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運命を見つけて

青く、広い海の向こう側に、美しい湖をもつ国がありました。



その国のお姫様はとても美しく、そして優しい心をもっていて、国のみんなから愛されていました。



ある日、お姫様は湖に来ていました。湖の周りをぐるっと囲うようにしてお花がたくさん咲いています。


お姫様はそこに咲いている花を摘んで、風邪をひいてお城で寝ている弟にプレゼントしたいと考えていました。外に出て遊ぶことが出来ずに寂しがっている弟に元気になってほしいと思ったからです。


湖にはたくさんの色の花たちが咲いていました。

白の花も赤の花も青の花も黄の花もあります。


花のまわりでは蝶が楽しくダンスをしていました。


これだけたくさんのお花があると迷ってしまいます。

どの花にしようかと辺りを見回してみると、お姫様は湖のそばに一番大きく輝いているピンクの花を見つけました。


これをプレゼントしたら、きっと弟はとてもよろこんでくれるはずです。



この花にしようと思って、お姫様は手を伸ばしました。


その彼女の姿が、湖の水にうつったようです。

お日様の光を反射してきらきら輝いて見えます。


お姫様もそのことに気がつきました。

その光がとても綺麗で、もっと近くで見てみたいと思いました。


お姫様は湖に近づきました。

そして、胸をどきどきさせながら手を地面についてそっと湖の中を覗いてみます。



「えっ」


お姫様は驚きました。


覗き込んだ湖の水にうつったのは、自分ではなく、凛々しい青年の姿だったのです。


彼は全く知らない人のはずなのに、お姫様は何故か彼から目を離すことが出来ません。

彼を見ているとなんだか心がぽかぽかするよくに感じるのです。


彼の姿を見つめて、どのくらいの時間がたったでしょうか。

その時、ひとつの風がひゅーと吹きました。



水面が揺れ、風が目の前のまで来ているのを感じて、お姫様はぎゅっと目を閉じます。


お姫様の綺麗な髪が風にたなびきます。



もう風は止んだようです。

お姫様は、ゆっくり目を開いてみます。


そして、もう一度湖をのぞいてみました。



そして、また驚きました。


さっきまで水にうつっていた青年は見えなくなっていたのです。代わりに自分の顔がうつっています。


お姫様はもう、彼の姿を見ることはできないのだとわかってなんとなく寂しくかんじました。



お姫様はピンクの花をつみながら考えます。


あの青年は誰だったのでしょうか、と。



     ✳︎✳︎✳︎



それから何年が経ってもお姫様は湖で見た青年のことを忘れることはありませんでした。


そればかりか、大きくなるにつれて、どんどん彼に会いたい、という思いは強まっていきます。



今日はそんなお姫様の誕生日です。


たくさんの人が彼女の誕生日をお祝いします。


国の中では大きなお祭りがおこなわれ、国の外からも彼女をお祝いするために多くの人が来ています。



お姫様がいるお城では朝からパーティーがひらかれていました。


お姫様はパーティーが始まる前にお父様にいまれた言葉を思い出していました。


「今日のパーティーで、将来結婚する相手を見つけなさい」



姫様は思います。


「結婚するなら、あの日湖にうつった青年がいい」と。



彼のことを考えるだけで、胸がドキドキして、幸せな気持ちになるのです。


お姫様は彼がどこの誰なのか、どうすれば会えるのかが分かりません。


どんな声なのか、何をしているのか、どんな性格なのかも知りません。


でも、彼がいいのです。



お姫様はパーティーの間、たくさんの男の人から声をかけられました。


優しそうな人も、美しい人も、かっこいい人もいました。


しかしお姫様の目はずっと誰かを探していて、目の前の人に集中できていません。あいさつをしてくれたどんなに素晴らしい人のことも考えていませんでした。



昼が過ぎ、日が沈む時間が近づいてきました。


そろそろパーティーが終わってしまいます。



お姫様は青年が見つけることができていません。

自分の誕生日は嬉しいはずなのに悲しい気持ちが胸いっぱいに広がります。



お姫様はまわりに声をかけて会場から離れると、お城の庭まで出てきました。

1人で空を見上げたい気分だったのです。

お姫様はひっそりと涙を流します。




どれくらいそうしていたのでしょうか。


「お姫様」


お姫様は背中から誰かに声をかけられて、肩をびくりと揺らしました。


誰もいないと思っていましたが、誰かいたようです。泣いていたのを知られるのは恥ずかしいと思って、お姫様は慌ててドレスの袖で涙を拭います。


そしてゆっくり後ろを体を向けました。



振り返ったお姫様の目からはぬぐったはずの涙がまたひとつ、ふたつと流れていきました。



お姫様の目の前にいたのは、今日までずっと、ずっと会いたかったあの青年です。


青年の方は、自分を見て大きな涙を流しているお姫様を見て驚いています。



先に声をだしたのはお姫様でした。


「やっと、会うことができました」


まだ涙は止まりません。



お姫様は彼に会うことを諦めていました。

パーティーで会えるとは思っていなかったからです。


しかし、彼はお姫様のためのパーティーに来ていました。


あの青年は遠くの国の王子様だったのです。



王子様が声を発しました。


「私も、あなたのことをずっと探していました」


実は、彼は幼い頃からお姫様のことを夢で見ていたというのです。彼は夢で見た美しい少女に心を奪われていました。



お姫様が言います。


「おかしなことを言うかもしれませんが、私はあなたが私の運命の人であると思うのです」



その言葉を聞いて王子様も同じように思いました。


「きっと、この日に私たちが出会うことも運命だったのですね。私のお姫様」



出会うまでに時間がかかった2人でしたが、出会う前からお互いに想い合っていたのです。


王子様が言うように、大切な日に2人が出会ったこの奇跡も起こるべくしておこったのです。



2人は相手に近づくように歩き、触れられるところまで来ると、どちらからともなく抱きしめ合いました。


少し体を離して見つめ合うと、お互いへの愛が溢れました。2人は相手の目に引き寄せられるかのように、顔を近づけていき────




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