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呆れるほどズレている人生観  作者: アカツキ
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佐後勇作の場合⑧


「さーて、いっちょうやりますかあ」

 午後6時。会社に戻ってきた佐後は、開口一番、そう発した。

 現場に行く前に作った書類の張りぼてタワー。幸いにも崩れることなく、増築されていることもなかった。既に同じ部署内の社員は退社しているため、今日はこれ以上仕事が増えることはあり得ない。


「まずはこいつを片付けてと…」


 張りぼてタワーの上部、既に処理済みの書類をてきぱきと片付けていく。言葉通り「片付ける」だけなので、ファイルに綴じたり、棚に閉まったりするだけ。全て片付けるのに10分もかからなかった。


「毎日こんな仕事だけならいいんだがなあ」


 おそらく決して叶わない希望を口にしながら、佐後は書類を片付け終えた。机の上に残っているのは「途中まで手をつけた書類」と「手つかずの書類」。


「…まあ、こっちから手を付けるよな」


 佐後は「途中まで手をつけた書類」の処理に取り掛かる。一つ目の書類に目を通した佐後だったが、途端にパチパチと指を鳴らし始めた。


「なんで個人的なお菓子の差し入れが経費で賄えると思ってるんだ…」


 続けて二つ目の書類。やはり佐後は指をパチパチしていた。


「…個人的な領収書か?ゲーム機一式って…」


 領収書の裏に「取引先会社の専務への息子の差し入れです」とメモが添えてあった。


「やるならてめえの給料で勝手にやれよ…」


 佐後の主な仕事は、会社の経理関係だ。

 他の社員が取ってくる契約の書類や、何かしらの物品購入、果ては公共料金の支払いまで、会社の費用が動く場合、必ず佐後の目を潜り抜けなければならない。


「だめだな、この二つは却下。どうせ理解できないだろうが、理由を書いておくか…」


 両方の書類に「取引相手との個人的なやり取りは自費でお願いします」と書いた付箋を貼り付け、担当者の机の上に戻す。佐後の日常業務だ。

 淡々とこれを繰り返し、佐後の机の上から書類が無くなったのは1時間後のことだった(一部の書類は担当者に戻さず、張りぼてに使用するために手元に残しておいたが)。


 次に「手つかずの書類」に手を付ける。会社に届いた請求書や出来上がった契約書の確認。細かく内容を確認するため、先ほどまでの仕事よりも面倒だ。


「さすがに契約期間100年ってのはないだろうが…」


 しかし、佐後の予想に反し、今回の書類にはほとんど間違いがなかった(原契約と同様に作ればよいだけのもの、毎月定額で支払いを行っているものなど、間違いが生じる可能性が少ないということもあるが)。

 量も多かったので、こちらの書類は全て担当者の机に戻しておく。ここまでの所要時間、約2時間。

 ここまで来て、ようやく佐後の本来の目的が動きだす。


「さて、さっそく見ていくかな…うわ…」


 佐後が会社から追い出したい、もとい自主的に退社を促したい相手、春日の机の上を確認し、まだ手付かずの書類を探そうとして、佐後は絶句した。


「なんだこの机は…整理もできねえのか」


 相変わらずの無秩序な山積みの書類。上下左右すらない、さながら無重力の中を彷徨っているような書類を掻き分け、一つの書類にたどり着いた。


「エアコンのリースの継続…ああ、あれか」


 佐後は壁の上側に目をやった。佐後のいる部屋はそれほど広くない個室のため、エアコンも天井に埋め込まれているタイプではなく、家庭用のエアコンの性能が良くなったものが2台取り付けてある。


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