第2話 「盾の弓」
第2話です
暖かい目で見守ってください
「……ここが訓練場か。始めよう!」
俺、ヒスイはただいま神盾というよく分からない組織に来ている。そこでマスクをつけた強そうな奴と今から腕試しをするらしい。
ちなみに俺はかなり腕が立つと自負している。
要は数年前起きた戦争を終わらせた本人こそがこの俺なのだ。
自慢では無い。違うんだ。
脳内でそんな茶番をしていると、ほのマスクの奴が話し始めた。
「あぁ、うん。ちょっと待って……。『君が死ぬといけない』から仮想空間に移動するよ」
「いや、特段心配は無いが……まぁ了解した」
バシュンと音がすると空間はデジタルのようなトコロへと移った。
「んーじゃ、始めるか。先かかってこい」
俺は腰の剣を抜き、構えをとり、迎え撃つ意思を示した。
「いいの?それじゃあお言葉に甘えて。それじゃあまずは5発から」
そう言うとマスクの奴は弓を構え、言った通り5発ほど放った。ゆっくり、1つずつ。
次の瞬間、矢が一瞬のうちに、不自然に加速した。
神眼のチカラか!?まぁ、少し動揺したが関係ない事。それを避け俺の剣が届く射程圏内へと近づく。
そしてその瞬間に理解した。
『コイツ、かなりの手練だ』
神眼の使い方が常人にできるレベルじゃない。
弓を放つその瞬間だけ左目が変色_____能力を発動している……。
通常は神眼は1度発動して解除までと、解除してから再度発動までにクールタイムが発動するのが一般的だ。神眼使いは皆この隙を狙って攻撃することが多い。その隙を与えない技術だ。
これは一応俺でもできるがかなりの時間を要した。コイツもそれだけ努力をしたやつだという事だ。それかただの才能か。だが俺の能力の前では関係ない。
「だがお前を少し舐めてた……少し本気出させてもらうぜ!」
段 階 解 放
今の剣よりも更に強化された大剣を錬成しオーラを練り上げ、マスクの奴へと突撃した。
「うぉらぁぁぁぁああああああ!!!!!」
瞬時にマスクの奴は体を傾ける。
「はは、良い。凄いパワー」
こうして俺たちはぶつかり合って___マスクの奴を、壁まで吹っ飛ばした。確実な手応え。これはやったんじゃないか?
仮想体ながらも壁にはヒビが入り、壁のパーツはがらがらと崩れ落ちる。そしてマスクの奴はと言うと。
「んん、痛い……ダメージは軽減させたつもり、というか避けたつもりだったんけど。掠っただけでこの威力」
なんと、ぶつかりあったつもりだったが俺の攻撃は掠った程度だったのだ。じゃあ、あの手応えはなんなんだ?当たったようにしか感じなかった。とんでもない技術力。そして俺の攻撃はろくに当たらない。武器がとにかく重いのだ。辛い。だが当たれば勝てるのだ。掠っただけであの威力なのだから。
「もう一撃……ッ!!」
このままぶつかり続ければ勝てる。俺がそういいトドメを刺しにマスクの奴の元へと行く刹那、
「させない」
マスクの奴の「右目」が赤く光り輝いた。先程の左目では無い。
「ッ……!!まさか!?」
「あぁ、僕はダブルアイなんだよね……能力が2つ」
マスクの奴は2、と言いながらピースのポーズをする。矢張りか……!違和感があるとは思ったがまさかダブルアイだとは。
ダブルアイは神眼のチカラを一つの目に一つずつ、2つ所持しているという事。存在すら疑われていた超希少な存在。
「クソ……!!」
今度は、もう1つの能力を警戒して1歩下がった俺の方が吹き飛ばされる。
「今度は僕の番」
マスクが弓で直に殴りに来た。なんでそうなるんだよ。
追撃、追撃、追撃。
反撃する暇を与えてくれない。
「けどな、なめんなよ……!!ちょっとした遊びのつもりだったがなかなかお前は強いらしい……!!行くぞ!」
そう言うとマスクの奴も距離を置き体制を整えたようだった。そいつに最高速度で近づき能力を発動。
「〔破壊〕」
その時、俺のチカラが発動した。
マスクの奴は、頭の上半分が吹き飛び、目玉だけが断面の上に残った。
「これでどうだ……!!ハァ…」
こっちもかなりの消耗……!!これでやられてくれなかったら俺の負けだが……流石にこれを回復する手段は無いはずだ。
「……………よう…」
「……??」
マスクの奴は何かを考えながらうわ言のように呟いていた。まだ喋れるのか。なんて言ってるんだ……?
「…………どうしよう……能力……使おうかな……負けても嫌だし……仮想体だし……いいよね」
何かが来る。そうだ。相手はダブルアイ。神眼の能力がもうひとつあるのだ。眼を残したのは誤算だった。眼さえ残っていれば能力の発動は可能。この発言を聞く限り……もう1つの神眼が強いのだろう。だがリスクも伴う……そんな感じか?
察した俺は気を抜かず体制を取った。だがあの状態で何をする……?
瞬間、
「〔ラ・ディーテ〕」
_____マスクの奴が能力を発動したようだ。
この瞬間でアイツの能力を最高速度で割り出せ。まだ目に見える影響は出ていない。感じ取れ。そう思い、思考を巡らせようとした瞬間だ。
俺は今、アイツと同じ、頭上半分が吹き飛び目玉だけが残った状態になっていることに気づいた。
「ッ……!?なんだこれ!?」
立て直す暇もなく、赤い斬撃を叩き込まれる。……!?!?これ、俺の斬撃と似てる?
そんなつもりは無いのだろうが、マスクの奴は嘲笑うように俺を見下ろし、
「それが僕の能力……久しぶりに楽しませてもらったよ。バイバイ」
この一言の後、俺はまた俺のものらしい斬撃によりやられ、完全にバラバラになってしまったようだ_____。
「やっぱり仮想体でよかった……僕も結構ダメージ食らっちゃったし。えっと、この人はとりあえず応急処置室?に連れていけばいいか……」
俺は最後、頭の上半分がない人がそう話しているのを聞き、意識を失った。
◆◆◆
ここは誰かの基地。というか廃墟。ここの拠点にしている組織があった。
「すみません〜。ヤシャですよ〜。入りますね」
黒い煙のような形をしたドアが開き、小柄ながら巨大な剣を携えた、目の下に黄色い傷のある少年がその空間に入ってきた。
「……何か用か」
それに答えるのは全身包帯で覆われ、目玉だけが露出している、男か女かも分からない人間。「それ」は無数の魔法陣や十字架が連なる空間にいた。
「こっちは順調ですよ。そっちは進捗どうです?」
「そうだな。後は『穴』さえ開けば実行可能ってとこだ」
「いや〜、なるほどなるほど。こっちは結構偵察で情報GET!しましたよ。いいニュースと悪いニュースがあります。どっちがいいです?」
「どうでもいい。早く話せ」
「はあ。ノリが悪いですよ。んーじゃあいいニュースから。『穴』が開きました」
「ほう…………詳しく話せ」
「ヤバくないですか!?タイミングドンピシャ☆ですよ!今すぐやっちゃいましょう……!俺たちの願いのために」
「あぁ、今すぐにでも準備をしよう。『コレ』を穴に持っていく」
「えぇ、それ動かせるんですか!?大変そうですねえ」
「そんなことはどうでもいい。悪いニュースとやらを聞かせろ」
「はいはい。悪いニュースですね。えーと。死無羅の奴と英雄〔ヒスイ〕が手を組みやがりました……要はヒスイの野郎が神盾に加入したって感じです」
「そうか。厄介だな……なら今からでも奴らの戦力を削いでこい。いずれ脅威になる」
「了解しました。それじゃあ『夢黒』さん……そっちは頼みましたよ」
「ああ」
そして、目の下に黄色い傷がある少年はその空間を離れた。
◆◆◆
この会話を誰かが聞いていた。その"誰か"はその頭をトントンと叩いたあと、彼らとは逆方向へと、その場を去った。
◆◆◆
翌日、神盾は戦場と化す事となる。彼らの手によって。
遅れました、