考え中
第二話「月乃の事情」
「以上で私からの連絡は終わりだ。何か連絡があるものはいるか?」
南川先生の質問に誰も反応しない。
「ではHRを終了する」
そう言うと南川先生は教室から出て行った。
次の授業が始まるまでまだ二十分ぐらいある。星河さんに会いに行こうかな…?
私は教室から出て星河さんのいる一階の保健室に向かう。
「やっぱり私が星河さんの正体を知っているから、出ていっちゃったのかな…」
星河さんが出て行った後、何度も記憶にある魔法少女の顔と、星河さんの顔を照らし合わせてみた。
だけど何度やっても星河さんは魔法少女という結論になった。
そんな他の人からしたらどうでもいい妄想をしているうちに、保健室の扉の前についた。
ノックしようとする私の手が止まる。
「もし星河さんが魔法少女じゃなかったらどうしよう…」
ここまで一人で勝手に盛り上がってしまったが、星河さんが本当に体調を崩していた時に
「星河さんって魔法少女なの?」
なんて聞いたら、ただの電波少女になってしまう!
「だからさ、私は悪くないっての」
保健室から星河さんの声が聞こえてくる、誰かと話しているのだろうか?
「月乃ちゃまはいつも、雑にに動きすぎなんですよ!もっと考えないと! 」
「なにおう、私はいつも考えてるぞ…多分」
「多分って!これだから月乃ちゃまは…!」
いや喧嘩だこれ…とにかく星河さんは元気そうだ。
私は保健室の扉を静かに開けて入った。
保健室の扉をそっと閉め、星河さんの方に振り向く、
「星河さん、大丈夫?ていうか誰と…」
「むっ?」
「えっ?」
私は自分の目を疑った、保健室のベットに座っている星河さんの他に小さい天使みたいな女の子がいたのだ。
星河さんと女の子が私の方を向く。というか女の子は星河さんの顔の前で浮いているんだけど…。
「さっき私と目が合った子かな? 」
「ど、どうも」
唖然としている私に、星河さんは笑いながらゆっくり手を振っている。私の中のクールな星河さんのイメージが崩れていく…。
星河さんの顔の前で静止していた女の子は、私と目が合うとすぐさま星河さんの背中に回り込み、隠れてしまった。
「星河さん、今誰と話していたの?」
「そんなことより、貴方の名前を教えて欲しいな」
そんなこと!?まぁ、とにかく星河さんの言う通りにしよう…。
「えっと、新弥日向です。よろしくお願いします。」
「新谷日向…うん、いい名前だと思う。なんとなくだけど」
「あ、ありがとう」
名前を褒められたのは初めてだった。理由はなんとなくだったけど嬉しい。
…じゃなくて本題に入らないと!
「星河さん、お願いがあるんだけどいいかな…?」
「お願い?」
星河さんはぽかんとした顔で首をかしげる。
「お願いっていうか質問なんだけど…」
「一つだけならおっけ」
一つだけ!?でも…私が聞きたいことは一つだった。
「星河さんは魔法少女だよね!」
「違うよ~」
私の夢が途絶えた瞬間だった。…じゃなくて!
「で、でもさっき…ふもっ!?」
「一つだけって…言ったでしょ」
一瞬で距離を詰められ、私の唇が星河さんの右手の人差し指に抑えられる。
「今度会ったらまたお願いを聞いてあげるからさ。…まぁ多分二度と会うことはないと思うけど」
「…っ!」
どういう意味だろう?と困惑している私の頭に星河さんの左手が添えられる。
「…その前にやることができちゃったみたい」
星河さんがそっと私から離れた。その顔は先程とは違い曇った表情をしている。
「ごめんね新谷さん、私は貴方を巻き込んじゃったみたいだ。でも…貴方は無事に帰してみせる。」
そういうと、星河さんは保健室のドアの方に私の胸に手を当て突き飛ばした。
「星河さんっ…!?」
突き飛ばされた衝撃で目があまり開かずよく見えなかったが、この世の物とは思えないほどおぞましい何かと星河さんが向かい合っていた。
――私の意識はそこで途切れた。