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呆れるほどズレている人生観  作者: アカツキ
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佐後勇作の場合③

 それから30分経ち、午前0時。独り言とも文句とも愚痴とも言い難い罵り言葉を叫び続けた効果があったのか、佐後は奇跡的なスピードで資料修正を完了した。

 誤字脱字を直しつつ、少しずつ構成も変えたため、春日が作成した資料のようなものとはおよそ違うものとなったが、佐後としては満足のいく内容になった。


「よし、これで明日、いや今日のコンペは楽勝だな!これでダメならどうやったって駄目なコンペなんだ。俺はよくやったよ」


 パソコンや資料を片付けながら、ふと、春日の机が目に入った。まったく整理していない机、無秩序に散らばっているプリント類。それを見ている佐後の頭に、ある考えが浮かんだ。



(あー、ここに火をつけたいなあ)



 おもむろに指をパチパチ鳴らすのは佐後の癖だ。誰かに対してイライラしながらも、その相手を潰す方法を考えている、そんな時に意識せず出てしまう癖。今この瞬間も、佐後は指をパチパチ鳴らしていた。


(ガソリンはないけど、冷蔵庫に入ってるマーガリンを散布して、マッチで火をつければ…思ったより簡単だよなあ)


 しかし、すぐに佐後は思い直した。


(何を考えているんだ、そんなことをしてはダメだ。こんなクズ女の机に火をつけることなんかで人生を棒に振るなんて、まっぴらごめんだ)


 佐後の指パチパチが止まった。


(それよりも、これからどうするかだ)


 時刻は既に午前0時を過ぎていた。今から会社を出たとしても、もはや終電には間に合わない。


(そもそも残業ありきの会社なんだから、寝るところくらい用意しとけよ。すぐに帰る奴らが使うコーヒーメーカーなんか買わなくていい!そんなもん、ぶっ壊れちまえ!爆発しろ!)


 再び指を鳴らしながらも、帰宅するためのタクシーや時間潰しに使えそうな飲み屋を考えている佐後の頭に、ふと妙案が浮かんだ。


(そうだ、寝るところがないなら作ればいいんだ!あるじゃねーか、誰にも邪魔されない場所が!)


 そう思い立ち、佐後はロッカーに閉まっていた支給品のベンチコートを取り出した。




 それから15分後。ベンチコートと通勤用のカバン、そして何やら食べ物やら飲み物が入ったコンビニ袋を持った佐後は、会社の車の中にいた。


(俺はなんて天才なんだ、会社の車なら椅子を倒せばそのまま寝られるし、冷暖房完備でテレビも見れて一石三鳥だ!)


 車内で自分の変わった発想を自画自賛しながら、佐後の手で缶ビールが開けられ、どんどん喉に入っていく。


「うんめーー!!!」




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