そう思ってらっしゃいますね」
「マリリンはどう思っているんだ?私を愛していないのか?」
「フランクの愛は沢山あるかもしれませんが、私が愛しているのはジョンとジャッキーだけですわね」
「いつから・・・?」
「なにがですか?」
「いつから私に愛を感じなくなった?」
「元々愛があったかどうかも自信ありませんが、貴方が女性遊びをした日に、貴方に期待することは諦めました。貴族の結婚なのだと納得しました」
「離婚したいのか?」
「まさか!実家に帰ってもジョンに継がせるものはありませんわ。ジョンにはこの家の跡継ぎになってもらわなくてはなりません。お義父様もお義母様もそうお望みですし」
「私は?」
「質問の意味が分かりませんわ」
「この家に居ても居なくてもいい存在なのか?」
「女性のためにお金を使いすぎるので・・・」
「居ないほうがいいと?」
「・・・そんなこと言ってませんわ。ふっふっ」
その後、迷惑なことにフランクは家に居着き、今更お義父様に仕事を教わっています。
フランクが役に立つ頃にはジョンが立派にこの家の跡を継いでいるでしょう。
フランクが家に居るため、私が相手をしなくてはならなくて、三人目の子を身籠ることになってしまいました。
フランクは喜んでいたが私は、喜ぶ気にはなれません。
生まれてきた我が子に会うと、愛おしいと思うと分かっていますが。
妊娠する度に思います。どうかフランクには似ませんようにと。
離れはフランクが片付けて、最近は義父母が遊びに来た時に泊まっています。
子供達とは距離の詰め方が分からないらしく、子供達に遠巻きにされているのが可笑しくて仕方ありません。
居ないほうが私はのびのびと出来ていましたので、本当に何をしてもしなくても迷惑な人です。
END




