手放した妻は惜しくなる。
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」というセリフから物語が始まると決めています。
夫 フランク
妻 マリリン
子 ジョン (産まれていない場合もある)
子 ジャッキー (産まれていない場合もある)
子 ダンク (産まれない場合もある)
上記の設定に則って、色々な一話完結型の話を作ってみようと思います。
一話完結なのでどの話から読んでいただいても大丈夫です。
「マリリン・・・来月、離れに女性を入れる事になる」
「なら、離婚いたしましょう」
もしかしたら言われるかな?と思っていた言葉を、ためらいもなくマリリンは言った。
「私を手放してしまってもいいのかい?」
「ええ。構わないわ。子供もいないし、離婚は簡単だわ」
あまりにもあっさりと認められて私はショックを受けた。
「離れに女性を入れることは諦めるよ・・・」
「でも、離婚はしてくださいませ。わたくし、結婚前から言ってましたでしょう?浮気も本気も許しませんと」
「今回は未遂だから・・・」
「未遂ではないでしょう?カルバトーレ様でしたっけ?仲がよろしい噂は、自宅にこもっている私にも届いてましてよ」
「いや、それは・・・」
「結婚時にサインを頂いていた離婚届を明日、提出させていただきますね。資産の分配は結婚当初に決めたとおりでかまいません」
幾枚かの書類を次々に出されて、私はマリリンに「待ってくれ」とすがりついた。
マリリンはそんな私にかまうことなく、翌日本当に離婚届を提出して、私の資産の半分をきっちり持って行ってしまった。
隠してあったものまで表に出されてしまって本当にびっくりした。
執事のバルに「だから言ったでしょう」と目で訴えかけられて、私は肩を落とした。
私はカルバトーレを側室扱いで離れに入れた。
浮気で浮ついた気分で付き合っていた頃とは違って、カルバトーレと一緒に暮らし出すと、粗が目に付き、三ヶ月と経たずに離れから追い出すことになってしまった。
もう一度マリリンに寄りを戻してもらおうかと考えている
と、マリリンが私の親友だったヴィクトールと再婚したと噂になった。
慌ててヴィクトールの所に顔を出すと、マリリンが「まぁ、お久しぶりでございます。ヴィクトールの妻になりましたマリリンです」とにこやかに挨拶をしてきた。
ヴィクトールがマリリンの腰を抱いて愛おしそうに見ていることが許しがたくて、ヴィクトールに「どういうことか」と詰め寄った。
「フランクがマリリンを捨てたから拾い受けただけだ。私はずっとマリリンに恋していたからね」
しゃぁしゃぁと私に言ってのけた。
「いくらなんでも私の元妻を・・・」
ヴィクトールが「手に入れたもの勝ちだよ。フランクがマリリンを手放さなかったら私は諦めていたからね。フランクには感謝している」
「お前も浮気も本気も許しませんという誓約書にサインしたのか?」
「勿論だよ。私も浮気も本気も許せないからね。互いに離婚届も持っているよ」
私が帰る時に見送りに出てきたヴィクトールとマリリンは本当に幸せそうに見えた。
私はマリリンを手放して、一人きりになり、何をしているのだろうかと情けなくなった。
END




