佐後勇作の場合⑤
翌朝(正確には同日の朝)、いつもより早く起きた佐後は、コンビニへのゴミ捨てに向かった。
(変な体制で寝たからかなあ、体の節々が痛えや)
その時、佐後の体は突然光に包まれた。突然のまぶしさで、思わず目に手をやる佐後だったが、その輝きに感動したのか、いつの間にか手を下していた。
(朝日ってこんなに気持ちよかったんだっけ…)
建物の合間からこぼれ出る朝日。何もかも浄化させてしまうような眩い光は、佐後の心のくすみを取り払ってくれるようだった。
「とりあえず、今日のコンペを乗り切ることから始めるか。よっしゃー!やるぞー!」
「いやー、今回のコンペは最高だったね!無事、我が社が契約を勝ち取ることができて本当によかったよ」
コンペ終了後、佐後の上司である葛沢正太郎は口癖のようにこの言葉を繰り返していた。この言葉だけなら佐後も何とも思わなかった。
しかし、続けて発せられる言葉こそ、佐後が不愉快になる原因そのものだった。
「これも、私の社員教育によるものだ。私のやり方は間違っていなかったんだな」
(てめえが何したってんだ。あんたに教えてもらったことなど一つもないし、コンペ中も黙って座ってただけだろうが!この能無し野郎!)
そう怒鳴りつけたくなるのを必死に堪えて、佐後は聞こえないように指をパチパチ鳴らしていた。
この葛谷の発言には他の人間も憤りを感じており、春日もその一人だ。
「資料を作ったのは私、その資料のお陰で佐後さんのコンペでの説明がスムーズにできたんですから。ねえ佐後さん」
(てめえの資料はめちゃくちゃで、俺が直したんだろうが!直されたことにもまだ気づいていねえし、コンペに来てもやることねえなら、そもそもコンペについてくるんじゃねえ!コンペにかこつけて社外に出かけたかっただけだろうが!てめえも能無しだ!)
朝日で癒された心はどこへやら、佐後の心はどす黒く染まっていた。