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1話

 僕は「ザ」が言えないのです。正確にいうと滑舌が悪くて「ザ」が「ダ」になるのです。もっと正確に言うと「ザジズゼゾ」が「ダじずデド」になるのです。

「じ」と「ず」が言えるのは口があまり開かないからだと自己解釈しました。なんとも中途半端な滑舌です。どうせなら全てが言えなかったらいいのに。

 そんな僕ですが、俗に言う異世界転生をしてしまいました。トラックに惹かれて、女神にスキルをいただきました。「じず」までもが「ぢづ」となるスキルです。

 やけくそに願ったことが叶ったのです。「ザジズゼゾ」が「ダヂヅデド」となるのです。こんなことなら、金持ちを願っておけばよかった。

 あっ、モテモテになるのは結構です。人が苦手なので、人が近づいてくるのは結構です。それに、勝ち馬に乗ろうとする腐った人間は気持ち悪いです。

 そんな僕の危惧もよそに、僕は人からモテませんでした、異世界でも。最初に入ったパーティーではすぐに邪魔者として追放されました。悔しさと気楽さが入り混じりました。

 そんな僕が別のパーティーに拾われました。そこではなぜか僕は必要とされました。そのまま順風満帆。

 そのうち、過去に僕を捨てたパーティーに出くわしました。そこは落ちぶれていました。みすぼらしい格好で周りから馬鹿にされる強者必衰。

「だまぁ」

 僕は「ざまぁ」と言ったつもりでした。しかし、滑舌が悪くて言葉が変わりました。相手は僕の言うことを理解できていませんでした。

 その「ざじずぜぞ」が言えないことが今のパーティーで重宝されたようです。情報に組み込むことで情報線を制することができたようです。いいように使われたようです。

 この世界で目的を達成して現実世界に戻りました。すると、「ざじずぜぞ」が言えないままです。やはり「ざじずぜぞ」が言えないことを馬鹿にされます。

慣れたこととはいえ、嫌なものです。むしろ、異世界で有効活用されたこととのギャップで嫌悪感が以前より増長されました。現実世界がさらに嫌になりました。

 異世界に戻りたいと思いましたが、なかなか現実世界から追放されません。僕はトラックに身投げしました。しかし、怪我一つなく罵声を浴びせられただけでした。

 僕は派遣をすぐにやめて引きこもりました。元の木阿弥です。異世界のことは忘れましたが、たまに夢に出て動機を誘発させてきます。

 あてもなく何も考えず散歩していると、トラックにひかれました。僕は苦しさと嬉しさが入り混じりました。異世界で再び幸せな人生が待っている、と。

 サイレンの音が遠くから大きくなり再び小さくなりました。その中に聞こえてきました。

『ざまぁ』



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